大人の対応をするしかない現実
ある日、パートから帰宅途中、アキエさんはユキさんに呼び止められた。「ちょっと聞きたいことがあると、彼女の義母のことを相談されました。『アキエさんなら客観的な意見がもらえるかなと思って』と。だから知っていることは答えました。ただ、義母の言葉をそのまま受け取っている人は少ないこと、ユキさんを知っている私や知人は、むしろユキさんに同情していることも。それでも悪口を振りまかれて悔しいはず。
彼女は『私、略奪婚なんてしてないのよ』と言うんです。ユキさんが今の夫と知り合ったのは、彼が離婚して5年もたってからだから、略奪のしようがないと。夫の前の結婚では子どももいなかったし、非常に短い結婚生活だったようです。しかもそれは、夫の母が無理矢理、見合いをさせての結婚だった。だから夫と母親との間も今は険悪になっている。母はたぶん、息子の悪口は言えないから自分を標的にしているんだと思うとユキさんは言うんです。それは納得のいく説明でした」
だからといって、スポーツジムという場所で、他人であるアキエさんがユキさんの義母をやりこめるわけにもいかない。それはユキさんも望んではいなかった。
「ただ、あんまり家庭内のごたごたを他人に知らせたくはないとユキさんは言うし、私もそれはよくわかる。だからユキさんの義母が行きすぎたことを言ったら、それとなくやんわり忠告するように心がけるわと言ったら、ユキさん、涙ぐんで喜んでいました」
その後、ジムに長時間いるユキさんの義母に、またも会うようになったアキエさんは、「私にとっては、ユキさんはいいママ友ですから」ときっぱり言った。それでも義母はぐちぐちと悪口を言い続ける。
人をおとしめた人の末路
そしてエスカレートするユキさんの義母に、ジムのスタッフが注意をした。他人の迷惑になるのでとかなり強い口調での忠告だったらしい。「そうしたら突然、彼女はジムをやめたんですって。ジムには平穏が訪れました。でも聞くところによると、最近は町内の老人会に出入りするようになり、そこでまたユキさんの悪口を繰り返しているらしい。いずれそこも出入り禁止になるかもしれませんね」
義母は夫と暮らしているのだが、夫も妻には愛想をつかしているらしく、今も仕事を続けながら、余暇は自分の趣味に没頭しているそうだ。結局、「お義母さんが寂しいのはわかるんだけど」とユキさんもつらそうだったという。
「私もいい勉強をしました。ああいう年寄りにだけはなるまいと思いましたね。誰かの悪口を言って自分にいいことが返ってくるなんて、絶対にありませんから」
ネットでの誹謗中傷が話題になって久しいが、現実生活にもこういうことはまだまだ存在する。そして人をおとしめた人は、ますます寂しい状況に陥るのだろう。