セックスでQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が向上する?
セックスに意識が向いていると、私生活や仕事の充実にもつながる!
例えば、「歳だから」とセックスをしなくなった場合の、心身面、生活面への影響を考えてみましょう。夫婦関係の悪化はもちろん、「生きる力」という意味での精力も衰えてしまいます。男性としての自信が失われ、仕事に悪影響が出る方も多いよう。実際、私の患者さんからも、「仕事に対するモチベーションが下がった」「部下に指示する際、消極的になってしまう」という声をしばしば耳にします。
また、セックスから遠ざかると、心身共に若さを保てなくなってしまいます。セックスに意識が向いているということは、常に他者の視線を意識しているということ。そのため、心身共に年齢以上の若さを保て、それが私生活や仕事へのハリにつながるのです。
そう考えると、若いときよりも年齢を重ねたときの方が、セックスから享受できる恩恵は多いのかもしれません。近年話題になっている言葉を借りれば、「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」がセックスによって向上するとも言えるでしょう。「生涯現役だ!」と性に前のめりになっているくらいの方が、充実した人生を送れるのです。
そこで今回は、さらに具体的に、さまざまな研究から明らかになった、セックスの健康効果についてご紹介しましょう。
病気のリスクを軽減する! セックスがもたらす健康へのメリット
セックスには健康につながるメリットがいっぱい!
セックスが免疫力向上につながることは、さまざまな研究で明らかになっています。例えば、アメリカのウィルクス大学では、大学院生112人を対象に、セックスと免疫力の関連性についての調査を実施。セックスの回数をもとに、週平均で「0回」「1回未満」「1回以上3回未満」「3回以上」という4つのグループに被験者を分け、それぞれの唾液サンプルを回収・分析しました。
その結果、「1回以上3回未満」のグループは「免疫グロブリンA」がダントツに多いことがわかりました。免疫グロブリンAとは、風邪などの感染予防において、非常に重要な免疫物質です。乳児は風邪をひきづらいと言われますが、これも母乳に含まれる免疫グロブリンAのおかげだとされています。
なお、「3回以上」より「1回以上3回未満」のグループの結果が良かったことを考えると、何事もやりすぎは禁物だということでしょう。
■前立腺がんのリスクが低減する
射精をすると前立腺が収縮を繰り返し、血行が促されることによって、前立腺がんのリスクが低減されることがわかっています。
オーストラリアでは、これを立証するアンケート結果も出ています。前立腺がん患者と健康な成人男性それぞれに、性生活に関するアンケートを行ったところ、20~50代の男性については、射精回数が増えるほど前立腺がんが減少することが判明しました。特に、週5回以上の射精をしている20代男性は、それ以外の20代男性と比べて、前立腺がんのリスクが約3分の1にまで低下することがわかったのです。
近年では、日本でも前立腺がんになる男性が増えてきています。前立腺がんの予防という観点では、射精自体に効果がありますので、マスターベーションも含めて日々の性生活を大切にしていきたいところです。
■心臓病のリスクが低減する
これらに加えて、なんとセックスには、心臓病のリスクを低減する効果もあることが報告されています。アメリカにおいて、これまで心臓系の病気にかかったことのない男性(平均年齢は50代)を対象に、16年にわたるセックス頻度の追跡調査が行われました。その結果、「週2~3回」セックスを行う男性よりも、「月1回以上」という低頻度の男性の方が、心臓病発症リスクが5割近くも高くなることが判明したのです。
イギリスでも同様に、1,000名近くの男性を対象に調査を実施。ここでも、「週に2回以上」セックスを行なう男性よりも、「月に1回未満」の男性の方が、心臓病発症リスクが高くなることがわかりました。
動脈硬化の初期症状であるEDは、セックスで血行を促すことで改善につながります。同じように、動脈硬化が原因となる心臓疾患についても、セックス時の勃起や射精が血管によい作用をもたらし、予防につながる可能性は十分に考えられるでしょう。
骨盤底筋、若返り、さらに記憶力も? トレーニングとしてのセックス
セックスで様々なトレーニング効果も期待できそう
■骨盤底筋が強くなる
「骨盤底筋」とは、肛門近くに広がる筋肉のこと。この骨盤底筋を鍛える「ケーゲル体操」というものがあり、日本では、産後トレーニングにも取り入れられています。ケーゲル体操にはまた、性感を高める効果も期待され、海外では性感アップのために実施されることもあるようです。特に男性においては、骨盤底筋の強化によって、射精コントロールが可能になることもわかっています。
実はこの骨盤底筋、セックスによっても鍛えられます。男性にとっては、性欲アップや射精コントロールのためのトレーニングとしても、セックスが有効であると言えます。
■若返りが期待できる
イギリスで、45~55歳を中心とした男女約3,500名を対象に、セックスと若返りに関する調査が行われました。調査内容はシンプルで、第三者にマジックミラー越しに被験者を見てもらい、何歳に見えるかを回答してもらうというものです。
すると驚くべきことに、実年齢よりも若く見られた人の大半が、セックスを頻繁に行っていることが判明。特に「週に平均3回セックスをしている」人の多くが、実年齢より7~12歳も若く見られる結果になりました。
「週3回」というと、「そんなに……?」と感じる方も少なくないでしょう。確かに、それだけの回数をこなすには、性に対する意識の高さと健康な体が必要です。逆説的に考えれば、いくつになってもそれらを維持することが、若さの秘訣ということなのでしょう。
なお、実験では、週3回より高い頻度でセックスをしている人の結果は少し違ったようです。セックスには若返りの可能性がある一方で、やはり、度を越すのは禁物なのかもしれません。
■記憶力アップが期待できる
驚くべきことに、セックスをすると脳機能が向上し、記憶力アップにつながるという報告すらあります。アメリカのプリンストン大学において、脳とセックスの関連性にまつわる研究を実施。ラットを使って、「毎日同じ相手と性行為をする」「2週間に1回のみ、違う相手と性行為をする」「まったく性行為をしない」という3グループに分け、それぞれの脳の海馬の神経細部の変化を調べました。
その結果、「毎日同じ相手と性行為をする」グループの神経細胞が、圧倒的に増加しました。海馬は記憶を司る場所ですので、神経細胞が増加・活性化すれば、記憶力にもよい影響を与えることが期待できます。なお、この調査では、「2週間に1回のみ、違う相手と性行為をする」グループにも神経細胞の増加が見られたものの、あわせてストレスによって増加する血中グルココルチコイドも上昇したようです。決まった相手でないとストレスを抱えてしまうのは、人間もラットも同じなのでしょうか。
「一日一勃ち」を心がけよう
性的な刺激がED予防にもプラスになる
EDの予防として大切なのは、何より「ペニスを使ってあげること」です。人間の体は、使わない部分を「必要なし」と判断するため、日頃から機能させないことには、どんどん衰えていってしまいます。寝たきりの状態が続くと脚の筋肉が衰えていくように、柔らかいものばかりを食べていると歯やアゴが弱ってしまうように、ペニスもまた、使わないとその機能が失われていくのです。
そこで心がけていただきたいのが、「一日一勃ち」。毎日、たった一回勃起するだけでも、ED予防の観点でのメリットは計り知れません。例えば、勃起によって、陰茎にある海綿体の萎縮を防止できますし、射精時には陰茎や前立腺の血流も改善されます。
ED予防に必要なのは、回数よりも頻度です。事実、定期的にセックスをする男性はEDになりにくいこともわかっています。性的な刺激はホルモン分泌も促しますので、その点でも、ED予防にはプラスに働くのでしょう。
なお、これらはセックスに限らず、マスターベーションでもしっかりと効果を得られます。セックスをしない日はマスターベーションをする、この心がけによって、男性としての機能をより長く維持できるはずです。また、大切なのは勃起することであり、無理に射精にこだわる必要はありません。刺激の強すぎるマスターベーションを日課にしてしまうと、それがまた別のEDにつながるリスクもあります。特に中高年の方は、過剰な快楽に走らず、適度なマスターベーションで勃起の機会をつくることに主眼を置くようにしましょう。
歳を重ねてからこその、セックスの楽しみ方がある
ED治療薬は生涯現役をサポートする心強い味方になります
肉体的な不安を覚える方は、医師の診察のもと、病院でED治療薬を処方してもらうのもおすすめです。
「歳だから……」ではなく、歳を重ねた今こそ、セックスの新たな楽しみと、素晴らしい健康効果を享受してください。
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