大人もゆとりをもつべきだと反省
アキオさんにはその娘の下に、11歳の双子の息子がいる。妻の母親が近くに住んでいるので助けてもらいながら共働きを続けてきた。「双子の息子は、ひとりはのんびり、ひとりは娘と同じく追われるように生きている。時代や環境だけで子どもの性格が決まるわけではないんだろうなと思いつつ、娘の生き方は気になりますね。娘が小さいころは双子の世話が大変だったから、娘には寂しい思いをさせたのかもしれないと今になって思っています」
娘は時間をかけて、自分にピッタリ合う気に入った靴を見つけた。そのときの娘の表情がアキオさんの心を和ませたという。
「帰りには、娘の行きたがっていたパーラーに行って、ちょっと贅沢なランチとパフェを食べました。僕はほとんど自分からは何も言わず、娘の話をひたすら聞いた。娘にとっても楽しい時間だったようです。家に着いたとき、『今日の時間は無駄だったかな』と言ったら、『無駄じゃなかった。こういう時間も大事だってわかったよ』と笑顔を見せてくれました。あとで妻に聞いたら、よほど楽しかったらしい、と。子どもたちひとりひとりとこういう時間を親が持つ必要があるかもしれないと妻とも話しました」
子どもだと思っていても、10代ともなればそれぞれが自分の考えを構築していく時期でもある。この時期に、親としてという権威的な意味ではなく、ひとりの大人として対話を重ねていくことが、子どもたちが成長していく上で大事だと彼は痛感しているそうだ。
「少しずつ、子どもたちの世界を広げていってもらわないと。同時にネットにすべてを求める彼らを、地上の現実に引き戻すことも大事ですね。うちも忙しいからついネットで買い物をしがちですが、地元の店やスーパーなどをもっと活用している現実を子どもたちにも見せなくてはいけないかもしれない。そんな反省もしています」
混沌とした世の中だからこそ、子どもたちにはより幅広い選択肢と、そこから自分に必要なものを見抜く目を養うことが重要なのだろう。
「責任重大ですが、そうとらえずにまず大人こそ、気持ちに余裕をもったほうがいい。娘と買い物をしてみて、僕自身もゆとりのない生活をしていたなと思っています」
便利になったはずなのに、その便利さが逆に不便とストレスを生むような時代。まずは大人が腰をすえて生活していくべきなのかもしれない。