大学生の就職活動

人事担当者から見た「就職力ランキング」、TOP10を国立大が独占!「偏差値」と「就職力」に相関?

日経HRが2023年に実施した「企業の人事担当者から見た大学イメージ調査」で京都大学が就職力総合ランキングで2年連続1位を獲得した。今回は学力だけでなく就職力も強いと評価される国立大生について、社会人基礎力の観点から解説する。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

ライフキャリアガイド

人事担当者から見た「就職力ランキング」で2年連続1位を獲得した京都大学

人事担当者から見た「就職力ランキング」で2年連続1位を獲得した京都大学

日経HRが2023年に実施した「企業の人事担当者から見た大学イメージ調査」で、京都大学が就職力総合ランキングで2年連続1位を獲得した。能力別では「知力・学力」と「独創性」が1位、「対人力」が4位、「行動力」は6位という結果だった。

京都大学に限らず総合ランキングでは1位から10位を国立大学が独占、私立大学の登場は慶応義塾大学の19位、早稲田大学の20位からという結果となった。

これは人事担当者が持つ大学へのイメージ調査なので、どこまで現実を反映しているかは定かではないが、「国立大の学生が勉強だけでなく就職にも強い」という側面を表していることは確かだ。

国立大生の学力の高さは大学受験時の偏差値で明らかにされているが、コミュニケーション力や行動力といった「就職時に求められる力」について分析されることは少ない。

今回は、毎年全国の大学生や短大生向けに実施されている社会人基礎力(ジェネリックスキル)を測定するPROGテスト(受験者数累計170万人:2023年時点)の開発者の1人であるリアセックの松村直樹氏に「国立大生の就職力」について聞いた。
 

学力に裏付けられた「自信創出力」が大学生活の密度を高める

松村氏が過去のPROGのデータから、大学1年生の「入学偏差値」と「社会人基礎力(ジェネリックスキル)」の相関を、国立大・公立大・私立大で比較した結果、「リテラシー」と呼ばれる、情報を活用しての問題解決能力に強い相関が出た。こちらは大変分かりやすい結果で、国立大の学生は他の大学の学生と比べて情報を収集、分析、活用する能力に秀でている「地頭が良い学生」なのである。

逆によく就職で求められる力で、「コミュニケーション力」に代表される対人基礎力の能力においてはそこまで入学偏差値との相関はなかった。受験勉強のような学力を高める上で必要な経験は、対人力などの社会的な能力にはあまり影響しないと言える。また逆に、そこまで学力は高くなくても、部活でチームスポーツなどの協働体験を積んだ学生の方が対人力が高い傾向はあるという。体育会の学生が就職で優位とされる理由はその辺りが影響しているようだ。

「リテラシー」以外に「入学偏差値」と相関が見られた興味深い能力として「対自己力」もある。これは自分自身の感情ややる気をコントロールする力として、社会人基礎力の大事な要素の1つであるが、国立大生の特徴として、対自己力の中の「自信創出力」が公立大や私立大の学生と比べて高い傾向にあると言う。

その理由について松村氏は、

「国立大に進学する学生は中学・高校から勉強熱心で、超進学校と呼ばれる地域でもトップクラスの学校や優秀な生徒が集まる塾に通っていた生徒も多いです。そういったある社会的評価を得やすい環境に所属していた経験が、自らの能力を信じる力である自信創出力につながった可能性は高いでしょう」

と分析する。

しかし「学力が高くて自信満々」というだけで、企業の採用面接に合格するイメージはない。企業の採用面接では大学時代の経験について多く聞かれるからだ。

松村氏は「自信創出力が大学生活に与える影響」について、

「自信創出力が高い学生は、やったことのないことでもやればできる!という自己効力感を持っている傾向があります。そのため大学生活でもさまざまなことに挑戦したり、経験したりすることで密度の濃い充実した生活を送ることができるのでしょう」

とも語っている。

勉強を頑張って得た高い学力や所属する環境の評価を通じて身についた自信創出力が、大学生活における能動的な姿勢と体験密度につながり、就職活動時には持ち前の地頭の良さと論理的思考力で自身の大学生活について堂々と分かりやすく語ることができるのが国立大生の強さなのだろう。
 

都会の豊富な体験機会と多様な人材との交流が人としての幅を広げる

国立大生が持つ社会人基礎力の特徴から、就職への優位性は理解することが出来たが大学生活での環境面でも違いはあるだろうか。

地方公立大にも学力面では優秀な学生が集まる傾向にあるが、1つの環境的な特徴として「自分の生まれ育った地域に留まる決断をした学生が多い」という点があるだろう。その分、同質性の高い環境や人材を得られるというメリットはある。

逆に国立大の学生は偶然近所にその大学があったという学生以外は、ある程度今まで住んでいた場所から離れて、国立大のある都市部に越境するという体験をしている学生が多い。そして自身以外の学生も全国からその国立大を目指して受験してきた人ばかりになるので、大学生活を他地域からの多様な人材と交流しながら過ごすことになる。また国立大の多くは都市部にあるので、他大学との交流や都市部ならではのアルバイトや活動の機会も得るだろう。

今回の就職力ランキングで2年連続1位を獲得した京都大学で言えば、関西地域だけでなく全国から京都大学を目指して進学してくる学生たちが多く、外国人留学生の比率も高い。そして京都という日本の歴史や文化が今でも残る観光都市という環境だからこそ、経験できる活動や体験機会も多いだろう。

勉強を通じて身につけた知識・学力といった地頭と、「やればできる!」という自分の可能性や能力を信じる自信創出力、加えて、日本だけでなく世界中から人が集まる日本の伝統文化都市「京都」という唯一無二の環境の中で、さまざまな刺激を受けながら大学生活を充実させているというのが国立大学の代表格、京都大学の就職力の強さなのだろう。


>次ページ:人事担当者から見た「就職力ランキング」TOP20


<参考>
日経HRによる2023年「企業の人事担当から見た大学イメージ調査」プレスリリース
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