中学受験

国語入試頻出の作家より「歴史もの」がおすすめ!? 中学受験の出題傾向で選ぶ読書感想文・自由研究3選

受験勉強とどうバランスをとるべきか悩ましい夏休みの宿題も、工夫をすれば入試に十分役立つように取り組むことができます。今回は中学受験の「社会」の学習に役立つおすすめのテーマをご紹介します。

宮本 毅

執筆者:宮本 毅

学習・受験ガイド

平城宮跡です。広大な敷地に悠然とたたずむその姿は、遥か奈良時代に私たちの心をいざないます。

奈良の平城宮跡。広大な敷地に悠然とたたずむその姿は、はるか奈良時代に私たちの心をいざないます。歴史を総整理にもってこいの場所で中学受験生にもおすすめ(筆者撮影)

受験勉強とどうバランスをとるべきか悩ましい夏休みの「自由研究」や「読書感想文」も、工夫をすれば入試に十分役立つように取り組むことができます。

もちろん何でもかんでも受験勉強と結びつける必要はありませんが、そうはいっても、特に小学6年生は時間が足りない中せっかく取り組むのですから、少しでも入試に役立てたいものですよね。

そこで今回は、中学受験の「社会」に出題されやすいテーマをもとに、自由研究や読書感想文のアイデアをご紹介します。
 

1. 歴史に関連する街を自由研究でまとめて発表する

唐招提寺の金堂です。手前の石灯篭が特徴的です。

唐招提寺の金堂。手前の石灯篭が特徴的です(筆者撮影)

歴史に関連する場所を訪れるというのは、中学受験生にとって定番中の定番です。そこで見聞きしたことは記憶に残りやすいですし、興味・関心も喚起され、その後の社会の学習にも好影響をおよぼすことでしょう。

そこで、中学受験に出題される歴史的事柄の多い都市をいくつかご紹介したいと思います。
 
まずはなんといっても「奈良」。東大寺の大仏殿や正倉院(平日しか見られないため注意!)、南大門、金剛力士像。そして唐招提寺や薬師寺東塔、少し足を伸ばせば、法隆寺や高松塚古墳、石舞台古墳など見ておくべき歴史的遺構はたくさんあります。
蘇我馬子を埋葬したとされる石舞台古墳。迫力満点です。

蘇我馬子を埋葬したとされる石舞台古墳。迫力満点です(筆者撮影)

興福寺は藤原不比等にゆかりのあるお寺ですが、じゃあ「不比等って、何をやった人だっけ?」と調べてみると、さらに知識の輪が広がっていくでしょう。同じ興福寺の宝物殿にある阿修羅像は、数ある仏像の中でも1位、2位を争う人気ですが、実物は写真で見るよりもはるかに大きく、威厳に満ちあふれていて美しさすら感じます。

現在かなり整備された平城宮跡には、非常に充実した歴史資料館があり、古墳時代、飛鳥時代、奈良時代あたりの歴史を総整理するにはもってこいの場所です。

奈良は京都に比べて地味なため人気がありませんが、その分観光客も多くなくゆっくり見て回れます。ぜひ3泊4日くらい滞在して、写真を撮って資料にまとめて自由研究で発表してみてはいかがでしょうか。ちなみに中学受験にはあまり出題されませんが、纏向遺跡(まきむくいせき)や酒船石遺跡(さかふねいしいせき)などは、通好みの遺構が数多く点在し、レンタサイクルでぶらぶら回るのにおすすめの地域です。
 
奈良以外のおすすめの地としては、京都・鎌倉・広島あたり。いずれにしても事前に歴史的遺構のことを調べて、計画を立てて回りましょう。とくに鎌倉は、観光客に人気の大仏や小町通りなどは、入試にほとんど出題されないという点に注意してください。というのも、小町通りは単なる観光道路であり、鎌倉大仏も誰が立てたのか不明ですし、鎮座する高徳院も創始者が不明とあって、出題のしようがないからです。

それよりも、中心地からは少し離れますが、化粧坂切通しや円覚寺などを回ってみましょう。化粧坂切通しは、鎌倉時代にわざと狭くして敵の侵入を阻む目的で整備された古道のひとつで、鎌倉幕府滅亡の際、新田義貞が攻め込んだものの突破することができなかったといわれています。鎌倉の歴史的遺構は、京都や奈良と比べて道端にひっそりとたたずんでいるものが多いため、スタンプラリー感覚で探しながら歩いてみるのも面白いかもしれないですね。
 

2. 桃太郎電鉄に負けない、日本地図のオリジナルボードゲームを手作り

日本特急旅行ゲーム。筆者はこれで地理を学びました!

日本特急旅行ゲーム。筆者はこれで地理を学びました!

筆者自身が小学生の時に自由研究としておこない大変好評だったのが、「日本特急旅行ゲーム」というボードゲームの攻略法考察というものです。同年代の方の中には「なつかしい!」と思っていただける方もいらっしゃるのではないでしょうか。

このゲームは、大きな日本地図のボードの上にある日本全国の駅名と路線図を、特急を駆使して旅をするというもの。最初に「自然の旅」や「産物の旅」などと書かれたガイドブックを選び、そこに書かれている目的地を効率よく回って、一番早く東京に戻ってきた人が勝ちというルールです。しかし、やみくもに特急を選んだり、適当に目的地を回ったりしては負けてしまうため、かなり頭を使わねばならないという戦略的要素もあります。さらに時刻表も決められており、その時点で乗れる特急が限定されてしまうため、最短距離で移動すればいいという単純なものでもありません。現代でいうゲーム機でプレイする「桃太郎電鉄」に近いですが、より戦略性が高いのがこの「日本特急旅行ゲーム」です。
 
このゲームは、筆者の地理学習に大いに役立ったといえます。地図や路線図とともに特産品や地理が自然と頭に入ってくるため、強烈なイメージが残り忘れにくいのです。
 
しかし残念ながら、現在このボードゲームは「絶版」になっています。そこで提案したいのが、いっそのこと日本地図を下地にしたすごろくゲームのようなもの自分で作ってみるということ。東京から出発して東京に戻ってくるというルールにして、各所に地理や歴史の要素をちりばめれば、楽しみながら学べるオリジナルボードゲームが完成です。達成感も非常に得られるはずなので、ぜひ挑戦してみてください。
 

3. 読書感想文は“国語入試頻出の作家”より「歴史もの」にチャレンジ!

読書感想文というと、中学受験生なら重松清と森絵都といった、入試頻出作家の作品を読んで書くことが多いと思います。もちろんそうした選択も、意味が全くないということはありません。読んだことのある作品が入試に出題されると、心理的なハードルは一気に下がるはずです。しかしながら実は、国語の問題に関しては、「読んだことがある」というアドバンテージはほとんどないと考えた方がいいのです。逆に物語の先を知っていたり、先入観を持っていたりすることで、入試の設問に正確に答えられないということも実はよく起こりえるからです。
 
そこでおすすめなのが「歴史もの」です。少し難しいですが、意欲ある小学生なら何とか読めそうなのが、司馬遼太郎の作品。時代順に、二人の忍者が豊臣秀吉暗殺をもくろむ『梟の城』、坂本龍馬の半生を描いた『竜馬がゆく』、西郷隆盛と大久保利通の壮絶な運命の話『翔ぶが如く』、明治維新から日露戦争までの激動の日本をたどる『坂の上の雲』などです。

他には、太平洋戦争時のゼロ戦パイロットが主人公の作品『永遠の0』(著:百田尚樹)や、本能寺の変後の織田家の跡継ぎ争いや織田配下達の権力争いを描いた『清須会議』(著:三谷幸喜)。映画化された作品と合わせて読めば、歴史の話が頭に入りやすいですね。
 
いずれも大作であり、小学生が読了するのは大変かもしれませんが、こうした作品から得られるものは、歴史的な知識だけではありません。日本という国をより真剣に考えるきっかけとなります。保護者の方も同じ作品を読んで、意見交換しあうのも大変有意義であると思います。
 
近年、中学受験の社会では、日本が抱える問題点について鋭く考察させる問題が増えています。こうした問題に答えるには、ただ単に問題集をたくさん解くだけでは不足で、いろいろな経験をする中で感じたり考えたりすることが有利に働きます。「これ習ったことがある!」という受け身的学習ではなく、「これやったことがある!」という能動的学習をぜひ増やしてください。

せっかくの夏休み。こうした学習に取り組むことで、一回りでも二回りでも大きく成長してほしいと思います。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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