あなたは今、人生「幸せだ！」と言えますか？
書籍『グッド・ライフ』を読んで確信に変わったこと
筆者は「恋人・夫婦仲相談所」を運営していますが、「自分たちは幸せではない」と考える妻、あるいは夫がやって来ます。結婚生活が幸せで特に悩むことがなければ“相談所”をわざわざ探して訪ねることはありません。「幸せになるために夫婦の関係をどうにかしたい」これが明確な動機です。「夫婦の関係が現在より良くなれば、お互い幸せを感じる割合が増えるだろう」と感じながら、多くの方々の相談に応えてきました。
なぜかといえば、夫婦というものは、同じ場所で寝起きを共にし、家族を続けているという意味で、同じ人生軸を持つことが大切だからです。日々一緒にいる相手に嫌な感情を持っているならば、幸せ感が薄れるのは当たり前のことです。夫婦間に愛が溢れれば、幸福度は上がるはずだと考えています。これは、夫婦仲相談所の運営をしながら、漠然と感じてきたことですが、『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』という著書を読んで確信に変わりました。 書籍は、「ハーバード 成人発達研究」の責任者であるハーバード大学医学大学院教授ロバート・ウォールディンガー氏と、副責任者であるハーバード大学の博士研究員で現在臨床心理士のマーク・シュルツ氏の共著です。二人が率いるチームが同一家族の2世代にわたる被験者2000名以上の方々の人生を84年かけて調査した研究結果を書き記したものになります。
調査方法は、一人のひとの子ども時代の苦労、初恋、大人になってからの仕事、環境、結婚、そして晩年の暮らしぶりまで、その場限りの定点アンケートだけではなく、研究員が対面でヒアリングしていくというもので、気が遠くなるような長期にわたる縦断研究です。
パートナーとの関係が幸福のカギ
被験者には未婚やパートナーが亡くなっている人もいますが、研究は“2世代家族”対象ということもあり、筆者自身の仕事から得られた経験と知識もふまえつつ、夫婦という関係性を軸に読み進めました。ネタバレにはなりますが、この研究結果の肝は、ずばり「他者との交流の頻度と質こそ、幸福のふたつの予測因子である」ということです。家族・友人・地域社会とのつながりが強い人のほうが、そうでない人よりも幸せで、肉体的にも健康である。心の通う人間関係の中で生きることが心と身体を守ると結ばれています。
では、他者とは誰のことでしょうか？ 長年、夫婦問題にかかわってきた筆者独自の視点では「他者とはパートナーである」ということではないかと思います。
都市部では大家族で住むことは少なく、子どもは成長すると親元にとどまることも稀です。地域社会で絆を生むにしても、社交性がある程度なければハードルが高く、特に男性はご近所コミュニティーで楽しく過ごすことは苦手であるという傾向があります。また、都市部では“ご近所”という概念さえ薄れてきています。
例えば誰もいない道で泥棒呼ばわりされ警察からも疑われているとしましょう。もちろん、家族に連絡がつかないようなときには、頼れる親友も頭に浮かぶかもしれません。でも、窮地に立たされた時、真っ先に頼りにするのは「一番近くにいる他者であるパートナー」ではないでしょうか。
筆者のもとに寄せられる相談を例にとりながら、『グッド・ライフ』を紐解いていきましょう。
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