求人増加で転職市場が盛り上がる時こそ注意したい、自己PRのNGワードとは
本稿では、求人増加で転職市場が盛り上がるときにこそ注意したい自己PRのポイントについて、人材コンサルタントが考察する。特に多くの人がつい言ってしまいがちな、一見NGワードには見えない表現を取り上げ、なぜそれがいけないのか、どう言えばいいのか、具体的に解説する。
「えっ、それの何がいけないの?」と思うこともあるだろう。言う時のシチュエーションやタイミング、言った後の補足説明が足りないなど、使い方次第では相手に与える印象が悪くなりかねないことを指摘したいのであって、そのワード自体がすべて悪いということではないため注意してほしい。
NGワード(1)やる気があり、どんな仕事でもこなす自信がある
最初のNGワードは「やる気」と「自信」である。この2つが人物評価において大切な要素であることは疑いようがない。誰でもやる気のある人と一緒に働きたいし、自信を持っている相手でなければ仕事で付き合うには不安があるからだ。しかしである。やる気や自信、このどちらも具体的にどのレベル以上であれば合格であるか、そこが曖昧である。やる気のある好人物だ、自信を持っている人で安心だというのは、多くの場合一定期間一緒に仕事をしてみて、はじめて相手に対して下せる最終評価である。
本人が言葉だけで「やる気がある」「自信がある」と言っていても、具体的な判断材料がない限り、にわかには信じがたいものだ。
客観的に判断できる材料を相手に提示しないで「やる気がある」「自信がある」と自己PRする人は「信用できない人」「自信過剰な人」という評価が下されることがあるので注意が必要だ。特に「やる気」については、言葉よりも行動で示すことが大切である。それを他人に伝えるには、具体的に行動したエピソードを分かりやすく話して、「それは明らかにやる気のある人がとる行動だ」と相手が納得するように話ができなければならない。
NGワード(2)人当たりが良く、誰とでも仲良くできる
職場にはいろいろな世代の人が共に働いているし、同世代・異世代間の競争もある。異なる部署間でさまざまな調整をし、仕入れ先や顧客とのやり取りもあるに違いない。ゆえに、自分が性格的に「人当たりが良い」人物であり、「誰とでも仲良くできる」ことをアピールしたくなるものだ。この「人当たりが良い」「誰とでも仲良くできる」が第2のNGワードである。会社は同じ趣味を持った仲間達が集まった仲良しクラブでない。同じ社内でも、立場によって利害が対立することもある。取引先や顧客との付き合いには、時には厳しい内容のコミュニケーションが交わされることもある。つまり、人当たりが良いであるとか、誰とでも仲良くできるくらいでは、仕事が成り立たない場面もたくさんあるということだ。
では何が必要なのか。コミュニケーション能力が高いことも評価に値するが、具体的には、例えば「論理的に順序立てて分かりやすく説明できること」などである。相手がどんな立場の人であったとしても、相手が欲している情報を的確に伝えることができれば相手から信頼される。
人当たりが良いことや誰とでも仲良くできるということは、明るい性格や気さくさなど、その人の性格が他人から受け入れやすいことを示すことが多く、もちろんそれにも価値はあるが、仕事を進める上では不十分である。
論理的に相手に説明するには、仕事の経緯やプロセスなどを正しく理解していることや、しっかりと事前準備ができていることが必要である。つまり、自己PRをするなら、性格の良さではなく、「仕事への取り組み方」について行うべきなのだ。
人から気に入られたいと思うのは自然なことであるが、いつの時代も異なる世代から共通して評価されるのは「本人が持つプロ意識」である。「プロ意識が生んだ成功体験」を具体的なエピソードを交えてアピールできたら、相手から注目されることは間違いない。
NGワード(3)体力や根性なら誰にも負けず、チームプレイができる
いつの時代も体力や根性、そしてチームプレイが得意であることをアピールする人は一定数いるものだ。もちろん体力はないよりある方がいい。根性(もうこの言葉自体を使わなくなっているが)もないよりはあったほうがいいかもしれない。仕事の多くは複数人で行うから、「チームプレイができる」ことも仕事を円滑に進めるためには必須である。ただ、これら「体力がある」「根性がある」「チームプレイができる」も、自己PRのNGワードであるのだ。意外に思うかもしれないが、これらを自らアピールしようとする試み自体が、本人の評価を下げるリスクを秘めているから注意が必要だ。
企業は人が多数集まる組織であり、チームで取り組む仕事も多い。このため、会社や仕事の疑似体験をしてきたという意味で、特に体育会系の組織に所属した経験がある人は、この体験を自己PRに使うことが多い。企業によっては、そのような経験を積んだ人を好む先輩世代もいないわけではないことから、この古き伝統は現代社会でもある程度は残っている。
しかしである。一般には、もう既にこの古典的な自己PRの方法は、もう効果的ではないことのほうが増えている。企業が取り組む仕事の進め方や求める人材像は多様化し、経験やスキルの個人差はとても大きくなっている。体育会系組織に所属してそこで何かを達成した経験は、数ある経験の中のほんの一つのパターンにすぎなくなってしまっていて、そのような定型パターン、ある意味、昔はよくあったような古い考え方に沿った自己PRは避けたほうがいいということだ。
もし組織に所属して学んだことの経験をアピールしたいならば、体力や根性、チームプレイなどではなく、むしろ戦略と戦術(ストラテジーとタクティクス)、時間管理(タイムマネジメント)、法令順守(コンプライアンス)、組織における人材管理や財務管理、グローバル対応の経験などをPRしたほうが、個人的な資質の高さや今後のポテンシャルを買ってもらえる可能性は高い。
若者は、性格の良さ、従順さ、対話力、体力、忍耐力などを中高年世代にアピールしたくなるものかもしれない。しかし、それはいつの時代でも年寄りに言わせれば「若いやつはなっとらん」という結論になるわけである。若い世代はそのような先輩世代の嘆きはあまり気にせずに、良い仕事と出会い、自分の時間を有意義に使って社会を良くしていってほしいものだ。
一つの企業に長く務めることが必ずしも正でなくなってきた時代、転職の際には上記のポイントに気をつけて、上手に自己PRをしてみてはいかがだろう。
【参考】
※1:転職市場予測2022下半期【doda編集長とキャリアアドバイザーが動向を解説】(doda)