別府には、日本の源泉の約1割にあたる2200の源泉があり、あちこちから湯煙が立ち上る風情たっぷりの街です。ちなみに別府の湧出量は毎日およそ5万トン。一般的なバスタブを200リットルとすると25万個分。別府市の人口が12万人弱なので、1人2回お風呂に入れる計算です! そんな別府温泉を代表するホテルの1つが、1944年(昭和19年)開業の老舗「別府温泉 杉乃井ホテル」(以下、杉乃井ホテル)。長年にわたり、さまざまな施設をオープンさせながら、少しずつ規模を拡大し、西日本を代表する大型温泉リゾートへと成長しました。
そして今は、2025年に完了する大規模リニューアルの真っただ中。2021年に「虹館」がオープンしたのに続き、2023年1月にはワンクラス上の滞在が叶うフラッグシップ棟「宙館(そらかん)」が誕生しました。今回は、魅力いっぱいの杉乃井ホテルと宙館をレポートします。
<目次>
西日本を代表する大型温泉リゾート「杉乃井ホテル」
新館「宙館」の紹介の前に、杉乃井ホテルの説明を少し。地図を見てもわかるように、非常に敷地が広く、施設も多様です。具体的には、抜群の眺望を楽しめる大展望露天風呂「棚湯」(※2023年6月までリニューアル工事中)をはじめ、水着で楽しむ屋外型温泉「アクアガーデン」、ボウリングを楽しめる施設などがあり、1日たっぷり遊べます。
地元からも愛されていて、子どもの頃から通い詰めている人も少なくありません。ファミリーからとくに人気ですが、もちろんターゲットはファミリーだけではありません。
「杉乃井ホテルの特徴の1つがターゲットを絞らないこと。もちろん、GWや夏休みなどご家族連れのお客さまがとくに多い時期もありますが、年間を通してみると、幅広いお客さまにいらっしゃっていただけています」と話すのは、杉乃井ホテルを運営するオリックス・ホテルマネジメント株式会社執行役員営業本部長の森直樹さん。
今回誕生したフラッグシップ棟「宙館」はまさにそれをふまえたもの。ファミリーフレンドリーな杉乃井ホテルの姿勢はそのままに、これまで以上に幅広い人たちに愛される多様性のある施設になっています。それでは、「宙館」について詳しく紹介していきましょう。
フラッグシップ棟「宙館(そらかん)」誕生!
2023年1月26日にオープンした別府温泉 杉乃井ホテル「宙館(そらかん)」。宙館というネーミングは、杉乃井ホテルの一番高い場所にあり、天空の絶景が見渡せることから、“大空の上に広がる果てしない宙(そら)”をイメージして命名されたそう
宙館の大きな特徴が、館内に温泉とレストランがあること。すでに杉乃井ホテルには大展望露天風呂「棚湯」やワールドダイニング「シーダパレス」などの自慢の温泉やレストランがあるのですが、施設の広さゆえにそれぞれ独立していたのです。
「施設間はバスが走っていますが、1つの館内で食事や温泉を楽しみたいというお客様もいらっしゃいました。この宙館はそうした声にも応えられるものです」(森さん)
絶景に感動! 展望露天風呂「宙湯(そらゆ)」
別府温泉は「別府八湯」と呼ばれる8つの温泉郷からなり、「杉乃井ホテル」がある観海寺温泉は、高台にあって見晴らしの良さが特長。その地の利を最大限に生かしたのが、宙館の最上階にある展望露天風呂、その名も「宙湯(そらゆ)」です。高さは海抜約250m。眼下には別府の町並みや別府湾、鶴見岳などが見えます。幻想的な夕景や神々しい朝日など、時間によって光や風が変わり、時間を忘れてしまいます。とくに女性風呂からは、正面に朝日が昇る様子がよく見えるので朝風呂もぜひ。
泉質はナトリウム塩化物・硫酸塩温泉。無色透明で、メタケイ酸を含む美肌の湯です。お湯で肌が潤い、絶景で心が潤う贅沢な湯浴みは、宙館ならでは。男湯にはドライサウナ、女湯にはミストサウナがついているので、さらに“ととのう”ことも可能です。
おいしい! 楽しい! ビュッフェレストラン
ビュッフェレストラン「TERRACE & DINING SORA」で楽しむ夕食と朝食も、宙館に泊まる醍醐味。ハイレベルな食にも、フラッグシップ棟の本気と矜持を感じます。オープンキッチンを備えた広いレストランには、和洋中のビュッフェ料理がずらり。多くはその場でシェフが調理したり、切り分けたりしてくれます。
料理はジャンルごとにわかれていて選びやすいのもポイントです。味はどれも本格的! 中華料理には北京ダックも。また、温泉の蒸気熱を利用して食材を蒸す別府の名物料理「地獄蒸し」をイメージした蒸し料理など、地元の美味も並んでいました(※料理は変更になる可能性もあります)。
パティシエがその場でしぼってくれるモンブランをはじめ、デザートも充実。お腹の配分を上手にしてぜひ最後まで存分に楽しんでください!
コーナーの1つに「キッズ」があり、唐揚げやポテトフライ、エビフライ、ミニバーガーなど子どもが好きなメニューが勢ぞろい。リクエストすれば市販の離乳食や哺乳瓶などを用意してもらうこともできます。
レストランにはカフェ&バー「LOUNGE」が隣接しているので、食後のひととき、あるいは午後のティータイムをのんびり過ごすのもおすすめです。
別府の自然を感じる上質な客室
客室は全336室、全5タイプ。共通しているのは、別府の自然をイメージしたテーマカラーをあしらっていることです。デラックスの客室には「青海」「森林」「夕凪」の3種類のテーマカラーがあり、たとえば別府湾にインスピレーションを受けた深いブルーの色調を効果的に配した「青海」の客室は爽やかな印象です。スタンダードの客室は、鶴見岳など、別府を囲む山々のグリーンをイメージした「森林」がテーマになっています。
カジュアルの客室には、波が穏やかな夕暮れ時のゆったりした様子をとらえた「夕凪」をテーマにしたデザインと「青海」のデザインがあります。どれもシックで上品です。
全室にはタブレットが配置され、混雑状況の確認や事前精算が可能。子連れでもバタバタせずにスマートな旅が叶います。また、赤ちゃん連れの場合、ベビーベッド、ベビーガード、バンボ、補助便座、踏み台、おむつゴミ箱などを用意してもらうこともできます。また、3世代旅行にぴったりなコネクティングルームもあります。
館内に飾ったアートも見もの
館内の随所にアートが飾られ、上質感を演出しています。たとえば、ロビーの壁面を飾るのは、世界で活躍する左官職人である久住有生さんによるもの。高さ約4m・長さ約25mの壮大なアートは「風土」をテーマに掲げ、別府の山々から吹き下ろす風が別府湾にたなびくイメージを具現化したものです。別府市にゆかりのある工芸品やアーティストの作品もあります。ロビーにある花台は、別府在住の陶芸作家、坂本和歌子さんの作品です。このほかレストランや大浴場の脱衣所など館内各所で竹細工や小鹿田焼などの地元のアートを見かけます。
杉乃井ホテルを運営するオリックス・ホテルマネジメントでは、数年前に「地域共創プロジェクト」を立ち上げ、会社として地域と共に歩む姿勢を強めています。館内に大分や別府ゆかりのアートを多く設置しているのも、その一環。また、杉乃井ホテルに滞在するだけでも充分楽しめるほどのコンテンツを誇りつつも、せっかくなら街歩きなどを楽しんで地域の魅力を発掘してほしいとホテル側も考えているそうです。
季節を感じる庭園「ソラニワ」
親子におすすめのスポットは、庭園「ソラニワ」。大分の名産である、シイタケやカボスのモニュメントがユニーク。子どもが遊べる「ふわふわドーム」は2つあり、対象年齢を3~6歳と7~12歳で年齢をわけているので子どもたちが安心して遊べます。ボウリング施設リニューアル、噴水ショーも刷新
ここからは「宙館」以外の最新情報もお届けします。「宙館」と同じタイミングで新しくなったのが「SUGINOI BOWL & PARK」です。もともとボウリングのみが楽しめる施設だったところを、卓球やビリヤード、ダーツ、カラオケなども楽しめる空間に刷新。ユニバーサルスポーツとして注目されるボッチャにも挑戦できます。
アクアガーデンで夜間に開催している「噴水ショー」も、2022年12月から新プログラム「AQUA DREAMS 湯街夢夜(アクアドリームズ ゆのまちゆめや)」がスタート。水と光が織りなす約10分間のナイトエンタメショーで、宿泊者は無料で楽しめます。
「杉乃井ホテル」宙館の基本情報
長い歴史と人気に甘んじず、進化を続ける杉乃井ホテル。大規模リニューアルとしては2025年に「星館」の開館も控えています。「さまざまコンテンツを定期的に更新しながら、いつ来ても、何度来ても楽しんでいただけるような施設であり続けたい。ただ大事なのはコンテンツ自体ではなく、それをきっかけにご家族やカップルなど、訪れた方たちに旅先ならではの新しい会話やコミュニケーションが生まれること。それによって大きな満足感を得られて、また戻ってきていただける、そんな場所になれることを目指しています」(森さん)
ファミリーはもちろん、シニアも若者も、みんなが楽しめる杉乃井ホテル。誰ときても自分らしい時間を過ごせる宿です。
別府温泉 杉乃井ホテル「宙館」
住所:大分県別府市観海寺1
TEL:0977-78-8888(予約センター9:00~19:00)
料金:宙館「デラックス」ルーム 1泊2食付き1名2万4,750円~ ※公式HP限定プラン10%引き