我慢の限界がきて物に当たってしまう……
■相談者プロフィール・相談者:女性・会社員・沖縄県
・家族構成:夫(41歳)・本人(35歳)・長男(5歳)・長女(4歳)
■相談内容:
子どもに何度注意しても言うことを聞かないときや、疲れているときに「ママ、あれして、これして」と要望を言い寄られると、我慢の限界がきてしまい、壁を叩いたり椅子を蹴ってしまったことがあります。子どもたちは驚いて黙りこんでしまい、何も言い返してきませんでした。
「これではいけない」と思い別の部屋へ行ってひと息ついて、落ち着いてから子どもたちに謝りました。自分自身も涙がでてしまい、泣きながら謝りハグする始末。子どもにとってはただただ嫌な気分にしかならず、そんな怒鳴られ方をされたところで言うことを聞けるわけないよな……と反省。
子どもの要望に疲れが勝って相手にしてあげれないとき、なんで自分はこれぐらい付き合ってあげれるほどの体力と気力がないんだろうと落ち込みます。そして怒鳴ったあとの罪悪感は半端なくて、「こんな母親でごめん」といつも反省します。
なんで”これぐらい“のことが……とはいえない域なのかもしれない
この事例のような展開のなかで、イライラや怒りがこみ上げて物に当たってしまうというのは、「子どもには、直接手を挙げてはいけない」と強く感じているからこその反動なのかもしれません。自分の不甲斐なさを責めていますが、筆者には十分すぎるほど頑張っている様子も伝わってきます。本当に「これぐらいのことが……」というレベルなのか、はたまた自分の限界以上を求めてしまっているのではないか、というのはぜひ落ち着いているときに俯瞰して考え直してほしいと思います。一方的に自分を責めてしまっていますが、そもそも自分の限界を超えて子育てをしてしまっているゆえ、対応できないことがおのずと発生し、その結果爆発してしまっているという見解も考えられるのではないでしょうか。
育児には「これで100%」というものが存在しないため、子どもの要望をどこまで受け入れてあげるかもご家庭によってものすごく違います。子どもにとってはそのお家の流儀が基準になるため、その子にとっては当たり前の要求が、他のご家庭では「イヤイヤ、ムリでしょ」ということになりうるのです。
よってこの事例も、もしかしたら”これぐらい“とはいえない域なのかもしれないという視点は非常に大事です。筆者の育児相談室でも、親御さんご自身を責めていることが多いのですが、詳しくお聞きしていると、本来受け入れるべきことではないことまで折れてしまい、それが習慣化されていることはよく見受けられるのです。
幼少期の子育てのバランスの崩れを仕切り直す
筆者の育児相談の事例では、4~5歳で子どもの「あれしたい、これしたい」に親がついていけない場合、0~3歳くらいの幼少時にそのベースができあがってしまっていることが多くなっています。「子どもの意志を尊重してあげたい」という思いで日々接しているうちに、だんだんとエスカレートしてしまうのです。自力ではまだ動けない0歳の頃は、たしかに親がくみ取ってあげないと赤ちゃんは泣いて訴えるしかありません。しかしその後、1歳、2歳と成長し、自己主張が増えるイヤイヤ期に何をどこまで許容するか、受け止めていくかと悩みつつも、ここでもなお親が奔走することで子どもの自己主張を全面的に受け入れてあげてしまうことがあります。するとその辺りからどんどん子どもが家庭のなかで力を持ち、次第に親子のバランスを崩していってしまうのです。
もし、このような歴史をたどっているのであれば、今やるべきは、子どもの要望に応えてあげられる体力・気力をつけることではなく、お子さんたちに「ときには受け入れられないこともある」という現実を教えていくことです。
小学校に上がり、先生の指示に従えない、自分のやりたいことを我慢できないなど、気持ちの切り替えが苦手なお子さんは多いもの。その要因には、何でも思うがままという状況に幼少期じゃら慣れていたゆえ、苦手になっているケースはよく見受けられます。そうなってしまうと、子どもたちが学校を楽しめなかったりと困ってしまうことも多いので、年齢相応の「今は我慢しなくちゃいけない」という体験は非常に大切です。
今回はお母さまご自身が自分を責めていらっしゃいましたが、子どもの願いを全部叶えてあげられるのが良い親というわけではありません。将来、困らない術を身に付けさせていくことも子育てにおいてとても大事なことではないでしょうか。