中年の男性が急に落ち込むようなことがあったら……
急に下を向くことが増えた夫
「結婚して20年経ちますが、あんなにしょぼくれた夫を見たのは初めてでした」ナオコさん(48歳)は、1年前を振り返ってそう言う。3歳年上の夫を、「このごろ、なんだか元気がないな」と心配してはいた。夫に尋ねても「うん、ちょっと仕事が忙しいから疲れてるのかな。でも大丈夫だよ」と無理に作ったような笑顔を見せる。心配ごとがあるのか、ひょっとしたら浮気でもしているのかと気にはしつつ、本人が大丈夫というのだから信頼しようと思っていた。
若いころから夫は陽気で友だちが多いタイプ。会社内でも「宴会部長」の異名をとるほどだった。
食卓で、夫が下を向いたまま固まった?
「それなのにある日、高校生と中学生、ふたりの子どもたちと4人で食卓を囲んで食べ終わったとき、夫がふっとため息をついて下を向いたんです。そしてそのまま固まっていた。ずっと下を向いているんですよ、暗い顔をして。これはまずいと思いました」高校生の娘と顔を見合わせた。娘は首を傾げている。中学生の息子も心配そうだ。
「娘が『パパ』と言っても最初は顔を上げなかった。『パパ、どうしたの、具合が悪いの?』と続けて言ったら、ハッとしたように娘を見て、『ごめん。食べ過ぎたかな』と貼りつけたような笑みを浮かべ、ちょっと横になると寝室へ向かったんです。どう考えてもおかしい。娘は『病院に連れて行ったほうがいいよ』と。私もそう思いました。夫が何を言おうと連れていこうと」
何かヒントになることはないかと、ナオコさんは寝室にある夫の机をチェックしてみた。するとお墓のパンフレットが見つかった。夫の両親はすでに亡く、故郷の墓に埋葬されている。このお墓は誰のためのものなのか。夫自身のためなのか。嫌な胸騒ぎがした。
>主治医が気が付いてくれたおかげで