実家暮らし、「こどおば」の本音は
友人に「こどおばじゃん」と笑われた
「実家にいるだけで白い目で見られるのは本意じゃないんですけどね。反論しても意味ないからしないけど」あきらめたようにそうつぶやくのは、サホリさん(40歳)だ。実家で70代の両親と3人で暮らしている。
大学を卒業したものの就職活動はうまくいかなかった。当時の冷え切った社会状況もあったし、ちょうど両親が立て続けに体調を崩し、彼女しか面倒をみる人間がいなかったこともある。
「それでも卒業間近になんとか中堅企業に潜り込むことができたんです。ただ、そこはその後、大手企業に買収されて私はリストラを迫られ、退職金を上乗せするからと言われて退職しました。といっても数年しか勤めてないので退職金なんて雀の涙でした」
以来、派遣や契約社員といろいろ名目は変わったが、ずっと働いてはきた。だから私はニートではない、親に食べさせてもらっているわけでもないというのだ。
「実家がたまたま都内の便利な場所にあるので、ひとり暮らしするのは家賃がムダだなと思うんですよね。親の体調もすぐにわかるし、同居していて悪いことは何もない。うちは姉がいますが、遠方で家庭を持っているし、姉は義兄の両親の面倒を見ている。だから私が自分の親を見るしかないわけです」
食事は「ふたり分も3人分も同じだから」と母親が作ってくれる。母親の調子が悪いときは、サホリさんが帰宅してから作ることもある。
「30代のころは、このままいくと老人家族になる、なんとか早く結婚して脱出しなければと思ったこともありますが、今はこれでもいいかという感じですね」
週末は地域の公共体育館で卓球やヨガに汗を流す。そこで出会った年上の友人たちと、ペットボトルのお茶を飲みながら愚痴を吐くこともある。80年代の歌謡曲に魅せられ、当時の歌手を追いかけていたら、SNSで仲間もできた。
「それでも学生時代の友だちに会ったとき、『サホリ、それってこどおばじゃん!』と言われたんです。『いいよね、いつまでも子どもでいられて。私たちは子どもの教育に必死なのに』とも。遠慮のない関係だからこその言葉だと思うけど、グサッとはきましたね」
結婚しないと決めたわけではない。なのに、あなたは一生子どもでいるんだねと決めつけられたような気がした。
>だれが老齢の親の面倒をみるのか?