Q. ネットサーフィンがやめられません。どうすればいいですか?
しないといけないことがたくさんあるのに、ネットサーフィンがやめられない……
スマホやPCで何となく動画投稿サイトやSNSを見始めたら、次から次へと出てくるコンテンツにスワイプする手が止まらなくなってしまった経験がある方は多いと思います。同じように暇つぶし用のスマホゲームなど、時間の無駄だとわかっていてもやめられなくなってしまった人もいるでしょう。脳のしくみから、その理由と対処法を解説します。
Q. 「しないといけないことがたくさんあるのに、ついネットサーフィンをしてしまいます。時間の無駄だからやめなきゃと思うのに、どうしてもやめられません。自分の意志が弱いのでしょうか? やめる方法を知りたいです」
A. 現実逃避したい脳と、逃避をやめたい脳は、別だからです
ネットサーフィンやスマホゲームなどは、通勤電車の中での暇つぶしなどであれば、あまり問題になりません。でも本当はやらなければならないことがあるけれど、なぜかやる気が出ず、現実逃避をするようにネットサーフィンを続けてしまうとなると問題ですね。頭では「時間の無駄だ」「やらないといけないことを先にやらなくては」「こんなことをしている場合ではない!」と思っていても、なかなかやめられないのはなぜでしょうか。ずばり結論を申し上げると、「嫌なことから逃避していたい」と欲する脳と、「無益な現実逃避はやめたほうがいい」と考える脳は、別だからです。「脳」と一言でいっても、私たちの脳の中には異なる役割をもった部分が混在しています。その中には、動物がたくましく生き延びるために発達させてきた本能的な野性の脳の部分として「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」があります。一方、人間特有の理性や社会性などを担っているのは、主に大脳新皮質の一番前にある「前頭前野(ぜんとうぜんや)」です。最終的な意思や行動は、これらの異なる脳部位のバランスによって決定されています。
私自身もそうですが、ついついネットサーフィンをしてしまっているときは、本当に暇で仕方ないわけではないのです。大事な家事や仕事、勉強などを先に片づけなければならないのに、なかなか気が乗らずやりたくないので、ネットに逃げ込んでいることが多いのではないでしょうか。家事や仕事や勉強が楽しくて楽しくて仕方なくて、やりたくてしょうがないという人の場合は、ネットサーフィンがやめられなくなることはないのです。「生活のために必要だからやらなくては」「テスト前だから勉強しなくては」と考えて取り組もうとしている人は、本心は「できればやらなくて済む方が楽」と考えているに違いありません。つまり、「大脳辺縁系」による「家事や仕事をやりたくない」という本能的な気持ちと、「前頭前野」による「やらなきゃだめ」「逃げても無駄」という理性的判断とが戦い、結果として理性が本能を制御しきれないときに、ネットサーフィンをやめられなくなるのです。
ということは、ネットサーフィンをやめるには、本能的な気持ちを減らすか、理性を強めるかの2つの方法を試せばよいのです。
本能的な気持ちを減らす具体的な方法としては、たとえば、心配事や悩み事をちゃんと解決するとか、無理をしてやっている嫌な作業自体を、もっと興味がもてるように工夫するなど、本来取り組むべきことときちんと向き合い見直すのがいいでしょう。
ちなみに、飲食やカラオケなどで気晴らしをすればいいと考える方も多いでしょう。多少のストレス解消にはなるかもしれませんが、実のところ、それはネットサーフィンと同じです。現実逃避を繰り返しているだけなので、根本的な解決にはなっていないことに気づきましょう。
理性を強める具体的な方法としては、前頭前野は脳の中でも疲れやすい部分なので、しっかりと休息をとるのがいいでしょう。「ネットサーフィンをやめた方がいいとわかっているつもりでもやめられない」というときは、理性の前頭前野の力が弱くなっているのに「時間がたてば何とかなる」と悪あがきをしている状態にすぎません。実際には、ネットサーフィンを続けると余計に疲れる悪循環に陥ってしまいますので、何も解決しないのです。そのようなときには、葛藤しながらずるずる現実逃避するのではなく、さっさと諦めて、日中であれば昼寝をして、夜であればさっさと寝ましょう。休んで頭がすっきりした感じがしたときには、きっと前頭前野の力が復活しています。家事や仕事、勉強などにもスムーズに手がつくようになるはずです。
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