近年話題の「FIRE」とは
働き方や生活スタイルが多様化する中で、「仕事から解放されたい」「自分の好きなスタイルで働きたい」と考える人が増えています。そこで注目を集めているのが「FIRE」です。FIREとは、「Financial Independence Retire Early」の頭文字をとった造語で、「経済的に自立し、早期退職を目指す」といった意味です。
「FIRE」を目指すには?
たとえば、年間の生活費が300万円で、年間の資産運用の収入が300万円ならば、計算上は資産を減らさずに、資産運用の収入だけで暮らしていけることになります。
実際にFIREを目指すとなった場合、FIREを実現するカギは「日々の節約」と「投資」にあります。FIREでは、日々節約を行い、節約で浮いたお金をできるだけ投資に回していき、投資で得られた収入で生活することを目指し、経済的自立を果たそうというわけです。
FIREを目指す手順とは
では、具体的にFIREを目指す手順を見ていきましょう。【1】何歳でリタイアしたいのかを決める
【2】リタイア後、年間の生活費がいくら必要なのかを計算する
【3】【2】で算出した年間の生活費を、年間の資産運用収入でまかなうために必要な「FIRE」資産総額を計算する
【4】「FIRE」資産を貯めるためには、毎月いくら投資をすればよいのかを計算する
まず、リタイアをしたい年齢を決めます。その後、リタイア後の年間の生活費がいくら必要なのかを考えます。そして、その年間の生活費を、年間の資産運用収入でまかなうために、いくらの資産(FIRE資産)を用意すればよいのかを考えます。
そして、FIRE資産を貯めるために、毎月いくら投資をすればよいのかを計算します。最終的に、「不労所得(資産運用による収入)>生活費」となればFIRE達成です。不労所得が生活費を上回っていれば、計算上、資産を減らさずに生活ができます。
FIREを実現するために、必要な資産(FIRE資産)を計算するのに用いられるのが「4%ルール」です。かんたんにいうと、「年間の生活費の25倍の資産を運用すれば、年利4%の運用益で生活費をまかなえる」というルールです。
たとえば、年間の生活費が300万円ならば、その25倍の7500万円のFIRE資産を運用すればいいというわけです。この場合、運用益は7500万円×4%=300万円ですから、年間の生活費と釣り合いますね。つまり、上記のケースで完全FIREを目指す場合には、リタイアする時点で7500万円の資産が必要ということです。
もっとも、4%ルールの「4%」はあくまで米国の株式市場を元にしたデータですし、過去のデータよりはじきだされた数字ですので、必ずしも4%で運用が続けられるという保証はありません。もし、年4%の運用ができなければ、資産による収入が減ってしまいます。この場合は、支出を削るか、働くなどして他の収入で補う必要が出てきます。それができない場合は、資産を取り崩すことになります。
必要なFIRE資産がわかったら、実際にどれくらい投資をすればFIRE資産を準備できるかを考えます。
ただし、投資には銀行の預貯金のような元本保証がなく、資産が減る可能性もあります。そこで、取り入れたいのが、「長期」「積立」「分散」という安定的にお金を増やす3つのルールです。これらのルールを初心者でもかんたんに取り入れることができる金融商品が「投資信託」です。
30代、40代が50代でFIREを目指すためのポイントは?
では今回は、コストが低く安定的にお金を増やせる可能性の高いインデックス型やバランス型の投資信託で、年利4%の運用でFIRE資産を準備することを前提に、50代でFIREが実現できるかどうかを見てみましょう。金融庁のデータによると、長期・積立・分散投資を20年間続けると、年利4%程度の運用が可能とのことです。【参考】
https://www.fsa.go.jp/singi/kakei/siryou/20170224/02.pdf
具体的にいくら積み立てていけばいいか、2つの条件で計算してみましょう。
●30代からFIREを目指し、50代でFIREしたい独身Aさんの場合
・現在の年齢:30歳
・FIRE達成希望年齢:55歳
・年収:500万円(手取り400万円)
・毎月の生活費:25万円
・FIREに必要な資産:生活費25万円×12カ月×25倍=7500万円
・手持ち資産:100万円
現在30歳のAさんが55歳でFIREを達成しようと思うと、毎月約15万円を4%の利回りの投資信託で25年間積み立てる必要があります。実家暮らしで住居費や生活費がかからないという場合には実現可能かもしれませんが、通常で考えれば、毎月15万円を積立するとなると、相当節約して努力しなければ難しいのではないでしょうか。
そこで、ぜひ目指したいのが、勤労収入+資産運用収入を組み合わせる「サイドFIRE」です。年間支出が300万円だとすると、資産運用の収入は100万円を目指し、残りの200万円は勤労収入で得るという場合であれば、100万円の25倍ですからFIRE資産は2500万円用意すればよいということです。2500万円であれば、毎月約5万円を4%の利回りの投資信託で25年間積み立てれば実現できます。これなら可能性はありそうですね。
独身の場合は一馬力ですが、自分以外にお金がかからず、家計管理もしやすいため、FIREは目指しやすい環境といえます。一方で、30代は、長い人生を考えれば、まだまだ若い世代です。目標をFIREにせずに今を充実させることにも目を向けましょう。将来、家族構成の変化がある場合も考慮し、目標は柔軟に変えていくことも必要ですね。
●40代からFIREを目指し、50代でFIREしたい、共働きBさんファミリーの場合
・現在のご夫婦の年齢:40歳
・FIRE達成希望年齢:58歳
・子ども:1人(小学生)
・世帯年収:800万円(手取り640万円)
・毎月の生活費:35万円
・FIREに必要な資産:生活費35万円×12カ月×25倍=1億500万円
・手持ち資産:1000万円
現在ご夫婦の年齢が40歳の共働きBさんファミリーが58歳でFIREを達成しようと思うと、毎月約32万円を4%の利回りの投資信託で18年間積み立てる必要があります。これはなかなかハードルが高いですね。
また、子どもがいる場合には教育費を準備する必要があるので、さらにFIRE達成のハードルは高くなります。大学の教育費に関しては、子どもが18歳になるまでにFIRE資産とは別に300万円~500万円を貯め、それ以外の教育費は毎月の家計でやりくりするのがおすすめです。文部科学省の「子供の学習費調査」(平成30年度)によれば、公立の場合、小学校が月2万7000円、中学・高校では月4万円前後のお金がかかります。私立の場合、小、中学校が月12万円前後、高校では月8万円前後のお金がかかります。
教育費のことなどを考慮すると、こちらのケースも勤労収入+資産運用収入を組み合わせる「サイドFIRE」が現実的です。年間支出が420万円だとすると、資産運用の収入は120万円を目指し、残りの300万円は勤労収入で得るという場合であれば、120万円の25倍ですからFIRE資産は3000万円用意すればよいということです。3000万円であれば、毎月約9万5000円を4%の利回りの投資信託で18年間積み立てれば実現できます。共働きを続けていれば、実現の可能性は高いですね。
いずれにせよ、40代からのFIREでは、目標に合わせて勤労収入を調整したり、家計を見直したり、貯金の一部も投資に回して資産増加のスピードアップを狙うなどして、子育てと上手に両立させたいところです。
今回は、30代、40代から50代でFIREを目指すためのポイントを見てきました。FIREは経済的自立のシステムを確立し、生活のための仕事からの解放を目指すものです。とはいえ、早期のFIREを目指すあまり、無理な生活を行い、今の生活を犠牲にするのは考えさせられるところです。
サイドFIREならば、フルでのFIREより少ない資産で達成可能であり、今の生活を犠牲にすることなく目指せます。また、会社員を続けながらFIREを目指せば、厚生年金保険料を払い続けることになりますので、老後の年金が極端に減ることはありません。今回お伝えしたポイントを参考に、ご自身が目指すFIREについてぜひ、考えてみてくださいね。
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