定年まであと3年。仕事をしない人生を楽しみにしている人もいれば、経済的にも時間的にも恐怖感を覚えている人もいる。
定年後のことを考えると不安がつのるばかり
60歳を過ぎても子どもにお金がかかる
「僕はお先真っ暗ですよ」会うなりそう言うのは、サトシさん(57歳)だ。定年まであと3年だ。ところが彼が結婚したのは40歳のとき。今、ふたりの子は15歳と12歳。まだまだ学費がかかる。
「子どもは若いうちにもうけたほうがいいですね。30代は仕事が楽しくて、周りが結婚していっても僕は独身でいいと思っていたんです。ところが30代後半になったら急に寂しくなってあわてて結婚しました。子どもも産まれてよかったなと思ったものの、経済的にはきついです。妻もパートで働いていますが、子どもが大学に行くなら奨学金を頼るしかありません。独身時代に買った中古マンションも手狭ですしね。定年までに資格をとろうと思っていたけど、あと3年でとれるかどうか……」
もちろん、退職して悠々と暮らすのは夢のまた夢。70歳までは働き、子どもたちには迷惑をかけないようにしたいと言う。
「今だって、うちはかなりきついですよ、生活が。電車で1時間ほどのところに両親が住んでいますが、うちの父は自営業だったので年金が少ない。商売がだんだんうまくいかなくなってやめたので、借金こそないけど貯金もない。70代半ばの父と母は今もアルバイトをしています。僕に甲斐性がないから申し訳ないとも思う。借地に建てた実家は築50年くらいになるんじゃないでしょうか。そういうことも考えると、本当に闇に落ちますね」
あとは自分が健康を保って、いつまでも働くしかないと彼はつぶやいた。
>出向続きで人間関係に悩んだ夫は……