「週休3日」は今後当たり前になり得るか?
その中で今検討されるのが、週休2日から3日へ移行できるかどうか。ただ、この議論がイマイチ盛り上がらない。一昔前には、土曜日に半日働くことが普通だった時代もあったが、今や週休2日が当たり前となった。週休3日制もこのように当たり前になるのか。導入に当たっての考え方を人材コンサルタントが解説する。
賃上げできない会社は、週休3日を検討すべし?
「給料が上げられないから、週休3日制にするはありか?」不思議な問いかけだと思うかもしれないが、給料と働く日数を調整することは現実的な話である。会社として、人件費を上げることは難易度が高いことが多い。一方、物価高だから給料を上げてほしいと政府から要請されたくらいで、すぐに給料を上げた会社もある。ただ、そのほとんどが著名な大企業ばかりである。もともとそうした会社は内部留保が多く、まして昨今業績がいい会社であれば、給料アップも可能である。しかし、それができない会社の方がむしろはるかに多い。そこで、そうした会社で検討してほしいのが、週休3日制の導入である。
深刻な問題として認識が広がっている日本の会社の長時間労働は、企業努力によってかなり管理されるようになってきた。この取り組みの本質は、ただ働く時間を減らすということではなく、生産性アップを実現することにある。
その本質を汲めば、週5日働くのではなく週4日働くという選択もありである。しかし、この議論がイマイチ盛り上がらない。
週休3日の会社が現状どれだけあるかというと、2023年5月に求人検索エンジンIndeedに掲載された求人案件の中に、「週休3日」に言及した正社員求人は全体の掲載案件の1.1%であったという。
週休3日制導入とセットで検討したい、副業規定・成果主義・フリーアドレス
有給休暇の取得率が改善されている会社は多い。これは、社員に有給休暇を年間で一定日数取らせない会社には労働基準法により罰則が科されることが、2019年4月から始まったからだ。つまり、そこには強制力が働いている。一方、有給休暇を取れたとしても、給料が上がらないことには旅行や買い物にも行けず、社員の満足度が上がるわけではない。まして週休3日になっても給料が足りていないのなら、働いて残業代を稼ぎたいと考える人もいるだろう。
そこで重要となるのが、まずは副業規定である。最近では、自分の会社が新しく副業規定を導入したという人もいるだろう。ただ、それによって副業を始めた人が多いわけでもないのが現実のところだと思われる。
しかし、もし副業が許されて、毎週3日間の休みがあるとなれば、話は少し変わってくるのではないだろうか。自分のできるところから副業を始めたり、将来副業を始めることを見越して新たなスキルを習得するために学校に通い出したりする人も増えるに違いない。つまり、週休3日制と副業規定はセットで実現する必要があるということだ。
同様に成果主義が仕事に導入されることで、生産性を高めて会社に貢献する道がもっと広がるだろう。無駄な仕事をなくし、重要事項を優先する企業風土を作るために、社員が一致団結できるかもしれない。そうなれば週休3日制の導入もさらに現実味を帯びる。このようにしてさまざまな角度から効率のいい会社となり、低コストも実現できれば、人件費アップも夢ではなくなってくる。
また、コロナ禍の影響で、オンライン会議の効率の良さは誰もが知るところとなり、仕事によっては在宅勤務が定着しているケースもある。社員全員を1カ所に集めるという発想から転換し、社員が出社したときの席も固定化せず、フリーアドレスにした会社もある。もともと営業職に多いワークスタイルで、週休3日制との相性も良いのでこちらもセットでの導入が良いだろう。
世の中がコロナ禍から日常に戻りつつある最近では再び、在宅勤務という選択肢がなくなったか、限りなく減ったという職場も多いが、これではもったいない。コロナ禍によって強制的に周知された効率的な働き方を引き続き使わない手はないだろう。
選択肢の多い働き方の実現に向けて
いつの時代にも、何かしらの強制力が働くことで、社会は大きな変化を遂げていくものだ。きっかけは、政府の方針、また世界規模の感染症や紛争、天災であるかもしれない。物価高による生活費高騰など、背に腹を変えられない逼迫(ひっぱく)した状況に遭遇することである可能性もある。できれば、そうしたどうしようもなく難しい状況がもたらす変化よりも、未来を先読みしながら、自分たちで模索して前向きに変化させていけたほうが良いだろう。だれでも、一生涯で、自分に与えられる限られた時間があり、価値のある時間の使い方をして、快適に生きる方法を模索したいものだ。どこからでも働ける、時間に余裕があるなど、選択肢の多い自由な働き方を手にできれば、快適な人生につながる。そのための一歩として週休3日制の議論にももっと注目し、もっと盛り上げていきたいものだ。