その後、2023年1月に放送されたバラエティ番組内で「黒はさすがに1色ですよね?」と問われたアンミカさんは、「黒はすべての色を煮詰めると黒になるので、黒は300色あると言われています」と回答。彼女のコメントはとてもキャッチーで、視聴者を惹きつける魅力にあふれていますよね。
ところで、「白は200色」「黒は300色」というコメントは正しいのでしょうか?
結論から申し上げると、白も黒も300種類を超えるバリエーションがあります。ではなぜ、白よりも黒の方が種類が多いと感じるのでしょうか? 今回はその理由を解説します。
「すべての色を煮詰めると黒になる」の意味は?
絵の具の赤・青・黄色を混ぜるとどんな色ができる?
まずは、赤・青・黄色を混ぜるとどんな色ができるのかを見ていきましょう。
- 赤+黄色=オレンジ
- 赤+青=紫
- 青+黄色=緑
- 赤+青+黄色=茶色
絵の具やインキ、フィルターなどは、光を吸収する性質を持っています。そのため、色を混ぜれば混ぜるほど透過率が下がり暗い色になるのです。このような現象を減法混色と呼びます。
補色を混ぜると黒になるって本当?
補色を混ぜると黒になる?
減法混色の三原色とプロセスインキのCMYK
減法混色の三原色とプロセスインキのCMYK
シアン・マゼンタ・イエローを同じ割合で組み合わせると、次の色ができます。
- マゼンタ+イエロー=赤
- イエロー+シアン=緑
- シアン+マゼンタ=青
- シアン+マゼンタ+イエロー=黒
白よりも黒の方が種類が多いと感じるのはなぜ?
市場の需要やトレンドを考慮した色見本を提供しているパントンが、ファッションやインテリアなどの業界向けに提供している色見本帳(FHI Cotton TCX:綿の布地に染色したもの)には、全2625色が収録されています。そのうち黒は116色(4.4%)、白は32色(1.2%)です。色見本帳は白い綿の布地を染めて作られています。綿花栽培が普及するにつれて、色むらのない白い綿花を求めて品種改良が進められた結果、白には生成り色、エクリュといった、漂白しない自然のままの色が生まれました。そのため、白は着色しない色=無色という印象があるのでしょう。
また印刷で白を表現したいときも、用紙の地色の白を利用します。絵の具を使うときも、白を使わずに用紙の白を生かすことが多いのではないでしょうか。用紙の白にもさまざまな色があるものの、黒に比べるとその違いが意識されにくいのかもしれません。
パントン色見本帳(FHI Cotton TCX)の黒の例
黒の色名を見ていくと、アスファルト、メテオリット(隕石)、マグネット(磁石)、グラファイト(黒鉛)、カーボン(炭素)など、鉱物や木材に由来する色名には硬質さや重厚さを、ムーンレスナイト(闇夜)、ナイトスカイ(夜空)、ポーラーナイト(極夜)など、空や夜に由来する色名のものには静けさや広がりを感じます。
またキャビア、ブラックオリーブ、エスプレッソ、ナイトシェード(ナス科の植物)など、食品に由来する色は茶系の黒が多く、苦味がイメージされるでしょう。
その他にも、紫みのある黒、緑みのある黒、青みのある黒など、黒には幅広い色味があります。具体的なものに由来する色名も多く、色や質感などを連想しやすいのも特徴です。
商品の黒は質感が豊か
身近な商品では、アイライナーの黒、クルマの黒などは、定番色として人気があります。競合する商品が多いので、それぞれ色みや質感で独自性を打ち出しています。例えば、アイライナーの黒は、ブラックという色名が一般的ですが、ノワールとフランス語で表記されている場合もあります。マット、パーリー、サテンなどの質感のバリエーションもあり、同じような黒でも印象の違いを楽しむことができます。
クルマのテクスチャーで多いのはパール、マイカ、メタリックなど。クルマの美しいフォルムが引き立つように、各社が光を反射させる材料を配合し、光と影の対比で差別化しています。色名はブラックマイカ、ブルーイッシュブラックパールといったシンプルなものから、パンサーブラッククリスタルエフェクト、バーニングブラッククリスタルシャインガラスフレークなど、長い色名もあります。
アンミカさんの「白は200色」「黒は300色」というコメントは、「そんなにたくさんあるの?」と意外性はあるものの、「よくよく考えてみると、それくらいあるかもしれない」と思わせる絶妙な数字なのではないでしょうか。皆さんも、身の回りの白や黒に目を向けて、色や質感の違いを楽しんでみませんか?
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2023春夏あなたが着たい色は?