先進医療特約を利用している人は先進医療について知っておこう
医療保険に付ける「先進医療特約」は、費用にして1カ月あたり数百円と安いこともあり、多くの人が利用しています。先進医療特約は、将来、先進医療を受けるときにかかった費用を保障するものです。治療の選択肢が広がる点にメリットがあります。しかし、厚生労働省の「先進医療の実績報告実績報告2022(令和4)年度」によれば、実際に先進医療を受けている人数は年間で2万6556人。日本の人口を約1.2億人として考えるとわずか0.02%の人しか受けていません。先進医療を受けている人が少ないのは、先進医療に認定されている治療内容がどんなものか、実際に知られていないからかもしれません。
イザというときのために保険で先進医療特約を付けている人は、あらかじめ、先進医療にどのようなものがあるのか知っておくことが大切です。今回は、先進医療について解説します。
先進医療とはそもそも何?
先進医療とは、厚生労働省で承認された高度な医療技術を用いた療養のことで、まだ公的保険の対象になっていない治療のことを指します。先進医療は将来的に、厚生労働大臣が認める保険給付の対象になるかどうかの評価が必要とされる療養(評価療養)となります。先進医療を受けるためには、一般的な保険診療を受けるなかで「患者が希望し」、「医師がその必要性と合理性を認める」という条件を満たす必要があります。言い換えれば、先進医療は、患者が自身の病気に効く可能性があることを知り、自ら希望することで受けることができる治療です。
・がん治療:がんの陽子線治療、重粒子線治療
・不妊症治療:子宮内膜刺激術、子宮内膜擦過術
・家族性アルツハイマー病:家族性アルツハイマー病の遺伝子診断
詳しくは「先進利用の各技術の概要」で確認できます。
先進医療を実施する医療機関はさまざまな条件を満たす必要があり、どこでも受けられるわけではありません。先進医療の治療を知ることとあわせ、実施している医療機関も知っておくとよいでしょう。
参考:先進医療を実施している医療機関の一覧|厚生労働省
しかし、先進医療にかかる費用以外で、診察、検査、入院などのように一般的な保険診療の対象になる部分は、所得に応じた医療費の一部分(自己負担分)のみ負担することになります。
たとえば、かかったすべての医療費が100万円。このうち先進医療にかかる費用が20万円、残り80万円が保険給付対象(診察、検査、投薬、入院料)だった場合で考えてみましょう。前提として、20万円の先進医療の給付金がでる保険に加入しているとします。
《先進医療にかかる費用20万円》
・20万円の全額を患者が自己負担
《保険給付対象の医療費80万円》
・80万円のうち、7割となる56万円は各健康保険制度が負担
・80万円のうち、所得に応じた医療費の自己負担分が3割の場合は24万円が患者負担
高額療養費制度を考慮せずに、そのまま計算すると「20万円(先進医療分)+24万円(患者の所得に応じた自己負担分が3割の場合)=44万円」を病院に支払います。
もし医療保険の「先進医療特約」を付けているのであれば、高額な医療費をカバーができることになります。つまり、先ほどの例だと、先進医療特約から20万円が給付され、患者が負担する医療費は通常の窓口負担する24万円(患者の所得に応じた自己負担分が3割の場合)となります。
※なお、窓口負担する24万円(所得に応じた自己負担分が3割の場合)は、高額療養費制度が適用されます。患者の所得に応じて、さらに負担が軽減されます。
しかし、その前に先進医療とは何かを知っておかないと、本当に必要になったときに「先進医療特約」を活用することができません。実際にどんな先進治療があるのか、医療費のどの部分が先進医療特約でカバーされるのか、時間のあるときに確認しておくとよいでしょう。
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先進医療は81種類ある
厚生労働省が公開している2023(令和5)年5月時点で承認されている先進医療は81種類あります。そのうち、代表的なものは次のものです。・がん治療:がんの陽子線治療、重粒子線治療
・不妊症治療:子宮内膜刺激術、子宮内膜擦過術
・家族性アルツハイマー病:家族性アルツハイマー病の遺伝子診断
詳しくは「先進利用の各技術の概要」で確認できます。
先進医療を実施する医療機関はさまざまな条件を満たす必要があり、どこでも受けられるわけではありません。先進医療の治療を知ることとあわせ、実施している医療機関も知っておくとよいでしょう。
参考:先進医療を実施している医療機関の一覧|厚生労働省
先進医療を受けると、かかるお金はどれくらい?
次は、先進医療を受けるときにかかる費用を確認しましょう。先進医療にかかる費用は、患者が全額自己負担することになります。しかし、先進医療にかかる費用以外で、診察、検査、入院などのように一般的な保険診療の対象になる部分は、所得に応じた医療費の一部分(自己負担分)のみ負担することになります。
たとえば、かかったすべての医療費が100万円。このうち先進医療にかかる費用が20万円、残り80万円が保険給付対象(診察、検査、投薬、入院料)だった場合で考えてみましょう。前提として、20万円の先進医療の給付金がでる保険に加入しているとします。
《先進医療にかかる費用20万円》
・20万円の全額を患者が自己負担
《保険給付対象の医療費80万円》
・80万円のうち、7割となる56万円は各健康保険制度が負担
・80万円のうち、所得に応じた医療費の自己負担分が3割の場合は24万円が患者負担
高額療養費制度を考慮せずに、そのまま計算すると「20万円(先進医療分)+24万円(患者の所得に応じた自己負担分が3割の場合)=44万円」を病院に支払います。
もし医療保険の「先進医療特約」を付けているのであれば、高額な医療費をカバーができることになります。つまり、先ほどの例だと、先進医療特約から20万円が給付され、患者が負担する医療費は通常の窓口負担する24万円(患者の所得に応じた自己負担分が3割の場合)となります。
※なお、窓口負担する24万円(所得に応じた自己負担分が3割の場合)は、高額療養費制度が適用されます。患者の所得に応じて、さらに負担が軽減されます。
厚生労働省HPより「先進医療の概要について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index.html
まとめ
医療保険に加入して、先進医療特約を付けたときは「通常では受けられない治療の金銭面がカバーできるから安心!」と感じたかもしれません。しかし、その前に先進医療とは何かを知っておかないと、本当に必要になったときに「先進医療特約」を活用することができません。実際にどんな先進治療があるのか、医療費のどの部分が先進医療特約でカバーされるのか、時間のあるときに確認しておくとよいでしょう。
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