妻は僕との会話が「うっとうしい」と言う
ときどき妻の本音を探ってきたリョウタさんは、「どうやら妻は、僕のことがとにかくうっとうしいらしい」という結論に達した。「平日、仕事の帰りなどに、そういえばヨーグルトがなかったかなと思って、ついコンビニで買ってしまうことがあるんです。帰宅して『ヨーグルト買ってきたよ』と言うと、『そんなの私が買ってきたわよ。かぶると困るから連絡してって言ってるでしょ』と怒鳴られる。彼女が買ってなかったときにうっかり『やっぱりなかったね、買ってきてよかった』と言ったら、『だから何? 偉いって言われたい?』って。どちらにしても怒られる。怖いでしょ。どうしてそんなにいつも怒ってるんだと聞いたことがあるんです。『あなたとの会話がうっとうしいの』と言われました。会話がうっとうしいってどういう意味かと聞いたら、『こういう会話がうっとうしいの』と」
気の合った人同士だと、相手が言うことをすんなり受け止められるし、相手が言おうとしていることを想像することもできる。だから会話が流れるようにスムーズだ。だが、リョウタさんと妻の場合は、お互いにいちいちひとつの言葉がひっかかる。だから会話が流れない。
「妻は忍耐力がないから、すぐ怒鳴ってしまう。そのたびに僕は、ムカつきながら、それ以上バトルにならないように部屋から去ったり黙りこくったりするしかない」
妻に申し入れたこと
日常生活が不毛に思えると彼は言う。だがかわいい盛りの子どもたちを心配させたり不安にさせたりはしたくない。子どもの前では怒鳴らないでほしいこと、話したくなければ話さなくてもいいけれど無視はしないでほしいと彼は妻に申し入れた。
「不機嫌が続くことがあるので、そういうときに帰宅してただいまと言っても無視されるんですよ。無視はつらい。自分の存在が無価値のように思えるから。せめて返事だけはしてほしいと頼んだんです。今のところ、それは守ってくれています。ふたりきりのときは怒鳴られるけど、子どもの前では怒鳴らなくなった。気持ちをきちんと表現するような会話は乏しいけど、まあ、妻も努力してくれている。だからもう少し一緒にやっていこうかなと思っています」
本当はもっと会話が弾む人と家庭を持ちたかったけど、と彼は最後につぶやいた。ひどく虚しい口調だった。