お金の悩みを解決!マネープランクリニック/教育費が準備できるか不安な子育て世代

39歳、子どもを海外の大学に進学させられるでしょうか?4年間の総額で4000万円から5200万円かかるようです

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、お子さんを海外の大学に進学させたいと考える39歳の専業主婦の方です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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サマースクールなどの支出があり半年前までは貯蓄していませんでした

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、お子さんを海外の大学に進学させたいと考える39歳の専業主婦の方です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
海外の大学に進学させたいと考えています

海外の大学に進学させたいと考えています

■相談者
みかんさん
女性/専業主婦/39歳
東京都/持ち家(マンション)

■家族構成
夫(会社員・39歳)、子ども(高校1年)

■相談内容
子どもを海外の大学に通わせられるでしょうか。身の丈に合わず荒唐無稽と思われると思いますが、いつも拝見している深野先生なら取り合っていただけるかと思い応募しました。よろしくお願いします。

子どもが1人います。小さい頃から海外の大学に行きたいと言っていました。これが最近になって入学に必要な要件を満たせることがわかり、出願が現実感を帯びてきました。とても努力しているので親としてもできるだけ願いを叶えてやりたいと思います。実家からの援助の話があり、暦年贈与もありますが、それらにはふれず私たちで支払いたいです。

出願予定の大学はいくつかあり、4年間の総額で4000万円から5200万円ほどかかるようです。民間の奨学金団体へは資格があるところはすべて申し込みますが、定員オーバーで受けられない可能性があります。大学からの経済的支援が必要な家庭に行われる減免制度も受けられるかは不確定です。借り入れは民間の銀行ローンになると思います。

記載した支出は、大学の費用を貯めることが必要だと思い、家計簿をつけ始めた半年前からの平均額です。それまでは子どもとたくさんの思い出を残したいと思い、また、サマースクールなどの遊興費でまったく貯蓄はしていませんでした。

長くなり申し訳ありません。よろしくお願いします。

■家計収支データ
相談者「みかん」さんの家計収支データ

相談者「みかん」さんの家計収支データ

■家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い道
人間ドック10万円。これ以外は、基本的には貯蓄しています。

(2)家計支出の詳細
・趣味娯楽費5万円(外食1万円、被服費3万円、その他1万円)
・雑費6000円(病院代)

(3)教育費について
現在、教育費15万円(学校費8万円、塾費2万5000円、習い事2万円(今月で終わります)、他教育関連費2万5000円)。来年度から2年間の教育費は月額17万円(学校費7万円、塾費7万5000円、教育関連費2万5000円)になります。塾代は上がる可能性があり、さらに出願費用関連は約40万円です。また、国内大学の受験結果が先に出ることがあり、その際は入学金と初学期分納金で60万円が必要です。

(4)住居費について
・購入年/2020年
・購入価格/2300万円
・ローン借入額/2300万円
・借入金利/0.4%
・返済期間/残り32年
・ローン残債/2100万円
・毎月返済額/6万2000円
・管理費など/3万5000円
・固定資産税(月割り)/1万円
※返済は毎月返済のみ

(5)加入保険について
夫/
・生命保険(死亡保障5000万円、保険期間23年)=毎月の保険料4000円
・医療保険=毎月の保険料2000円

私は保険未加入。安価ないくつかの保険会社に問い合わせましたが断られました。保険料が高額なものは受けられると思いますが、問い合わせをしていません。障害等級2級に該当するようですが、障害年金は未手続きです。私は国家資格を持っているのですが、私の障害事由で受給をすると資格を使っての就職は無理だろうということと、生活に困っていないのに受給するのは心苦しいこと、実家が望んでいないことが理由です。実家は私を含めすべての子どもと孫の医療費を支払っているようです。こういった面からも援助がある私は受給すべきでないと考えています。

(6)今後の働き方、収入について
夫は来年1月から額面年収が200万円増え、4年後に200万円増え、その後は、役職が上がるかどうかで決まります。65歳定年、退職金は詳しくはわかりませんが3000万円程度、65歳以降も働くと言っています。詳細な年金額はわかりませんが、夫は大学在学時から在職していたので、掛けている年数が少し多くなるそうです。

私は複数の疾患が見つかり、数年前に退職しました。医師から家計に問題がなければ自宅で療養するように勧められていますが、午前パート勤務で年100万円を稼げたらと思い、自宅近くの職場を探しています。出産での失職、病気での失職で、これまでほとんどの期間がパートで第3号被保険者です。

(7)お子さんの進学希望について
子どもは、日本の大学からの海外進学についてはシビアに考えているようです。国内からの進学ですと「居住権の問題により、基本的には日本国内での就職になり、それを考えると東大以上のインパクトがある大学に通えなければ損をするかもしれない」と、国内の大学に進学するのであれば東大に、と言います。

海外のコミュニティカレッジなどの比較的入りやすい大学は学費も安いですが、有名な大学は基本的に年間1000万円はかかるので、学費削減のために入学前の単位取得、4年ではなく3年での卒業をと考えているようです。大学院は、就職した企業からの斡旋、もしくは奨学金(大学院進学の場合は制度が多くあります)で進学。その後は国外で働きたいと考えています。

■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 生涯で貯められるお金から考えれば、留学費用は出せる
アドバイス2 教育ローンを借りられる金融機関がなければ親から借りる
アドバイス3 定年後は公的年金で生活費はまかなえる

アドバイス1 生涯で貯められるお金から考えれば、留学費用は出せる

今後、ご主人の収入アップが見込めるようですが、現時点でのデータで、お子さんを海外の大学へ進学させることができるか、試算してみましょう。

現在、毎月7万円の貯蓄ができています。年間で84万円。これにボーナスから166万円を貯蓄できれば年間250万円です。このペースの貯蓄が続けば、ご主人が定年退職する65歳までの26年間で6500万円になります。

現時点の金融資産は1300万円ですが、今後、毎月かかる教育費の他に、追加でかかる塾費用や出願費その他の費用として、ざっくり見積もり300万円を差し引くと1000万円。合計7500万円です。これが定年退職までに貯められるお金ということです。

大学4年間の総額は4000万~5200万円とのこと。これに高校にかかる教育費も含めて約6000万円とし、先の7500万円から差し引くと1500万円が残ります。ただし、現在、家計から毎月15万円を教育として計上されています。6000万円のなかに今後の教育費すべてが含まれますので、家計から外すと、年間180万円、26年間で4680万円です。これを金融資産に加えられますので、実際のところは5000万~6000万円は65歳時点で残せている、という計算になります。

アドバイス2 教育ローンを借りられる金融機関がなければ親から借りる

しかしながら、教育費はその都度出ていきます。ましてや海外の大学入学でまとまった金額を用意しておかなければならないとなると、あと2年では、今ある1000万円と合計して1500万円が限界です。

何かのときのために最低限500万円は手元に残しておくとして、初年度の1000万円は用意できることになります。しかしその後、毎年1000万円が必要となり、それを準備する時間がありません。つまり、約3000万円は銀行ローンを借りるしかありません。銀行ローンを利用することはお考えのようなので、早めに融資の相談を始めておかれるといいでしょう。というのも、一般的な教育ローンでは海外留学は対象外で、借り入れの上限額もそれほど多くはありません。海外留学に対応しており、毎年1000万円、総額3000万円借りられる金融機関は、数少ないのが現状です。

親御さんからの援助は他のご兄弟姉妹の手前、難しいとお考えのようですが、いざというときは、金銭消費貸借契約を結び、きちんと返すことを前提にして借りることも念頭においておかれるといいでしょう。もしも援助してくれる場合は、親から子、祖父母から孫への教育費援助となり、贈与税の対象とはなりません。暦年贈与を使わなくても大丈夫です。

アドバイス3 定年後は公的年金で生活費はまかなえる

教育費を借りるとなると、毎年250万円貯蓄できても、それは返済に回りますので、手元に残るのは500万円、という状況がずっと続きます。3000万円借りるとしたら、返済が終わるのは12~13年後。しかしそのときにご夫婦ともに、まだ51歳。ここから定年までの間に、ご夫婦の老後資金を貯めていけます。

退職金が3000万円、さらに収入アップした分も貯蓄に回せれば、65歳時点での老後資金は十分だと思われます。もちろん大学から奨学金、給付金が得られれば、その分の負担は減らせます。

問題は、住宅ローンです。ご主人が70歳前後まで返済が続きます。教育ローンの返済がある間、繰り上げ返済は難しいと思われますので、65歳時点の金融資産次第で、一括返済するようにしてください。教育費が想定以上にかからなければ、無理なく一括返済できるでしょう。

65歳定年以降は、教育費はなく、住宅ローンもなければ、家計支出が20万円程度に削減できているはずですから、公的年金のみで生活費はまかなえるでしょう。65歳時点での金融資産は、まるまる老後のゆとり資金として使うことができます。

こうしてざっと計算してみると、問題は、大学にかかる費用を金融機関から借りることができるか、ということに尽きます。返済能力はありますから、複数の金融機関に早めに打診するようにしてください。

最後になりますが、みかんさんは持病がおありで無理ができないわけですから、今後の家族の生活はご主人の双肩にかかっています。どうぞ、ご主人の健康に留意して差し上げてください。小遣いも最低限に収めておられるようですが、日々のストレス解消のために何がしたいのか、一緒に考えてみてくださいね。

相談者「みかん」さんから寄せられた感想

留学に関しての知識が10年ほどアップデートできておらず、想像していた2倍以上の費用にパニックに陥ってしまいました。日頃からニュースや新聞で情報収集しておかなかったことを反省しております。

アドバイスをいただき何度も読み返したことで冷静になり、今やるべきことを整理することができました。まずは借り入れられる銀行を探そうと思います。子どもには家計の状況を教え、銀行から借り入れることや、できなければ実家に行き家族全員で頭を下げる必要があることを理解してもらおうと思います。

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子
 
 
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