Q. 改訂後の四谷大塚開発教材『予習シリーズ』に挫折寸前です
今回は大手塾に通う小学5年生のボリュゾ層(ボリュームゾーン、偏差値中央付近のこと)の子が、「予習シリーズが難しすぎてついていけず、撤退か転塾を考えている」というお悩みについて、中学受験の現状や子どもの成長について触れながら、アドバイスしていきたいと思います。Q. 中学受験塾に通う、ボリュゾ5年。第一志望に合格した上の子と同じ、都内大手塾に通わせています。しかし、『予習シリーズ』が改訂されて難化したせいか、親が見ても難しくなっていて学習ペースも早く、下の子はついていけていないようです。このまま置いていかれてしまわないよう、面倒見の良さそうな小規模塾などに「転塾」するか、中学受験から「撤退」するか悩んでいます……。
首都圏だけでも約2万人のボリュゾが!? 激化する「中堅層」の中学受験
首都圏模試センターの推定によると首都圏の中学受験者数は、2007年に一度5万人を超えた後、徐々に減少して沈静化を見せていましたが、2014年頃から再び上昇傾向を見せ、2022年には5万人を突破。2023年はさらにその人数を増やして過去最高を更新しました(*1)。また四谷大塚の推計では、その人数は約5万4700人にも上り、首都圏の小学6年生の約5人に1人が中学受験を経験したことになります。
かつては偏差値上位校を狙う生徒にスポットライトが当てられがちだった中学受験の世界も、「ボリュゾ」といった言葉に代表されるように「中堅層」への関わり方にも注目が集まるようになりました。「入試改革」が唱えられるようになった頃から、大学受験に対する不安により、中学受験で附属校に入れたいと思う家庭が増えたからです。
では、ボリュゾ層の子は、一体どれくらい存在するのでしょう。
塾や模試によって母集団の成績分布に違いがあるため、単純に論ずることはできませんが、一般的に偏差値60以上、また偏差値40以下の生徒の割合は16%程度とされるため、単純計算で偏差値40~60の範囲には、全体の約68%もの生徒がひしめき合っていることになります。この範囲を偏差値45~55に狭めても、その割合は38%です(*2)。
これを先ほどの中学受験者数に当てはめると、あくまで推計ではありますが、首都圏の小学6年生だけでも約2万人いることになります。
小5で苦しんだ後、小6で精神的成長が進んで好展開するパターンも
実はテキスト改定が入ってから難化したのは、四谷大塚の開発教材『予習シリーズ』だけではありません。栄光ゼミナールなどで使用されている『中学受験新演習』という塾用テキストも、単元によっては異様に難しくなっており、その運用に苦慮している塾も少なくありません。これは入試問題自体の難化と倍率アップにより、これまで基本問題さえ解ければ難問は捨てることもできたのが、そうではなくなってきたことが考えられます。
では、どうすればいいのか。どこの塾に行ってもテキストが難化しているのなら、「転塾」しても状況を変えることはできないのでしょうか。もう中学受験を「撤退」するしかないのでしょうか。
筆者の教え子の中にも、小5の難しい学習内容についていけず苦しんでいた生徒は何人もいます。しかし粘り強く繰り返し指導しているとだんだん理解が進み、対応できるようになってきました。また、小6後半に一気に精神的成長が進み、受験勉強に対する向き合い方自体が変わって、成績が伸びるようになった生徒も少なからず存在します。
そのためまだ小5の段階で諦めてしまうのは、早いと思います。
大手塾の指導体制やクラス変更システムが“肌に合わない”と感じたら
では、今の塾で頑張るという選択肢はどうでしょう。大手塾には大手塾の良さがあり、多くの小学生にとっては、成績を伸ばすことができる環境が整っています。
しかしその割合は100%ではないでしょう。指導体制やクラス変更システムなどがどうしても肌に合わない生徒は、一定数います。その割合がたとえわずか10%であったとしても、中学受験者数は今や首都圏で5万人を超えるわけですから、その数は相当数にのぼるはずです。
もし、合わないかもと感じたら、他の選択肢は数多くあるのですから、気楽な気持ちで別の塾を探せばよいのではないでしょうか。
その際、一点だけ注意したいのは、同じようなところに転塾しても、結局同じ結果になってしまいかねないということ。
例えば、転塾の理由が、先生の説明が分かりづらいからであるなら、説明が上手な先生のいる塾を探しましょう。中堅層や成績下位の子へのフォローが足りないと感じたのなら、きちんとフォローしてくれる塾を探せばいいわけです。
【参考】
*1「2023年私立・国立中学受験者数は過去最多の52,600名、受験率も過去最高の17.86%に!《首都圏》」(首都圏模試センター)
*2「偏差値とは何?偏差値の意味と求め方・計算方法をわかりやすく解説!」(栄光ゼミナール)