吃音(きつおん)とは……「どもり」が起こる発語障害
吃音の症状がある子どもに「ゆっくり話しなさい」は禁句? 正しい接し方とは(画像はイメージ)
吃音は、話し言葉が流暢に出ない発語障害の一つで、いわゆる「どもり」です。吃音は二語文を話し始める2~5歳頃から見られ、約7~8割は自然に治っていきます。ただし、2~3割は大人になっても残ることがあります。
吃音の症状、注意点、治療法について、わかりやすく解説します。
<目次>
吃音の症状……音の繰り返し・引き伸ばし・間の出現
「吃音」と一言で言っても、症状の出方には個人差があります。主に以下の3つの症状に分けられます。- 音の繰り返し……特に最初の言葉を繰り返します。(例)「わ、わ、わたし」など
- 引き伸ばし……ある単語を伸ばして言います。(例)「わーーーたし」など
- 間の出現……言葉が出ずに間ができ、「難発」「ブロック」とも言います。(例)「……わたし」など
吃音の分類……発達性吃音と獲得性吃音
吃音の原因は、大きく2つに分けることができます。「発達性吃音」と「獲得性吃音」です。■発達性吃音
吃音のうちの9割を占めます。2~5歳に発症し、幼児の発症率は約8%、有病率は約0.8%、男児に多く見られます。原因としては、遺伝も含めた吃音になりやすい体質、発達時期の影響、周囲の人や生活上の出来事などがあります。
■獲得性吃音
神経疾患や脳損傷によって発症します。心的なストレスや外傷体験によって起こる吃音です。発症時期は青年以降です。
吃音を悪化させないための注意点
吃音が進むと、話そうとしても最初の言葉が出なくなることが増えます。吃音が出た時に、笑われたり、「ゆっくり話してごらん」と注意されたり、周りの反応を見てうまく話せなかったと感じたりすることで、話すことが嫌な記憶や不快感と結びついてしまいます。こうなると、話すこと自体に嫌悪や不安を感じるようになり、「最初の言葉が出ない」という症状に悩むことになります。
特に親や先生など、周りの大人が、吃音を悪化させるような言動をしないことが大切です。
子どもの吃音の症状への対処法・吃音の治療方法
吃音は原因がわからないことが多いため、治療方法も確立していません。吃音がある子どもの場合、調子が良い時と悪い時があります。親や身近な大人ができることは、吃音を指摘して、子どもを焦らせないことです。
最初の言葉が出にくい場合、ちょっとした工夫をしたことで、話せるようになるケースもあります。例えば、最初に「あのー」という言葉を付けることで、その後の言葉がスムーズに出てくることもあります。
子どもの場合は、気になる症状はまずは小児科で相談をされるのがよいでしょう。症状の度合いによって、耳鼻科、リハビリテーション科(できれば言語聴覚士が在籍)、心療内科などでも診察を受けることができます。病院で行う治療法としては、症状にあわせて、抗不安薬などの薬物療法や、行動療法、環境整備などがあります。
主な行動療法としては、以下のような方法があります。
吃音がなくなることを目標にせず、目立ってつらい吃音を比較的目立ちにくくすることで、楽にしていく方法
■流暢性形成法による吃音の行動療法
吃音が出にくくなるように、ゆったりとした速度で、あるいは引き伸ばして、柔らかい起声によって発話する方法
■リッカム・プログラムによる吃音の行動療法
繰り返して報酬が得られることで、その直前の行動が増えることを使って、発話行動を変えていく訓練
などがあります。
最初にもお伝えしましたが、吃音の多くは自然に治っていきます。「ゆっくりと話しなさい」「落ち着いて」という言葉も、できれば避けたほうが良いでしょう。より焦る可能性があるからです。日常的にできることは、「ゆっくりと聞くようにすること」です。