2022年冬のボーナスは平均で78万6945円。対前年同期比で8.5%増
2022年冬のボーナスの見込み額について、業種別で、かつ時系列でデータがわかる調査データに基づいて、全体の傾向、各産業別の増減を見ていくことにします。 一般財団法人 労務行政研究所が、東証プライム上場企業のうち184社から回答を得た集計結果によれば、2022年冬のボーナスの妥結額は、全産業平均で78万6945円。対前年同期比で8.5%増。2018年以来、4年ぶりの増加となりました。リーマンショック後の2009年冬のボーナスは前年から実に13.1%ものダウンを示し、その後、一進一退を繰り返しながら、2014年以降、平均額は70万円台を回復しました。そして2018年、ようやくリーマンショック前の平均額を上回り、75万3389円と、ここ最近の最高額となりました。
2019年の冬のボーナスは対前年同期比で▲0.1%の微減、2020年に入り新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化し、2020年は▲3.2%と大幅ダウンとなりました。2021年はさらに▲1.9%で3年連続のマイナスとなりました。
今年2022年は、新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着きを見せ、国内の景気が緩やかに回復している状況となり、対前年同期比で4年ぶりの増加となったほか、過去の水準から見ても平均額は最高額となっています。
なお、調査発表(9月14日時点)は、年間協定で決定している年末賞与・一時金の妥結額であることから、実際の支給額が妥結額から変化する企業も出てくるかもしれません。
産業別トップは「自動車」の92万円超。次いで「電気機器」の89万円弱
産業別で見ていきましょう。製造業の平均は81万3465円、対前年同期比で10.3%。
非製造業の平均は69万7283円、対前年同期比で1.9%。
2022年の冬のボーナスは、製造業、非製造業ともに全体平均額はプラスとなりました。 個別の産業で見ると、昨年からほとんどの産業が増加となりましたが、電力、サービスがマイナス。プラスの産業でも、その増加率には大きな開きが出る結果となっています。
平均額トップは輸送用機器のうち「自動車」で、92万6230円、対前年同期比7.8%のプラスとなっています。次いで、「電気機器」が88万9117円で、対前年同期比5.4%のプラスとなりました。
非製造業は全体で1.9%のプラスになりましたが、製造業とは平均額では約11万6000円の開きがあります。非製造業の平均額トップは「情報・通信」の85万8750円で、昨年から2.9%のプラス。次いで、「建設」が79万1020円で昨年から0.2%のプラスにとどまっています。
コロナ禍が落ち着いても、エネルギー問題、円安、半導体不足の影響も
今回の調査では、景気回復傾向を受け、大幅に増加した産業がある一方、サービス業ではコロナ禍の影響から脱しきれていない状況が読み取れます。また、ウクライナ情勢と相まって、エネルギー問題や半導体不足など、多くの産業に影響を与える事案は長期化する可能性もあり、今後の見通しは必ずしも右肩上がりとはならないことも考えられます。さらに、長引く円安傾向で、恩恵を受ける産業もあれば、値上げラッシュにより消費性向が冷え込み、需要が伸び悩む産業も出てくるでしょう。
2022年冬のボーナスが、前年同期より35.5%と大幅な増加率を示した「鉄鋼」や、「非鉄・勤続」「機械」のように10%以上の増加率を占めた産業がある半面、全体平均以下の増加率の産業も多いのが顕著です。業種によって、コロナ禍以外の要因も大いに考えられるでしょう。
平均支給月数は2.56カ月で前年から微増
ボーナスは企業業績に左右されるもので、月収の何カ月分かが、その指標の一つになります。今回の調査では、全産業で2.56カ月(2021年末実績2.34カ月)、製造業で2.65カ月(同2.40カ月)、非製造業で2.16カ月(同2.09カ月)と、支給月数も平均額同様、製造業、非製造業ともにプラスという結果になっています。
変動するボーナスを過信しない、家計管理の徹底を
今回の記事は、東証プライム上場企業の平均額を紹介しましたが、実際の家計では、「それで、自分の会社は、自分の場合は、いったいいくらなのか」がすべてであり、ほかの会社や産業、他人と比較しても仕方ないことです。すでに、ボーナスの見込み額を把握している人も多いでしょう。大事なのは、そのボーナスをどのように使うのかということ。何にいくら使うのか、貯蓄にはいくら回すのかなど、事前に計画を立てておくことです。特に、コロナ禍においては、これまでとはボーナスの使い方が異なってしまった家庭も少なくないでしょう。
たとえば、下記にあげる5つのポイントを参考に、今度のボーナスの使い道を考えておきましょう。
(1)毎月の生活費の赤字補てんに回すのは今回限りとする
→今回のボーナスで赤字は解消し、毎月の収支を見直すきっかけとする。ボーナスは家計の調整弁ではあるが、毎回、毎月の赤字の補てんでは、貯蓄を増やすことはできない。コロナ禍によって毎月の収入が減少した場合は、再度、家計支出の見直しを図り、ボーナスに依存した家計からの転換は必要。
(2)ボーナス払いのクレジットカードの引き落としは最低限にとどめる
→大きな買い物はボーナス払いにしがち。不要不急の買い物は、できるだけ半年、年間で計画を立て、予算内に収まるようにし、ボーナス払いの衝動買いは避けること。クレジットカードのリボ払いもNG。リボ払いは借金が積み重なり、多重債務に陥る可能性がある。
(3)優先順位を考えた上で住宅ローンの繰り上げ返済に回す
→借入金利が低ければ、繰り上げ返済が最優先ではない。子どもの教育費など、ほかに優先すべきことがないかチェックする。借入金利が現状より高ければ、金利交渉、借り換えが優先。また、ボーナス払いを併用していて、ボーナスの減少によって支払いに影響が出る場合は、返済プランの見直しを借入先の金融機関に早めに相談すること。ボーナスが増加した場合は、貯蓄の状況を確認し、余裕があれば繰り上げ返済に回すのも有効な考え方。
(4)ボーナスが残ったら貯蓄するのはダメ
→毎月の貯蓄と同様に、ボーナスの貯蓄も先取り。ボーナスで使う予算を決めて、それ以上使わないように、ボーナスが出たら、先に貯蓄をする。いったん、給与振込口座から別の口座に移し替えるのも有効。制限されていた反動で、衝動買いをするようなことは控えるべき。予算を決めることが優先。
(5)ボーナスが出てから使い道を決めるのはダメ
→貯蓄分、使う分を決めたら、必要以上に普通預金に入れっぱなしにしないことが大事。ボーナスが支給されてから使い道を考えると、気が大きくなって余計な出費をしがち。
くれぐれも、せっかくのボーナスが気が付いたらなくなっていた、ということがないよう、有意義な使い方を心がけてください。
【参考】https://www.rosei.or.jp/attach/labo/research/pdf/000083740.pdf