2021年度は、4月1日付でソニーライフ・ウィズ生命がソニー生命に吸収合併され、朝日生命グループのなないろ生命が4月に開業し、10月から生命保険販売の開始をしました。保険会社数としては1増1減で42社から変わっていません。
個人保険の新契約件数は21社がコロナ前をまだ下回っている
最初は新契約の件数についてです。生命保険会社全社の個人保険の新契約件数を表にしてみました。個人保険は、個人年金保険を除く個人向けの保険のことで、終身保険や定期保険、医療保険、がん保険、こども保険等が含まれます。表は2021年度の件数が多い順に並べてあります。新型コロナウイルス感染症の影響を確認できるよう、2019年度・2020年度も載せてあります。各社の決算内容をそのまま載せているので、件数の単位に「千件」と「件」が混在しています。「-」は件数がありません。
2021年度の新契約件数が最も多い日本生命は、1年間で421万1000件の新契約がありました。2020年度から約42万件増えていますが、2019年度に比べるとまだ約51万件少ないです。2番目に多い第一生命も似たような状況です。この2年で新契約件数を大きく増やしているのは、メディケア生命・はなさく生命等で、主に新商品がヒットした保険会社や新しい保険会社が数字を伸ばしています。逆に2年間で大きく減らしているのはチューリッヒ生命やPGF生命で、主力商品の競争激化や運用環境の変化等が影響しています。
新契約件数を2020年度と比べると27社で増加していますが、2019年度と比べると18社しか増加していないことから、まだ多くの保険会社で新型コロナウイルス感染症の影響が残っているのでしょう。
個人年金保険の新契約があるのはわずか13社
次は、個人年金保険の新契約件数を多い順に並べてみました。個人年金保険は老後の生活資金を準備していくための保険で、1つ目の表の個人保険とは別物です。個人年金保険の新契約が全くない保険会社は、表に載せていません。個人年金保険の新契約件数が千件以上ある生命保険会社は、わずか13社しかありません。2020年度の18社から一気に5社も減っています。その中で最も新契約件数が多いのは日本生命の27万9000件、2番目に多いのはソニー生命の20万8000件となっています。
2020年度から件数を増やしているのは6社、2019年度から2年連続で増やしているのはソニー生命しかありません。個人年金保険は貯蓄目的なので、円安や低金利がマイナス要因として表れています。
全社を単純合計すると約87万件で、そのうちマニュライフ生命までの6社で占める割合は93%にもなり、前年度の90%からさらに寡占化が進行しています。
個人保険の保有契約件数が2年連続でプラスなのは9社のみ
続いては保有契約の件数についてです。新契約は1年間の新規の契約で、保有契約は過去の契約も含めた現在有効な契約の総数といえます。個人保険の保有契約件数について、件数の多い順に並べてみました。個人保険の保有契約件数でも最も多かったのは日本生命で、前年度より77万3000件増えて3048万7000件となっています。3000万件の大台を超え、大ざっぱにいえば日本人の4人に1人が日本生命の個人保険に加入していることになります。2番目はアフラック(2335万9000件)、3番目は第一生命(2164万2000件)、4番目はかんぽ生命(1474万件)で前年度と同じ順です。かんぽ生命は新契約件数では増加に転じましたが、保有契約件数はまだ減少し続けています。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けたこの2年で、保有契約件数を減らした生命保険会社が8社あります。このうち2社は2020年度からは増えているので、回復途中といったところでしょう。2年間で保有契約件数の増加率が高いのは、はなさく生命、ネオファースト生命、メディケア生命の順で、規模が比較的小さく、新しい保険会社が目立っています。
各社の保有契約件数を単純に合計すると約1億9300万件になり、コロナに関係なく毎年増えています。保有契約件数は日本の人口の約1.5倍にもなることから、現代の生活において生命保険は必要不可欠な存在といえます。
個人年金保険の保有契約件数が前年比プラスなのはわずか9社
最後に、個人年金保険の保有契約件数を多い順に並べてみました。個人年金保険の保有契約件数でも日本生命が最も多く423万8000件となっています。2番目は住友生命(314万6000件)、3番目は明治安田生命(228万件)で、順番は2020年度と変わっていません。
個人年金保険の保有契約件数を増やしている保険会社はあまりなく、2019年度から2年連続でプラスなのは、日本生命、第一生命、ソニー生命、マニュライフ生命、ニッセイ・ウェルス生命の5社のみです。新型コロナウイルス感染症だけでなく、低金利による運用環境の悪化や円安等が影響していると考えられます。多くの生命保険会社は、現状を打破するというよりは個人年金保険市場から手を引く方向にあります。老後へ向けた資産形成は必要ですが、個人年金保険の活用は今後も減っていきそうです。
新型コロナウイルス感染症は2020年2月頃から広がり始めたので、2019年度の業績から影響が出始め、2020年度は非常に厳しい決算でしたが、2021年度は丸2年経過したこともあり、コロナ前に戻りつつあります。2022年8月現在、新型コロナウイルス感染症は終息していませんが、保険会社の業績がいつコロナ前に戻れるか、2022年度決算にも注目したいところです。