人材育成・社員教育

やりたいことがなくてもいい。人材コンサルが伝えたい「運も実力のうち」を味方につける働き方

出世欲がなく、将来のビジョンがない人でも、やる気がないわけではないだろう。目標がないなりに将来的になにか役立つキャリアの重ね方、働き方はないだろうか。人材コンサルタントが解説する。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

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“やりたいこと”はなくてもいい?

出世欲がなく、将来のビジョンがない若者が増えているというが、そのような人でも、やる気がないわけではない。むしろ目の前の仕事には真面目に取り組む意欲は持っていることが多いだろう。

では、このままビジョンもなく、目の前の仕事に取り組んでいるだけで良いだろうか。目標がないなりに、年次が上がった際や転職したくなった際、そしてやりたいことが見つかった際に役立つ、選択肢が増やせるようなキャリアの重ね方、働き方はないだろうか。人材コンサルタントが解説する。
 

「リスクを取らない若者世代」は時代の流れからして当然?

現代の若い世代は出世欲がなく、将来のビジョンがないと指摘されることがある。その多くは中高年世代が作り上げたイマドキの若者イメージかもしれない。自分たちの時代と比較して「イマドキの若者は……」という、いつもの論議である。若者世代のことは、かつて草食動物と評されたこともあった。これらは本当なのだろうか。若い世代の実態を正確にとらえている評価なのか、筆者は常々疑問に感じてきた。

確かに、若い世代は中高年世代よりも冒険をせず、挑戦もしない、より慎重で堅実志向であるように見受けられなくもない。しかし、それは低成長時代が長年続いている社会環境や、生まれた時からインターネットなどさまざまな便利なITツールがそろっている生活環境の影響であるのかもしれない。環境が整っている中で、無理な挑戦やリスクを取る必要はない。

安定は停滞の始まりだ、という発想もあり、そこには一定の真理もあるわけだが、安定した環境に満足し、心穏やかに過ごしている若い世代に対して、一方的に中高年世代が不安を煽るのは、時代を捉えられていないのではないだろうか。
 

野心むき出しの上昇志向、競争原理一辺倒の損得勘定には乗らなくていい

大人たちの行動を見れば、誰しも生存競争に必死である。目先の損得勘定が極まった大人は、判断や行動のすべてが自己中心的になり、その象徴として、利権を得たいだけの恥知らずな一部の政治家たちが、今も権力闘争に明け暮れている。この政治状況で、どの若者が希望を胸にして投票所に足が向くというのか、若い世代の重苦しい心持ちが思い測れる。

テレビ番組でも、コメンテーターはいつも決まった顔ぶれで、流れる情報に偏りも出ている。メディアの現場も、またそこは激しい生存競争の場そのものであるのだ。テレビに出て目立ち、野心むき出しで自分だけが得するような金儲けにまい進する。今の時代、それがテレビからYouTubeにも移り、ますますその傾向は顕著になっている。

学校では、教師たちが子どもたちに対して道徳を説き、まじめに生きよ、勤勉であれ、未来社会を支えよ、教育を受けられる機会に感謝せよと諭している。矛盾を感じるのではないだろうか。大人たちが社会をよくすることができていないのに、それを棚に上げて、若い世代に期待をするというのは、なんとも無責任な姿勢である。

こんな大人にはなりたくない、そう反面教師にとらえてくれればいいが、おそらくそれは少数派であり、多くの場合は現状に幻滅し、もしかしたら、このまま学生のままでいたい、社会に出るのがこわいというような、押しつぶされた気持ちにもなっていないかと、とても心配に思う。

このようなさまざまな社会の現状を背景にして、今、社会人となって間もない若い世代は、「出世したくない」「給料は上がらなくてもいい」「仕事の目標が見つからない」という言葉を発しているとも考えられないか。

だからこそ、野心むき出しの上昇志向や競争原理一辺倒の損得勘定から距離を置くことは、まったく間違ってないのである、と伝えたい。
 

「運も実力のうち」を実感するには、インプットとアウトプット

では、今の時代、若い世代はどのように将来を見据え、日々の仕事と向き合い、自らのキャリアを重ねていけば良いのか。仮に仕事で目先の目標が明確になくても、目標がないなりに、年次が上がった際や転職する際に役立つこと、そしてやりたいことが見つかったときに次の一手の選択肢が増やせるようなキャリアの重ね方、働き方、成長の仕方はないだろうか。

ここで中高年世代がよく語るメッセージを1つ紹介しよう。「運も実力のうち」という考え方である。これは若い世代にも役立つ考え方だ。過ぎ去ってしまった自らの人生を振り返れば、ある特定の仕事やキーパーソンとの出会いが人生の節目となった、またその出会いのおかげでその後の自分の道筋が定まり、停滞していた時期からも抜け出した、そして今の幸せにつながった、との実感から生まれる考え方である。

しかしこれは、分かりにくいコンセプトでもある。良い運が訪れることを祈っても、なかなかそれを実感できることは起きないし、地道に仕事と向き合っていけば運が良くなることもあると言われても、今のところそれを実感できない、そういう人も多いことだろう。確かに、そんなに有利な運ばかりが自分に舞い込むこともない。

ただし、「運も実力のうち」というのは、プラスでもマイナスでもさまざまな出来事を冷静に、そしてできるだけ前向きにとらえ、我慢強く改善して、温め、育て、大切にしていく、その繰り返しを習慣にすることで実感できるようになる境地なのである。

人生を振り返ったとき、苦労や失敗の多くを忘れ、自分が克服できたこと、その結果得た小さな幸せや成功を実感できた時、自然と口にするのが「運も実力のうち」という言葉である。これはむき出しの野心で得た利権、そして楽をして稼いだ金儲けの結果、得られるような境地ではないのである。

アウトプット(仕事をこなす)ばかりする毎日では、疲労がたまり、満足度も上がらず、さらに将来の目標も見えてこず、希望を感じられなくなりがちだ。だからこそ、自らの仕事やキャリアを考える時は、インプット(エネルギーや知識、経験をチャージする)をバランスよく行うことが最も大切である。

若い世代は早く仕事を覚えたい、遅れた仕事を取り戻したい、もしくは残業代を稼いで給料に多少でも稼ぎを積み増したいなど、さまざまな事情で長時間労働をしがちである。それにも節度を持つことが大切である。

働きすぎるとどうなるか。

どうしたら楽をして稼げるか、人を出し抜いて自分だけ人より多く稼げるか、特別な利権を探して金儲けをしてやろう、そうなることは間違いない。いつか幻滅した大人の生き方に似てはいないか。何事もほどほどが1番大事で1番難しい。だからそれを目指してほしい。
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