マスコミのせい? 受け止め方の問題も……
「私はあの質問は不快でした」そう言うのは、ミチエさん(35歳)だ。もちろん、そう思う人もいるだろう。
「女性だからといってパートナーがいるかどうか、子どもがいるかどうか、すぐに聞きたがるのが不愉快。宇宙飛行士だけの話ではなくて、プロの女性アスリートなどにもやたらと私生活を聞きたがりませんか、日本のマスコミって」
それは女性に限らない気もするし、日本だけの話ではないような気もする。「その人のことを知りたい」のは誰にとっても共通の興味だからだ。とはいえ、「ママさんアスリート」に注目が集まり、子どもとの絆を美談として語られる風潮は少し食傷気味ではあるが、それが放送されて勇気を得られる人もいるのだろうし、一概に私生活を見せるのがアウトだとは言い切れない。
だが、向井千秋さんの時代に比べれば、今はそのあたりにも気を配る風潮は強くなっている。そして同時に、結婚が大々的に報道され、ある意味、追いかけ回された夫の向井万起男さんが、妻を誇りに思うと言い続けたことが懐かしい。
今ならそれもまた、「妻をだしにして承認欲求を得たい男」などと叩かれてしまうのではないだろうか。ネットのなかったあの時代は、「おもしろいダンナさん」「妻について行くってステキ」と話題だったのだ。
本人がテレビカメラの前で語る言葉がストレートに流れ、ストレートに受け止められていた時代は、「ほう、こういう夫婦のありようがあるのね」とおもしろがる余裕が誰の心にもあったのかもしれない。
そしてそんな時代は、はるかかなたに去ってしまった。時は決して戻らない。