夜中に起きてみると、父母の言い争いの真っ最中だったことも
母親の絶望
「私はひとりっ子だったので、父が浮気をしているとわかってから、母は全面的に私を頼ってくるようになりました」それはジュンコさん(35歳)が10歳のころだった。父は会社員、母はパートで働く主婦。どこにでもいる「普通の」家族だった。
「父は私にとっては優しいパパでした。母とも特に仲が悪いようには思えなかったけど、実際にはよくわかりません。ある晩、うるさいので目が覚めたら、父と母が大ゲンカしていた。母が号泣しながら怒鳴りまくって物を投げたりして。父はプイと外に出て行き、母はしばらく泣いていました。でも私はそのまままた眠ってしまったんです」
翌朝、父はいなかった
翌朝起きると、父はいなかったが、それはいつものことだった。父の出勤時間は早かったから。ジュンコさんは母に昨夜の大ゲンカが本当だったかどうか聞こうと思ったのだが、母の目は明らかに泣きはらしたあとだったので聞くのがためらわれた。「私はそのままいつも通り学校に行きました。その日は母のパートが休み。毎週、母は手作りのおやつを作ってくれたので、その日もおやつを楽しみに帰ったんです」
母はぼんやりと居間に座っていた。ジュンコさんが「おやつは?」と聞くと、「ごめんね。そうだったね」と市販のカステラを切ってくれた。
「私が学校であったことを話してもまったく聞いていなかった。そして『パパに好きな女の人ができたの。もうママにもジュンコにも興味がないみたい』と言い出したんです。母もショックのあまり話したのかもしれないけど、それを聞いた私は大ショックでした。今思えば、そんな言い方はないだろうという感じですが。私はショックのあまり泣き出し、母もそれを見て泣き出した。その日はふたりでずっと泣いていました」
母は「もう終わりだわ、何もかも」とつぶやいた。母の絶望感が伝わってきて、ジュンコさんは不安でたまらなかった。
そしてその日、父は帰ってこなかった。
>落ち込んだ母の自殺未遂に巻き込まれて