人間関係

統計が物語る「モラハラ離婚」の激増…“支配と独占”で愛を表現する夫に専業主婦を強要されて(2ページ目)

最新の「司法統計」によれば、離婚理由における「モラハラ」の割合が激増していることがわかる。夫の愛は「支配と独占」だったと語る30代女性が、自身の体験を語ってくれた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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日が経つにつれ、夫の発言にムッとして

愛情を前面にさえ出せば、何を言ってもいいわけではない。夫の「嫉妬や心配」はそのうち、嫌味や皮肉に変わっていった。

「夕方、残業があるとLINEを送ると『オレのご飯より仕事が大事なんだね、わかった』と返事がくる。共働きなのに家事や料理は私がひとりでやっていました。夫もひとり暮らしだったのに何もしないんです。あとで聞いたら、実家の母親が週に数回来て、家事を全部やってもらっていたそう。ひとり暮らしだから自立しているはずと思い込んだのが間違いだった」

週末、掃除をしていると、夫は「先日、先輩の家に行ったら、すごくきれいでびっくりした。専業主婦がいるってそういうことだよね」と嫌味を言う。思わず「先輩の給料はいくらなのかな、生活費5万円なのかな」と言いたくなったアキさんだが、揉めたくないのでぐっとこらえたそうだ。

「でもなんだかだんだんバカバカしくなってきました。時間がなくて惣菜を買ってくると、『体に悪そう』と言い出し、挙句『オレはいいや』とカップラーメンを目の前で作り始める。じゃあ、あなたの分の料理はしなくていいのねと言うと、『そんなことは言ってない。ちゃんとした料理なら食べる』って。ちゃんとした料理って何よと聞いたら、『ご飯と味噌汁、メインと副菜、全部手作り』と。じゃあ、あなたがまず見本を見せてと言ったんですよ。そうしたら『男がそんなちんまりしたことはできないよ。うちの母親は父にも僕にもそんなことはさせなかった』と。

『お義父さんは収入多かったんでしょうね』と思わず言ってしまいました。義父は大手商社のエリートサラリーマンで、収入も相当あったはず。夫は父親に劣等感を持ちながらも自慢するという複雑な心境だったみたい。私の言葉に『収入が多いと偉いのか』と吐き捨てるように言いました」

2年経つうちに疲れ果てたアキさんは離婚を考えるようになった。心が離れていくのを感じたのか、夫は「子どもがほしい」と言い出した。

「君だっていい年なんだから、早く産まないとと言われて、かなりカチンときましたね。子どもがいたら今までのようには働けないよねって、夫はちょっとうれしそうに言うんですよ。私が働かないと収入は激減して今のような暮らしはできないことに気づいていない。私は私なりに努力しました。夫が『本格的なカレーが食べたい』というから、スパイスセットを買ってきて週末、時間をかけて作ったら、『こういうのは一昼夜煮込まないとダメなんだよ。味に深みがない』と却下されました。それなりにおいしかったですけどね」

やることなすこと否定されることに彼女は疲れ、ある日、家を出てウィークリーマンションに避難した。連絡はしたが居場所を明かさずにいると、夫は会社の前で待ち伏せしていた。

「その様子を見て、ちょっと怖くなってしまったんです。夫も繁忙期のはずなのに、そうまでするのかと。愛情ではなく、執着ですよね……」

もめごとを大きくしたくはなかったし、逆恨みされるのも怖かった。彼女は両親に相談し、ひそかに別の場所にアパートを借りて、夫の留守に引っ越した。

その後、弁護士をたてて、離婚に向けての協議を始めたが、夫は「とにかく妻に会わせてほしい。会えば気持ちは変わるはず」と断言した。

「愛されていると思っていたけど、夫の愛は方向性が違う。それについては最後までわかってはもらえなかったし、モラハラの件も夫の心には届かなかった」

離婚して3年たつが、今でも「ちゃんとした料理くらい出してよ」という夫の声が聞こえてくることがあるとつらそうに言った。

※「令和3年 司法統計年報概要版(家事編)」(最高裁判所) 
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