近くにいる女性を好きになってしまう
ユリさんはもともと、彼と同じ会社に勤める同期だった。結婚後は、もともとやりたかった仕事を求めてグループ会社に転籍した。「私のことも近くにいたから好きになったんだと思うんです。2度目の浮気も社内だし、彼は近くにいる人を好きになる傾向があるんじゃないでしょうか」
そして3度目は、なんとご近所の既婚女性だった。これにはユリさんも驚くより呆れたという。
「夫が出社するとき、いつも彼女が自分の夫を見送って玄関前にいるんだそうです。ついでに夫にも行ってらっしゃいと言ってくれる、と。私は朝はバタバタしていますから、キッチンかリビングから行ってらっしゃいというだけ。玄関から出てきて夫を見送る彼女の姿に惹かれ、声をかけてもらってうれしくて話すようになり、そのままふたりで会うようになった、と。軽いんですよね。あちらの妻も軽いけど、夫の軽さが伝わっているんだと思う」
そのときはユリさんが彼女に会いに行き、「あなたも夫に知られたら困るでしょ」と脅すようにして別れさせた。
いつの間にかその一家は越していった。町内で噂になったわけではないが、一歩間違えばふたつの家庭が悲劇に見舞われるところだった。
「どうして手近なところでそういうことをするのと聞いたら、『女性はみんな素敵だから』という言葉が返ってきた。他の人が言ったら、なんと面の皮の厚い発言なのかと思うでしょうけど、夫が言うと『なるほど』と思っちゃう。そこが女たらしなんでしょうね。近くにいる魅力的な女性には自分からすぐに近寄っていくのが夫の手口なんだと思う」
それでも今までまったく相手女性と揉めなかったのは、夫の「人徳」なのかもしれない。とはいえ、ユリさんは無数の傷を負ったと話す。
「ああ見えて寂しがり屋なのかもしれないと思うことはあります。でもだからといって次々浮気をしていいはずがない。無邪気に浮気を繰り返す夫にどう対処したらいいのか。今もちょっと怪しい行動が多いので気になっています」
24時間見張るわけにもいかず、結局は信頼関係に頼るしかないのだが、だからこそ心もとないとユリさんは言う。
「正義感はあるのに道徳観がない。それが夫なんだと諦めつつはあるんですが」
解決策のない夫の行動に、ユリさんは深いため息をついた。