家庭内別居を貫いていた辛い日々
「私の不倫が夫にバレた。夫は子どもを置いて出ていけと言ったけど、それはできないと居座りました。お互いに離婚を考えながらも同居し続けました。あの時期は本当につらかった」ホナミさん(42歳)が、元カレと関係を持ってしまったのは4年前だ。同居する義母との折り合いが悪く、それが原因で夫との関係もギクシャクしていたころ、偶然、元カレに再会した。
話を聞いてもらっているうちに気持ちが昔に戻った。元カレにも家庭があったが、秘密の関係を持った。それによって、家庭内は少し緊張がほどけた。彼女が義母に優しくできたからだ。
「文句を言われようと毒づかれようと、それまでのように卑屈にならなくなったんです。私は夫からではないけど、ひとりの男性に愛されていると実感できたから。味方はいる。それで勇気をもらった。その後、義母が病気になり、はためには献身的と思われるような看護もしました。それも元カレが励ましてくれたからできたことです」
だがつきあって1年たったころ、元カレの妻からホナミさんの夫に連絡があった。「うちの夫があなたの奥さんと浮気している」と。元カレが携帯電話をきちんと管理していなかったため、メッセージのやりとりなどが見られていた。
最悪の状況で意外な人物が味方に
「私は最後まで不倫を認めなかったけど、元カレの妻から訴えられてしまった。慰謝料は払いましたが、元カレの妻はそれもいちいち私の夫に報告していた。夫からは離婚したいと言われました。子どもを置いて出ていけと。でもそれだけはできない。だから居座ったんです。夫は日々、私を責めました。毎日、謝るしかない状況でしたね」当時、子どもは6歳と4歳。義母も体調がすぐれず、夫には仕事がある。子どもを置いて家を出ることなどできるはずもない。するとここで、なぜか義母が味方についてくれた。
「本当にびっくりしました。義母が『ホナミさんも魔が差したの。人間にはそういうこともある。子どもを置いていかれたら私が困る。これまで通りにしてちょうだい』って。思わず、夫のいないところで義母に謝りました。お礼も言いました。すると義母は『私もあなたにつらく当たっていたのよね。なのにあなたは私が入院したとき、パートもあるのに毎日のように来てくれた。感謝してたの。お礼も言わずにごめんね』って」
ホナミさんも、こんなに夫に責められるなら、子どもの親権をとって離婚してもいいかもしれないと思っていた。だが、義母の言葉で彼女は離婚を考えるのをやめた。
今も夫とはほとんど会話がない。子どものことなどの相談は義母から伝えてもらっている。義母は仲を取り持とうとしてくれているが、夫が聞く耳をもたないようだ。
「もう少し待ってねと言われています。義母も少しずつ体調がよくなってきて、今では家庭内のムードメーカーみたい。義母がいなかったら、私は子どもを連れて家を出ていたと思うけど、そうなったら子どもを育てることもできなかった。どうなっていたかわかりません」
夫は子どもたちとは話をする。最近、その延長線上で、「お母さんはどう思ってるか聞いておいで」などと言うようになった。直接の会話ではないが、年月がたって夫の心にも変化が生じているのかもしれない。
不倫した側がいけないのは明らかだ。だがこういう事象を見聞きするにつけ、された側も居丈高にならず、「離婚しないのなら、どうやってもう一度信頼関係を築くか」について、真正面から話し合ったほうがいいのにと感じてしまう。それが夫婦の次へのステップになるのではないだろうか。