夫の友人は「下品だ」と感じた
マユミさんの夫が学生時代、仲良くしていたツトムさんは長い間、音信不通だった。ところが今年の春、突然、連絡を寄越したのだという。「夫は大喜びでした。まずは夫が彼とふたりで外で会ったようです。それで今度、呼んでもいいかというので、もちろんと答えました。学生時代、一番仲がよかったというから。娘が合宿でいないときだったかな、ツトムさんが来たんです。バツイチで、今は2度目の結婚をしていて、今の妻との間に子どもがふたりいるとか、そんな話をしていました。学生時代の夫の話も聞けて、そのときは楽しかったんですよ」
そこで次回は奥様もどうぞと言ったら、それは遠慮すると彼は言った。マユミさんも、夫婦同士で付き合いたくない人もいるだろうからと思い直して、その誘いを引っ込めた。
「ところがツトムさんが何度か遊びに来るようになると、次第に下品な会話をするようになっていったんです。私が上品だと言いたいわけじゃないんですよ。下ネタも嫌いじゃない。だけど、最低限の品がなければ下ネタもジョークも楽しくないでしょ。ツトムさんはどこか品がないんですよね」
しつこい女、ババア……って、下品では?
たとえば過去から現在までの自分のモテ話をする。それが延々続くから、それほどモテるタイプには見えないとマユミさんは不快になる。「この前も『しつこい女がいてさあ』、みたいに言うわけですよ。『あんなババア、好みじゃないよ』って。女性をババアっていうのはどうかしらねとやんわり言っても伝わらない。さすがに夫も『まあまあ、女性は年齢じゃないから』とたしなめたんだけど、『相変わらず堅物だな、おまえは』って。もちろんお酒が入ってますよ。だけど酔っているときこそ品が試されている。社会人として、人としてどうよと思いました」
彼が帰ったあと、もうツトムさんは呼ばないでほしいと彼女は夫に頼んだ。すると夫は「あいつは孤独なんだよ」と言う。
「2度目の結婚も実はうまくいっていなくて、奥さんは子どもを連れて実家に戻っているんだそうです。あんな言動をとられたら、そりゃそうなるでしょと思ったけど、夫は若いときの彼を知っているから『根はいいヤツなんだよ。何とかしてやりたい』って。気持ちはわかるけど、家には来ないようにしてと言いました」
ところがその後、約束もしていないのに彼が突然やって来た。夫が外で一緒に飲んだようだが、その日は娘と3人で手巻き寿司をするはずだった。そんなことが二度三度と続き、家庭を乱されることにマユミさんは耐えられなくなった。
「この夏も、夫を旅行に誘ったようですが、私は断ってと言いました。とにかく彼を家には近づけないでほしい。まあ、夫は外でときどき会っているようですし、それに関しては私は何も言えないけど。でもいい年の大人になっても、あけすけに女性を品定めするような発言を平気でする男っているんですね。私もずっと会社員として働いているから、パワハラ上司には慣れているけど、個人的な付き合いでああいうのは本当に勘弁してほしい」
マユミさんは最後まで、怒りをためているように見えた。