一方で、一気に老け込む人がいるのも事実。環境がそうさせるのか、あるいは本人の気力の問題なのか、あるいはさまざまな複合的要素があるのか。ふたりの男性に聞いてみた。
定年後、再就職先の職場で仲間をみつけ趣味を楽しむ人がいる一方で……
経済的余裕はないけれど
「大企業じゃないから、退職金なんて雀の涙ですよ。だけど今まで健康で40年近く勤め上げた。それでよしとしようと思っています。仕事は嘱託であと5年、続けることはできたけど提示された給料があまりに低かったのでやめました。もともと安いんだから、その額じゃ生活できない。先にやめた職場の先輩を頼って、今は新しいところで働いています。以前の7割くらいが保証されたので、ギリギリなんとかなるか、と。ただ、再就職してみたら、環境がいいんですよ。なにより職場が明るい。世代間ギャップはもちろんあるけど、みんながいいたいことを言える雰囲気がある。社長が30代の女性なんです」60歳から勤め始めた今の会社のことを明るく語るシュウジさん(61歳)。社長は先代の急逝後、大手企業を退職してあとを継いだそうだ。
「女性、30代、大手から中小へということで、いくら親から受け継いだとはいえ、社長業は大変だったと思います。でも社長は明るいんですよ。だから社員も明るい。会社の経営も社員には透明にしているから、古参の社員たちは社長にいろいろアドバイスしている。みんなでがんばって、稼いだら還元するというのが先代からの約束なんだそうです」
社員数は30人程度だが、ひとりひとりが120パーセントの力で働いているのがわかる、活気あふれる職場だという。
「ここで仕事ができるだけで幸せだなと思います。ここに来てから年齢関係なく仲間が増えて……。学生時代に自転車でロードレースをしていたんですが、同じような40代男性がいましてね。ロードレースは無理だけど、サイクリングに行こうと誘われて、彼の友人と3人で行ってきました。すっかりはまって、また行こうということになっています。前の会社ではそういう仲間もできなかったので、ありがたいですね」
定年後、妻との関係は?
近い将来、ロードレースに参加してみたいという意欲もわき、トレーニングも欠かさなくなったとシュウジさんは笑顔になる。「子どもたちも独立しましたし、うちは妻もパートで働いているので、それぞれに好きなことをしています。定年後は家事も妻に頼らず、今はルームシェアしている友人みたいな感覚。一緒に食べられる日は連絡をとりあって外食することも増えました。安くてうまい居酒屋が近所にあるので」
経済的に余裕があるわけではないと彼は言う。おそらく死ぬまで働き続けることになるのだろうとも考えている。だが、今を充実させるしかないと開き直った。
「体は確実に老いているけど、開き直れば、気持ちは新卒社会人に戻ったような感じ。楽しめるだけ楽しまないと損だなと思っています」
>定年後、ありあまる時間の過ごし方がわからない人もいる