薬の一般名は難しい…覚えやすく印象的な「製品名」
先発医薬品とジェネリック医薬品は処方箋で見分けられるのか
「一般名」は、薬の有効成分である化合物そのものにつけられている、ほぼ世界中で通用する名前です。私たち人間で言えば「本名」に相当します。一方の「製品名(販売名)」は、有効成分を含んだ錠剤や粉末などの製品全体(添加物なども含めて)に対してつけられたもので、その製品が売られていて馴染みがある地域でのみ通用します。その製品を製造販売している製薬メーカーが販売促進をねらって、覚えやすく印象的な名前を付けていることが多いです。「製品名(販売名)」は、「芸名」や「ニックネーム」に相当します。
一例をあげますと、インフルエンザの治療に使う有名な薬に「タミフル」がありますね。実はこの「タミフル」という名前は、製品名(販売名)に相当します。その中に含まれている有効成分としての薬は「オセルタミビル」です。なので、「タミフル」を一般名で言い換えると「オセルタミビル」となります。
ちなみに、タミフルという製品名は、「オセル“タミ”ビルという有効成分を含んだ、イン“フル”エンザの治療薬」という意味で考案されたそうです。
処方箋の記載に違い! 先発医薬品は製品名・ジェネリック医薬品は一般名
処方箋に、薬が一般名と製品名で記されている場合、それには重要な意味があります。実は、先発医薬品に対しては製品名、ジェネリック医薬品に対しては一般名が用いられているのです。先発医薬品とジェネリック医薬品の違いについては、「「安くて質が悪い」は大間違い!実績あるジェネリック医薬品を選ぶメリット」で詳しく解説していますので、是非お読みください。手短に説明すると、新しく発売されたばかりの薬については、ほとんどの場合、特許が成立しているので、それを開発したオリジナルの製薬メーカーだけに製造販売権が与えられています。そのような薬が先発医薬品です。しかし、長年使われてきた薬については、特許期間が過ぎて、オリジナル以外の製薬メーカーが製造販売しても良いことになります。そのように、一般的になった薬がジェネリック医薬品です。
先発医薬品が医療現場で扱われるときには、たった一社が製造販売している製品だけしかなく、しかもその製薬メーカーが独特な製品名(販売名)をつけて流通させているので、処方箋にはその製品名(販売名)が記されます。
一方のジェネリック医薬品については、たくさんの会社がそれぞれ違う製品名をつけて売り出すと、医療関係者はそれらを全部把握しなければならなくなり、大変煩雑になります。またそれが医師の処方ミスや薬剤師の調剤ミスを生じる要因になりうるので、ジェネリック医薬品にはバラバラの名前をつけることを避け、共通した一般名を使うルールになっており、処方箋に記されるのも一般名になります。
処方箋から先発医薬品かジェネリック医薬品かを区別するコツ
しかし、薬のことをあまり知らない方が処方箋を見ても、先発医薬品の製品名と、ジェネリック医薬品の一般名を区別するのは難しいかもしれません。なぜなら、どちらもカタカナだからです。たとえばさきほど一例として挙げた「タミフル」と「オセルタミビル」。どちらもカタカナで、初めて見たときには意味不明で、区別がつきませんよね。しかし、同じカタカナの薬名を含んでいても、処方箋上で一般名と製品名を区別する方法があるので紹介しておきましょう。たとえば、花粉症などのアレルギー疾患に用いられる、ある薬が処方される場合には、次のような名前が記されます。
- クラリチン錠10mg
- ロラタジン錠10mg「サワイ」
- ロラタジン錠10mg「ファイザー」
- ロラタジン錠10mg「ケミファ」
- ロラタジン錠10mg「日医工」
- ロラタジン錠10mg「アメル」
- ロラタジン錠10mg「NP」
- ロラタジン錠10mg「AA」など
この例では、「クラリチン」と「ロラタジン」が薬名に相当し、同じ有効成分を10mg含んだ錠剤ということなのですが、どれが先発医薬品でどれがジェネリック医薬品か分かりますか。
勘がいい方は気づいたと思いますが、「ロラタジン」とついた製品がたくさんありますね。こちらがジェネリックです。そして「クラリチン」が先発です。ちなみに、先発のクラリチン錠10mgは、バイエル薬品が売っていて、値段は1錠あたり50.2円です。ジェネリックのロラタジン錠10mgは、どのメーカーのものも、値段は同じで1錠あたり19.2円と安くなっています。
ただ、このようにたくさん並んでいればわかりますが、一つだけの薬名を見て区別するには、もう一つコツがあります。ジェネリックの名前の最後には、カッコ書きで製薬メーカーの名前もしくは関連した記号が記されているのに気付いたでしょうか。
実は、ジェネリック医薬品の名前は、
●主薬の一般名+剤形+含量+「会社名(屋号等)」
とするよう定められています。ですから、「会社名」がついている薬名を見つけたら、それはジェネリック医薬品です。そして、その中に含まれているカタカナの名前が、有効成分の一般名に相当します。上の例ですと、「ロラタジン」という一般名の有効成分を含んだ先発医薬品の製品名が「クラリチン」であるということです。
自分で処方箋を見て先発とジェネリックを区別するメリット
自分が飲んでいる薬がどんなものなのか、きちんと分かった上で利用できた方が安心ですよね。ですから、専門家でなくても、病院で薬の処方箋をもらって薬局に持っていく時点で、ある程度読み取れるようになっておいたほうがいいと思います。今回紹介した方法で、先発とジェネリックが区別できれば、いろいろな場面で役立ちます。同じ薬をもらっているはずなのに、ある日から処方箋の薬名が変わって困惑したという方もいるのではないでしょうか。実はそんなケースの多くは、先発品からジェネリックに切り替えられたために、薬名が変わって見えるだけで、実質は変わっていません。上の例で理解できた方なら、以前は「クラリチン錠10mg」だったのが、「ロラタジン錠10mg「サワイ」」になっていても、「カッコ書きで会社名がついているからジェネリックに変わったんだな」と想像つきますよね。ただ、思い込みで間違っていたらいけないので、念のため薬局で薬をもらうときに薬剤師に確認してください。
また、最近はジェネリック医薬品がだいぶ普及してきたので、どれがジェネリックなのかを医師も薬剤師もいちいち説明してくれなくなってきました。なので、多くの方が知らないうちにジェネリックを利用していることが多いです。もし、もらった薬がジェネリックであることを自分で分かるようになれば、薬代の負担が減っていることを実感できるというメリットもあります。
多くの方が、処方箋に記された薬名を見て先発とジェネリックが区別できるようになることで、自分がジェネリックを利用していること、そしてそれが医療費削減に貢献していることを実感してもらえるようになることを期待します。