医師の手術着の色はなぜ青や緑? 「白衣」が誕生したのは100年前
医師の手術着の色はなぜ青や緑?
「白衣」の白は万能色ではない?
白衣の歴史
これらのカラー白衣は、医療従事者に対する視覚的な印象を和らげることが主な目的ですが、外科医が着用する青や緑色の手術着には、もっと切実な事情があります。
手術着は、青や緑色が定番色。その理由は?
医師の手術着の色が「青」や「緑」である理由
■血液の赤の衝撃を和らげるため
手術中には、患者の血液が手術着に付着することがあります。白衣を着用していると血液の赤が目立つため、“血まみれ”という印象を受ける場合も。青や緑色の手術着に付着した血液は褐色に見えるので、視覚的なインパクトを和らげることができるのです。
■青や緑色には、気持ちを落ち着かせる効果がある
人は赤を見ると、呼吸数や心拍数が増え、血圧が上昇する傾向があります。一方、青や緑色を見ると、呼吸数や心拍数が少なくなり、血圧も下がります。このように赤は興奮作用があり、青や緑色には沈静作用があるのです。このような身体的な反応は、誰にでも起こり得るもの。手術着だけでなく、手術室の壁、カーテン、シーツなども、青や緑色にする医療現場が多いのは、手術を行う医師や看護師などの気持ちを落ち着かせる効果があるからです。
■“赤”を見分ける感度を保つため
人間の網膜の色覚受容器には、赤、緑、青に最もよく反応する3種の錐体(すいたい)細胞があります。赤錐体が刺激されると赤色を感じ、3種類の錐体が同じ割合で刺激されると白色を感じます。
手術中は患者の体内を見るので、医師の色覚受容器は「赤錐体」が刺激されている状態に。しかし、時間が経つにつれて、赤錐体が疲労するため、赤の違いを見分ける感度が鈍くなります。そこに青や緑色が視界に入ると、赤錐体を休めることができるのです。このため、手術着には青や緑色が用いられます。
■補色残像を抑えるため
血液などの赤を長く見続けていると、赤の補色(対照色)である青や緑色が視界に浮かび上がります。これは「補色残像」と呼ばれる現象で、視線を向けた先々で青や緑色が残像となって現れるのです。「補色残像」は、白衣や白い壁を見たときに顕著に現れます。ふわふわとした青や緑色が浮かび上がるので、手術着や手術室に「白」が多いと手術の妨げになる場合も。
手術室内に青や緑色を配置して、青や緑色が目に入るようにすると、補色残像の影響を抑えることができます。青や緑色の手術着は、よりよい手術を行うために重要な役割を担っているのです。
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