人間関係

「僕にはまだ生々しい記憶」。35歳男性が四半世紀かけて抜け出した“母親の不倫”という呪縛

10歳のころ、母親と近所のおじさんの“怪しい関係”が噂になった。噂にしては、具体的な目撃談がいくつもあったと35歳男性は回想する。息子にとって母親の恋や不倫というのは、受け入れられるものなのだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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芸能人の子どもは親の不倫が世間に露呈してしまうと、おそらく子どもながらに非常に肩身が狭い思いをするだろう。では一般人の場合はどうなのだろう。身内以外にバレないとも限らない。
親の不倫を経験した、子どもたち(当時)の気持ちを聞いてみた。

子ども相手にぶしつけに聞いてくる人もいた

「母親の不倫」とは? 10歳のころ経験したという男性が語る当時のこと

「母親の不倫」とは? 10歳のころ経験したという男性が語る当時のこと

「僕は地方の小さな町に生まれ育ちました。ほとんどが農業もしくは兼業農家。僕は3人きょうだいの長男でした。10歳のころだったかな、僕の母親と近所のおじさんとの間が怪しいと隣近所で噂になったんです」

そう言うのはタカヒトさん(35歳)だ。畑でふたりがいちゃいちゃしていたとか、おじさんの車で街のはずれのホテルに入って行ったとか、噂にしては具体的だった。

「どうやらふたりは本当に付き合っていたみたいです。当時、母親は今の僕と同い年。若いですよね。父方の祖母と6人暮らしだったけど、子どもの僕から見てもおばあちゃんは母をいびっていたし、それを父は見て見ぬふりをしてた。母が浮気くらいしてもしかたがないような状況だったんです」

母の不倫がバレたころ、父が大声で怒鳴って母が泣いているのを深夜、こっそり見てしまったこともある。

「おまえは出て行け。先祖の顔に泥を塗りやがってと祖母が叫んでいるのも聞きました。町の噂にもなったから、母の不倫相手のほうがいづらくなったんですかね。数カ月後にひっそりと越していきました」

母は、タカヒトさんはじめ、子どもたちにはごく普通に振る舞っていた。いつものように家事と畑仕事に精を出していたが、あるとき彼は畑仕事を手伝いながら、「おかあさん、家を出て行かないでね」と言った。「不倫」ということがよくわかっていなかった彼は、母がいなくなるのを恐れていたのだという。

「母はニコッと笑って、『大丈夫』と僕の頭を撫でた。父はいつも仏頂面をしていましたが、表面上は何ごともなかったかのように暮らしていました。学校では『おまえのかあちゃん、浮気したんだってな』と言ってくる友だちもいたけど、いじめられるというほどのことはなかった。ただ、友だちの母親たちがこそこそ僕のほうを見て話したり、『かわいそうにねえ』と涙ぐみながら声をかけてくる人もいましたね」

その後、祖母が倒れ、「あの女にだけは看病してほしくない」と泣きわめいたため、父は祖母を施設に入れた。父は母を許しているようには見えなかったが、母が祖母にいびられているのは知っていた。だからこそ、母に負担をかけまいとしたのかもしれないと、今になってタカヒトさんは思っている。

「高校生くらいのときかな、僕は急に母の不倫を思い出して許せない気持ちになったことがあるんです。反抗期もあいまって、母親に『おかあさんは不潔だ』と言ったこともある。母は悲しそうな顔をしていました。母を傷つけたことで自分も傷ついた」

大学入学のため上京してからは、数年に一度しか実家に近寄らなくなった。母の不倫が、彼の気持ちの中でわだかまっていたのは事実だった。

>大人になっても、まだ「生々しい気が……」
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