現実を理解し、将来に備えて生活費を抑える工夫をいろいろ考えてみました。
単身世帯の老後の平均的な生活費は月々15万円
最初に将来の生活費を推測するため、統計から生活費の支出状況を確認してみました。下記は総務省の『家計調査 家計収支編2021年』から、無職世帯の月々の生活費の支出内訳を表したもので、1つ目のグラフは無職の単身世帯です。65歳以上に限定していないので、若い無職者も含まれているかもしれませんが、多くは65歳以上の年金生活者と推測しています。無職単身世帯の月々の生活費は平均14万7370円で、前年から2618円増えています。項目別に支出額が最も多いのは「食料(3万6434円)」で、さらに内訳をみると「調理食品(6183円)」や「野菜・海藻(4964円)」の支出が多くなっています。「外食(3607円)」が前年から304円減り、「酒類(1734円)」が前年から247円増えているのは、新型コロナウイルス感染症対策で外食を控え、家で飲む機会が増えたのかもしれません。
「食料」以外の項目で支出が多いのは、「その他の消費支出」が2万8229円、「住居」が1万4526円、「交通・通信」が1万3349円等となっています。「その他の消費支出」には、「交際費(1万4535円)」や「理美容用品(2431円)」等が含まれています。
二人以上世帯の老後の平均的な生活費は月々26万円
2つ目のグラフは同じく『家計調査 家計収支編2021年』から、65歳以上無職世帯のうち二人以上世帯の生活費の支出内訳を表したものです。65歳以上の無職なので、多くは年金生活者と考えられます。二人以上世帯の月々の生活費は平均26万247円で、前年から3415円減っています。項目別に支出額が最も多いのは「食料(6万8901円)」で、さらに内訳をみると「調理食品(1万413円)」や「野菜・海藻(9738円)」の支出が多く、このあたりは単身世帯と似ています。
「外食(4264円)」は前年から231円減り、「酒類(3241円)」も前年から64円減っています。コロナ禍で単身世帯以上に節約意識が高まっているのかもしれません。
「食料」以外で支出が多いのは、「その他の消費支出(4万4202円)」「非消費支出(3万2661円)」「交通・通信(2万6521円)」等です。「その他の消費支出」には「交際費(1万7235円)」「理美容用品(3457円)」等が含まれ、「非消費支出」には「健康保険料(1万445円)」「介護保険料(7099円)」等が含まれます。また、「交通・通信」には「自動車等維持(1万1804円)」「通信(9712円)」等が含まれています。
二人以上で住めば一人当たりの生活費を抑えられる
大勢で食事をすれば楽しいし食費も割安になる
月々の平均支出額である単身世帯で約15万円、二人以上世帯で約26万円を、公的年金や預貯金等でまかなえるのであれば、老後働かずに生活していくことは十分可能です。ただこのデータは平均値であることや、資源高や円安でこれから支出が増えていく可能性もあることから、少し余裕をもって準備しておきたいところです。
しかし、自分の公的年金や預貯金だけでは厳しそうな人は、収入を増やすか支出を減らすか、または資産運用していくかの対策を講じていく必要があります。支出を減らす手段として、先ほどの単身世帯と二人以上世帯の支出内訳が大いに参考になります。
二人以上世帯の支出額は単身世帯の1.77倍になっており、人の数ほどは増えていません。つまり、一緒に生活する人がいれば、一人当たりの支出は簡単に減らすことができます。一緒に住む人は配偶者や親子に限らず、友人や知人とシェアするのもよいです。
中には例外もあり、「自動車等購入」は単身世帯の7.64倍もの支出額となっていて、世帯人数が増えて一人当たりの支出額が減るどころか増えてしまっています。その代わり、「交通」は単身世帯の1.15倍で大した差がなく、「自転車購入」は単身世帯より減っています。移動手段が違うだけで、二人以上世帯にとっては自動車の方が便利なのでしょう。自動車を所有すると購入費や維持費、駐車場代等がかかるので、二人以上世帯でも単身世帯でも、所有しない生活ができれば、支出はさらに抑えられます。
たばこも単身世帯の方が多いので、特に単身世帯では禁煙することで支出減を期待できます。
支出を減らせる余力のある人が意外と多い!
適度な運動が健康につながり医療費も抑えられる
2020年以降、株や不動産で資産を増やしている人や臨時の給付金で貯蓄を増やしている人がいれば、収入減で生活が厳しくなっている人もいます。病気の蔓延のような外的要因は今後も起こり得るので、日頃から削れるところは削っておきたいものです。
ファイナンシャルプランナーとして相談者の家計をみて時々支出が多いと感じるのは、光熱費・交通費・通信費・外食費・教育費等です。3カ月程度の支出額をチェックし、先ほどの家計調査の平均値と比較してみると無駄な部分がわかります。面倒なことが苦手な人は、節約が得意なファイナンシャルプランナーに相談してみるとよいです。聖域なく支出改善や資産運用等をしていけば、将来の生活が年金で成り立つようになるはずです。
お金に余裕があれば心にも余裕が生まれます。反対に、生活費が足りないと心の余裕もなくなります。お金も体も健康であれば借入利息や治療費等の支出も抑えられます。自分の将来のために自ら努力をし続けていきましょう。
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