「弱音を吐くな」というわけではない
「愚痴を言うな、弱いところを見せるなというわけではないんです。でも大人としての言い方がありますよね。夫は弱音をダダ漏れさせる。『どうせオレなんて』とも言う。そういう幼稚な言い分ではなく、きちんと論点をはっきりさせてほしい。愚痴も弱音も、言わざるを得ないから言うんでしょうから、聞く側がわかるように言ってほしいんです。そう言うと夫は、愚痴に論点なんかあるか、と恨めしそうに私を見ていました」仕事の愚痴、人間関係の愚痴。アオイさんの夫は一度、愚痴を言い始めると止まらなくなる。ネガティブな言葉を口にするから、よけいネガティブになるのではないかとアオイさんは考えている。
「自分の中で整理や決断ができないまま、何が軸かわからないまま、言葉を垂れ流すのは罪なんじゃないかと最近では思うようになりました(笑)」
この正月も、夫は飲んでは愚痴をつぶやき、また飲むの繰り返し。アオイさんは娘を連れて、近くの実家に行ったり、ふたりで遊園地にも出かけたりした。普段、一緒にいる時間が少ないからこそ娘と楽しく過ごしたかったのだ。だが夫は「行かない」とひとりで家に残った。
「行かないのは彼の選択だからいいんです。家でゆっくりしたいなら、それでもいい。だけど出かけた私に『何時に帰ってくる? ひとりでいるのに飽きた』とメッセージを送ってくるんですよ。だったら一緒に来ればよかったのにと言ったら、『きみたちは、オレに一緒に来てって言わなかったよね』と。誘われて初めて行ってやるという雰囲気を作りたいのなら、私はそうやって『男を立てる』のは苦手なので期待しないでほしいと伝えました。夫は苦々しいような泣きそうな顔をしていましたね。そういうことがあるたびに、幼稚で嫌になると叫びたくなります」
本物の子どもと、6歳の娘より幼稚な言動が目立つ40歳の男。アオイさんはひとりで、子どもと疑似子どものめんどうを見る気はないとあっさり言う。
「私が突き放せば突き放すほど、夫は子どもっぽくなっていく。そう言ったら子どもに失礼かもしれません。最近では娘のほうがずっと大人っぽい発言もするんです。私は娘ひとりでは絶対に留守番をさせませんが、『ひとりでも大丈夫だよ、ひとりで待っていられるよ』と言うようになって……。夫は『オレはひとりでいたくない』とよく言ってますけどね」
どちらが子どもかわからないとアオイさんは苦笑した。娘への愛情が強いのを見たり感じたりすることで、夫は娘に妻をとられたような気持ちになっているのかもしれない。もちろん、それがアオイさんの言う「幼稚」なのだろうけれど。
「男は自分のお腹を痛めて産むわけじゃない。だから親になるには時間がかかる。それはわかっているんです。でもうちはもう6歳。夫も6年も父親をやっているんだから、そろそろ親としての自分を認識してもいいころです」
アオイさんはもうひとりほしかったのだが、夫はなんとなくふたり目を避けているようだという。これ以上、妻の愛情が子どもにいくのが耐えられないのだろうか。
「ダダをこねて私を困らせれば振り向いてくれる。そんなふうに思っている節もありますが、いいかげんにしてよねと思う。どうしたら夫を大人にすることができるのか知りたいです」
アオイさんには、夫婦として大人同士の関係を築けないイライラもあるようだ。子どもができるとさらに子ども化する夫、いったいどうしたら大人になってくれるのだろうか。