Q. 覚醒剤は一度だけ、少しだけでも、本当にそこまで危険なのでしょうか?
中高生も学ぶ薬物乱用問題。しかしその本当の怖さが理解しにくいこともあるようです
覚醒剤がとても危険なのはほとんどの人が理解されていると思いますが、著名人が薬物依存から回復した姿などを見て、「覚醒剤を使っていても、やめられるじゃないか」と感じる人もいるようです。薬物の危険性はもちろん、心の状態の危険性も無視できない要因です。わかりやすく解説します。
Q. 「中学校で『覚醒剤は絶対にしてはいけない』という授業がありました。でも薬物依存だった人が回復できているケースを見ると、一回くらいならやめられそうな気がしてしまいます。一回だけ、本当に少しだけでも、そこまで危険なものなのでしょうか?」
A. 「薬物を試したい」と思うような心の状態では、絶対に依存症になります
覚醒剤は「アンフェタミン」「メタンフェタミン」という人工化合物で、脳を興奮させる作用があります。使った直後は眠気や疲れを感じにくくなりますが、効果は長く続かないうえ、効き目がなくなるととても激しい不快感におそわれます。そのため、また摂取したいという強い欲求が抑えられず、依存症になります。依存症から回復するための支援や治療もありますので、「やめられない」というのは正確ではありませんが、「覚醒剤は並大抵の努力ではやめられない」ということは確かです。何としてでも薬物を入手しようとする中で、反社会的な組織と関わってしまうこともあります。覚醒剤を買うために払ったお金は、私たちの平和な暮らしをこわす犯罪に使われますから、薬物乱用に関わることは犯罪の手助けをしていることになるという点も良く知っておくべきです。ですから、覚醒剤に危険性があるのは確かで、本人の健康を害するだけでなく、社会全体に悪影響を及ぼすからこそ法律で禁止され、使用は犯罪とされているのです。
そして、中学校では教えてくれなかったかもしれませんが、問題は、覚醒剤そのものの危険性だけではなく、あなたの「心の状態」にあることにも気づいてください。
安全なはずの市販薬ですら、乱用による依存症や死亡事故が問題になっています。また薬物以外でも、たとえばギャンブルにはまってやめられなくなったり、スマホが手放せなくなるのも依存症の一種です。ただし、同じことをしても深刻な依存症になる人とならない人がいます。ギャンブルやスマホ自体が悪いのではなく、どのような気持ちでしているか、それぞれの人の「心の状態」が問題だからです。
悩みもなく、毎日が充実している人がギャンブルを少し楽しんだりスマホを使ったりしても、依存症になるわけではありません。現実の世界で、学校や仕事がつまらない、友だちとうまくいかない、人間関係に悩んでいるなど、嫌なことがあり、逃げ出したいと思うことで、ギャンブルやスマホなどに頼ってしまい、依存症になるのです。覚醒剤自体の危険性が高いのはもちろんですが、「危険だから絶対にしてはいけない」とアドバイスされているのに「やってみたい」という衝動が抑えられないような状態で覚醒剤を使用すれば、間違いなく一回ではやめられなくなります。覚醒剤を使用してみても、あなたが抱えている心の問題は解決しないので、必ず同じことを繰り返してしまうのです。
困ったときは、「モノ」に頼るのではなく、「人」に頼りましょう。素直に自分の気持ちを人と分かち合えるようになれば、「覚醒剤を試してみよう」などという気持ちはなくなることでしょう。