人材育成・社員教育

「最も残業が少なく有休消化率が高いのは20代」それでも若手社員が憂鬱を抱えている原因は何か

20代・30代が「最もゆとりのある働き方をしている」というアンケート結果がある。一方、今の若い世代が仕事そのものや職場の人間関係に対して抱える憂鬱は深刻な状況にあるのではないかと心配する声もある。コロナ禍の新しい働き方や就労観の変化を背景に起きている、昨今の若い世代が抱える憂鬱の実態について、人材コンサルタントの小松俊明が詳しく解説する。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

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“最も残業が少なく、有休消化率が高い”20代若手社員が抱える憂鬱、その原因は何か

残業が多く有休消化率が低い職場環境が、社員の健康管理や働くモチベーションに負の影響をもたらし、それが社員の定着率や仕事の生産性の低下と関連が深いことは、これまでいろいろな社員調査の結果で指摘されてきた。

しかし、「世の中は変わってきた」と実感する人も多いのではないか。特にコロナ禍により、在宅ワークをはじめ、働き方に変化が生まれたことで、自らの就労観や日々の生活リズムを見つめ直した人も多いに違いない。

会社員の口コミサイト「オープンワーク」が2022年5月に発表した「日本の働き方 10年での変化『社員クチコミ白書』」によると、ここ10年でどの世代でも残業時間、有休消化率に改善が見られた。また特に、20代・30代ほど、残業時間が短く、有休消化率も高い(※1)。つまり、若い世代ほどゆとりのある働き方が実現しているという。

しかし、「残業が少なく、有給休暇が取れればゆとりのある働き方ができている、と結論づけるのは早計である」ことを、本稿では考えたい。コロナ禍の新しい働き方や就労観の変化を背景に起きている、昨今の若い世代が抱える憂鬱の実態について、人材コンサルタントが解説する。
 

コロナ禍以前よりも有給休暇は取りやすくなったか

有給休暇の目的は、「社員が心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障すること」である。

企業は社員が有給休暇を取りやすい職場環境を作ることが求められている上に、2019年4月より「年5日の有給休暇の確実な取得」を義務付けるようになった(実現しなかった場合、労働基準法違反の罰則も規定している)。

背景には、年次有休取得率が52.4%にとどまっている状況(※2)を打開したいという意図があった。その後、コロナ禍が社会を襲い、在宅ワークが急速に普及するなど、職場の働き方に大きな変化が生まれたことは周知の通りである。

依然としてコロナ禍が続く中、以前と比べて在宅ワークが減ったという職場も多いが、オンライン会議をすることが習慣づいたという人は多いに違いない。出社している者が常にフルメンバーではないという職場も多いだろう。これは、まだいろいろ課題はあるとはいえ、効率的で負担が少ない働き方、多様な働き方が、コロナ禍をきっかけに部分的に社会に定着している一例といえる。

そのような変化を経験した職場では、コロナ禍以前よりも有給休暇を取得しやすくなったのではないだろうか。これにはいろいろな見方があるようだが、たとえば職場の座席には常に空きがあり、それが社員が有給休暇を取得中であることが原因なのか、それとも在宅勤務が理由か、分かりにくくなったという声がある。職場の目を気にして有給休暇を取りにくかった人が一定数いたことを考えれば、このような変化によって有給休暇が取りやすくなったと感じる人がいるのも自然である。

もちろん本質論として、多様な働き方が浸透したことで仕事の効率や生産性が改善し、時間のゆとりができたことで有給休暇を計画的に取得できているのであれば、それが一番良い形である。
 

残業が少なく有休消化率が高いのに、若手社員は憂鬱を抱えている

前述もしたが、会社員の口コミサイト「オープンワーク」が2022年5月に発表した「日本の働き方 10年での変化『社員クチコミ白書』」によると、2021年時点で、最も残業時間が短いのは20代であるという。有休消化率の高さも、順に20代、30代と続く(※1)。

10年前までは20代が最も残業時間が長く、40~50代と比較して20代の方が10時間近く残業時間が長かったが、2021年には逆転する形となった。
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年代別、平均残業時間の推移(出典:日本の働き方 10年での変化「社員クチコミ白書」(オープンワーク)

 
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年代別、有休消化率の推移(出典:日本の働き方 10年での変化「社員クチコミ白書」(オープンワーク)

この結果だけ見ると、昨今の若手社員はゆとりを持って、伸び伸びと社会人生活を送っているようにも思える。しかしここ数年、つまりコロナ禍になってから就職した新卒社員や転職を経験した若手社員(20代・30代)が、職場で憂鬱を深めているという声をよく聞くようになっている。

原因はいろいろあるようだが、多い声としては「在宅ワークやオンラインが増えて、新しい仕事が思ったように身につかない」「近くに上司や先輩がいないため、必要な時にすぐに相談ができない」「研修や会議の多くがオンライン化したことで、社員間の人間関係が希薄になって物事を頼みづらい」などである。

たとえば、出張せずとも、何事もオンライン会議で済ませられるようになったという変化。過去の経験の蓄積で、ある程度の人間関係ができているベテラン社員はいいが、ここ数年の間に職場の仲間に加わった若手社員は、直接会ったり懇親を深めたりしたことが一度もない遠隔地にいる相手と、なんとか信頼関係を築き、仕事を進めなければならない。

相手によっては、人間関係が希薄であるがゆえに、若手社員に対して、必要以上にきつくあたる人もいるそうであり、精神的に息詰まることも容易に想像できる。
 

社員の世代間の断絶を解消していくには

言うまでもないが、上司や同僚との仕事を終えた後の飲み会が、世代間に生じる人間関係の希薄さのすべてを解決するわけではない。一方、あらゆる世代の社員が自分の仕事だけに集中し、業務のオンライン化を進め、社内外の人間関係で広がる世代間の断絶の解消に目を向けようとしなければ、職場の未来はどうなるだろうか。

自分が困った時や失敗した時に助けてもらえる相手を得るのが容易でないことは、長年仕事をしてきたベテラン世代ならよく分かっていることだろう。また、今ではたくさんの経験を積み、仕事も理解し、何をするにも自信があるベテラン世代も、自分が若手だったときには数限りない失敗を繰り返していたはずである(そのようなことは、つい忘れてしまいがちであるが)。

今、職場の若手社員は憂鬱に見えないだろうか。有給休暇をたくさん取得しているから、残業をしないで定時に帰れているから、若手社員はゆとりがあり、悩みもないといえるのか。

おそらく、実態はその全く逆ではないだろうか。難しい仕事や新しい仕事、いわゆるリスクを取り、能力の限界に挑戦するような仕事で成果を出すことができなくて、行き詰ってしまってはいないだろうか。

本来、若手社員は経験不足がゆえにたくさんの挑戦を重ね、時には失敗もし、周りの指導や助けを得て自らを成長させていく、そのようなプロセスを経ることが必要であるが、今の時代、若手社員はそれが十分にできていないのではないだろうか。

職場のベテラン世代は、今こそ若手社員が直面しているコロナ禍が生んだ新たな問題を直視して、若手社員に手を貸す時である。いつの時代も若手世代の言動は分かりにくく、世代間ギャップが生じる。自分たちが若い時も新人類といわれることがあっただろう。

周りにいる若手社員を飲みに誘うのではなくて、ひと声をかけて雑談をするだけでもそれがきっかけになって若手社員の憂鬱が解消されることもあるかもしれない。もちろん、若手社員もベテラン世代から話しかけられやすくする努力が必要である。それには、パソコン等を介した対話ではなく、オフラインの時間をお互いに増やしていくことが大切なのかもしれない。

【参考】
※1:日本の働き方 10年での変化「社員クチコミ白書」(オープンワーク)
※2:平成31年就労条件総合調査 結果の概況(厚生労働省)
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