「子どももできないなんて!」と責められた
義兄たちが子どもたちの自慢をするのを横に、ヒナさん夫婦は「頭を低くして風が通り過ぎるのを待つ」状態だったという。集まると「子どもはまだか」といつも言われていたからだ。
「義実家は2時間ほどかかるところなんですが、義兄ふたりと私たちの自宅はわりと近いんです。ときどき義長兄がやってきては『子どもは?』と言われている。そのたびにはいはいとやり過ごすので、義実家でも同じ対応をしようと夫と話していました」
ところがお酒も入ってきたころ、義長兄がとうとう、「おまえたち、いったいどうするつもりなんだ。ヒナさんだってリミットがあるだろう。ダメなら不妊治療をしなさい。病院は弟が紹介できるんだから」と言い出した。
「今回はやけにしつこく、具体的な病院名や医師名まで出してきて、いつなら紹介できる、おまえたちはいつ行けるんだと延々言うんです。矢面になっているのは私で、『そもそも、ヒナさんは子どもができにくい体型だよ』と次兄が言う。医者がそんなこと言っちゃっていいの、と私は内心、笑いそうでした。義次兄なんて、『おまえの嫁がダメなら、うちの嫁を貸してやろうか』とまで言い出して、義母にたしなめられていました。義姉だって不愉快なはずなのに、聞こえないふりをしていましたね。場は私たちをターゲットにしたいじめにしか思えなかった。夫は、だんだん我慢できなくなったみたい。耳が真っ赤になっていった」
そしてついに夫がキレた。ヒナを悪く言うな、原因はオレなんだ、と。検査もした、だけど無理なんだ。ヒナとオレはふたりで仲良く生きていくから放っておいてくれと叫んだ。
「そして夫は義兄たちがふたりとも浮気していることをその場でバラし、『義姉さんたちだって知ってるんだろ、知っててお金のために別れないんだろ』って。子どもたちもいたから、私はすぐに夫の口を塞ぎましたが、もう言っちゃったものはしょうがない。私たち、その場から逃げました」
その後はシーンと静まり、誰も口を開かなくなって三々五々、帰って行ったらしい。あとから義母がヒナさんにお詫びの電話を寄越した。
「以前から義兄たちの態度が気になっていたけど、今回はとんでもないことになって申し訳ない、と。いや、うちの人こそ言いすぎましたからと言うと、『結局はあなたと一緒になった三男が、いちばん幸せなのかもしれないわね。あんなしょうもないプライドだけで生きている人間たちより。ま、私もくだらないプライドで生きているタイプかもしれないけど』と言っていました。義母はとてもまっとうなんですよね。ただ、長男と次男を止められるほどの強さはない。義父もいい人ですが、もう子どもたちのトラブルには巻き込まれたくないんでしょう。これからは来なくていいからね、義兄たちが来ないときにふたりで来てほしい。そのほうがゆっくり話せるからと言われました」
夫にそれを告げると、「みんなに悪いことしちゃったな」と反省しきり。あなたは悪くないよとヒナさんは慰めた。人の家庭をあれこれ詮索したりからかったりするのは、たとえ兄弟でも許されないと思うとヒナさんが言うと、夫はようやく笑みを浮かべたという。
「義父母はいい人たちでも、義理のきょうだい関係がうまくいかないことも多々ありますよね。私たちはもう義兄たちとつきあわないことにしました。義長兄が来ると言っても断ります。義父母もそれで納得してくれたので。結婚して5年、ようやくうっとうしい義兄たちとの関係がすっきりしました」
夫婦が一枚岩でいることが大事だと、今回つくづく思いましたと、ヒナさんも少しホッとしたように笑った。