単純だけど居丈高
単純で幼い夫も困るが、嫌悪感は覚えない。だが単純で居丈高になると、これは笑ってはいられない。「うちの夫がそのタイプ」だと、チナミさん(44歳)は言う。2歳年上の夫が、最近やけに偉そうになって困惑しているという。
「なんだか会社でちょっと昇進したらしいんです。年功序列みたいなものなんですけどね。でも昇進したとたん、家でも偉そうになってしまって。給料が特に上がったわけでもないのにと私としては言いたい」
一応、「部長」という肩書きがついた夫。特に出世が早いわけでもないらしい。夫がポロリと洩らした言葉をトータルで考えると、「なんとなく順番が回ってきただけ」なのだ。だが、夫は肩書きにすがっている。
「私もパートで働いてはいますが、子どもたちの習い事などで消えてしまう。貯金もしなくてはいけないし。食費だって節約していますが、中学生と小学校高学年の男の子がいるので、やはり栄養は考えないといけない。牛肉にしたいところを豚にするとか、スーパーの安売りを狙うとか、こっちはいろいろ努力しているんですよ、この物価高に」
「部長の家で豚はないだろ」と呆れた発言
だが夫は豚肉を見ると、「部長の家で豚はないだろ」と言い始める。あげく、「子どもたちは豚でいいけど、オレには牛肉を用意して」と言い出す始末。「そういうことが続いたので、ついに私が『何様だよ』と言ってしまったんです。子どもたちは吹きだしたけど、夫は顔を真っ赤にして怒っていました。子どもたちが寝たあとで、『この前、家計簿見せたでしょ。あなたの給料では毎度、牛肉にするのは無理なの。私は家族の中で食べ物に差をつけたくはない』とはっきり言ったんです。『オレだって社会的地位が……』なんて言い出すから、社会的地位というより、社内的地位でしょ。しかもそれは家庭には適用されません、と断言しました」
夫はオレをバカにするのかと言ったらしいが、チナミさんは「バカにはしていない。家庭内ではみんながメンバーであって、そこに差はない。私の意見、間違ってる?」と詰め寄った。すると夫は「オレは大黒柱だ」と叫んだという。
「悲しいというか情けないというか。あなたは偉そうにして気持ちがいいの? 家族を言いなりにしたいの? と聞きました。結婚当初はそんな人じゃなかったよね、と。これは夫には堪えたみたいですが、言動はあまり改まってはいませんね」
最近は、夫が偉そうな発言をするとチナミさんも子どもたちも聞こえないふりをするようにすらなっている。
「早く自分の愚かさに気づいてほしい。私は楽しい家庭を作りたいだけなんだけど」
夫の「偉そうな言動」に、チナミさんが屈する日は決して来ないだろう。