もっと「前を向かないとダメよ」と言われて
ナナミさんは、いつもため息をつくようになった自分に気づいた。思わずママ友LINEで愚痴を言うと、いっせいにみんなが慰めてくれた。「うれしかったです。つい甘えて何度か愚痴を吐いてしまったんです。そうしたらひとりが、『愚痴っているだけじゃ前に進めないよ』と。それに呼応するように他の人たちも『そうよ、つらくても明るくしていないと。あなたはママなんだから』『子どもに悪影響があるから、いつも元気にしていないとね』と激励の嵐が吹いてきました。
わかってるんです、でもつい弱音を吐きたいこともある。でもそれが許されないんだなと思いました。『私が両親のことで困ったときはこうした』という経験談もあったけど、私はそんなに前向きになれない。行動力もない。仕事があるからなかなか思い切った行動がとれないと言ったら、『自分の親でしょ。今動かないと後悔するわよ』と」
ただ、実際のところ、彼女は母親と折り合いが悪かった。それに両親の住む地域の福祉関係機関ときちんとつながって相談にも行ったし、やれることはやったつもりだった。母のメンタルについても福祉関係が協力態勢をとってくれている。
「母の愚痴は、ある意味ではわがままみたいなものなんです。もともと愚痴と人を責めることが得意な人だから。でもママ友にうっかりそんなことを話したら、『それでも親子なんだから、わかりあえるわよ』と。あまりに疲れて平日に半休をとって休んでいたら、専業主婦のママ友に『半休とったのなら、近くの公共体育館でヨガをやっているから来れば?』と誘われたんです。でも動けなかった。いろんな疲労がたまってしまって。それでも『元気出して。前だけ見て走っていないとつぶれちゃうわよ』と。いや、そんなに元気ではいられない」
みんな元気が出ないときもある。それでも自ら元気を出して頑張っている。なのにあなたは……とLINEでメッセージが届いたこともあった。前向きは疲れる。たまには休ませてほしいとナナミさんは独り言のように言った。
「夫はママ友と付き合わなければいいと言いますが、ここに住んでいる限り、そうもいかない。あいさつだけしかしないというのも角が立つし。会社に言って出社形式に切り替えたほうがいいのかなとも思っていますが、そうすると時間的にきつくなるし。いろいろ悩むところです」
とりあえずはLINE上だけでも、元気なふりをしているしかないと彼女は苦笑した。