一言言えばいいだけなのに
「うちの夫、よそからのもらい物を何でも持って帰ってくるんです。それだけじゃなくて、駅前で安い野菜を売っていると買って帰ってきたりもする。黙って冷蔵庫の野菜室に入れたり、ほれって渡されたりするんだけど、私にどうしろって言うんだといつも思います」困惑顔でそういうのは、ミキさん(40歳)だ。結婚して11年、10歳と7歳の子を育てながら、ミキさんもパートで週4日働いている。近所に住む夫の両親の面倒も見ているため、「体がふたつほしい」が口癖になるくらい多忙な日々を送っている。
夫が食材を持って帰ってくるようになったのは、ここ数年のこと。仕事の関係で小さな企業にお得意さんが多いのだが、なかには家庭菜園をやっている人や兼業農家もいるため、夫はさまざまな野菜類をもらって帰社するらしい。ところが会社では引き取り手がいない。そこで持って帰ってくることになる。
「見たこともない野菜だったり、やたら葉っぱが立派な大根だったり。時間があれば大根の葉で佃煮でもすればいいんでしょうけど、そんなことしている暇はない。しかも夫は、黙って野菜室に入れたりするので、気づいたときにはダメになっている」
無言の攻防が続いていたのだが、ついに先日夫が、葉が傷んでとろっとした葉物野菜をテーブルに出して「どうしてこのまま放っておくのかわからない」と言った。そのタイミングを逃すミキさんではない。
「そもそもどうしてあなたが黙ってこれを野菜室に入れておいたのかわからない。自分で持って来たなら、自分で調理してほしい。私にしてほしいのなら一言あってしかるべき。もっといえば、こういう野菜が必要かどうか聞いてほしい。今まで黙っていたことをわーっと言ったんです。そうしたら夫は、『きみという女は情がない』と言い出して。どうして情と関係あるんですか、あなたが不要な野菜を持って帰ってきて私に何でも押しつけようとしているだけでしょ、置いておけば私がどうにかすると思ってるんでしょと言ってやりました。私も腹に据えかねていたので。ちょっとキツかったとは思うけど、私が大変だということをわかってほしかった」
そう、妻は自分の大変さを夫にわかってほしいのだ。だが、おそらく夫は夫で自分が大変だという意識がある。だから一度揉め始めるとこじれていくのだろう。
>夫の実家から大量の野菜が届く大迷惑