食生活・栄養知識

するめ・あたりめ・さきいかの違い…イカが原材料だが何が違うのか

【薬学博士・大学教授が解説】「するめ」と「あたりめ」と「さきいか」の違いは何でしょうか? いずれも原材料はイカですが、何が違うのか、どう言い分ければいいのかを知らない人は多いと思います。それぞれの特徴と違いについて、まとめてみました。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

するめ、あたりめ、さきいかの違いは? 同じイカなのに何が違うのか

するめ・あたりめ・さきいかの違い

するめ・あたりめ・さきいかは、いずれもイカが原材料。何か違いはあるのでしょうか?

「するめ」は、ビールや日本酒に合うおつまみの定番です。「寿留女」という漢字を当てて、縁起の良い食べ物として結納に使われることもあります。

あるとき、私が居酒屋でするめを頼んだところ、店員さんが「どうぞ、あたりめです」と言って持ってきてくれました。そして、「するめ」と「あたりめ」は何が違うのかが、新たな酒のツマミになりました。友人いわく「あたりめにはマヨネーズがついてくる」とのことでしたが、残念ながら、それは不正解です。また、コンビニなどには、食べやすくした「ソフトさきいか」なるものも売られていますね。

するめ、あたりめ、さきいか。いずれも、原材料はイカであることに間違いはないのですが、何が違って、どう言い分ければいいのかがわかりませんね。そのモヤモヤを解消すべく、わかりやすく解説しましょう。
 

するめとは……イカを開いて干したもの

「するめ」の意味を国語辞典で調べると、「イカを開いて干したもの。スルメイカのこと」と書かれてあります。つまり、スルメイカの内臓を取り除き、乾燥させた食品のことを「するめ」と呼んでいるのです。

しかし、まだモヤモヤしますね。そもそもなんで「スルメイカ」と呼ばれるようになったのかが問題です。結論としては諸説あり、確実ではないのですが、スルメイカは墨を吐き群れをなすところから「スミムレ(墨群)」と呼ばれ、これが転じて「スルメイカ」となったという説が有力です。

なお、するめは、江戸時代には中国への重要な輸出品だったため、「一番するめ」、「二番するめ」という等級が設けられ、今も用いられています。最高級品とされる「一番するめ」は、実はスルメイカではなく、ケンサキイカやヤリイカを干したものです。スルメイカを干したものは「二番スルメ」になります。他には、コウイカ、シリヤケイカ、アオリイカなどが原料にされていることもあります。
 

あたりめとは……イカを開いて干したもの。するめとの違いは実はない

みなさんは「するめ」と聞いて、どんな印象を持ちますか。正直言いますと、私は特に何も感じないのですが、響きが不吉な感じがすると考えた人がいるようです。具体的には、「する」が、博打でお金が無くなる意味の「する(擦る)」や、財布やお金を盗む意味の「する(掏る)」を連想させるので、縁起が悪いという主張がでたのです。結納品にも用いられるくらい縁起がいいはずの「するめ」に、それはまずいだろうということで、「する」を、縁起の良い「当たり」にかえて、「当(た)りめ」とも呼ばれるようになったようです。
 
つまり、「するめ」と「あたりめ」は、基本的に同じイカの加工食品なのです。私が訪れた居酒屋の店員さんが持ってきてくれた「あたりめ」は、私が頼んだ通りの「するめ」だったのです。
 
なお、日本語には、「味わい尽くせないような奥深さが感じられるさま」という意味で、「するめのような~」という表現が用いられることがあります。するめは、噛めば噛むほど味がでてくる食べ物なので、長く一緒にいるほどじわじわと良さがわかってくるような人をさして「するめのような人だ」とも言います。もちろん、褒め言葉です。ちなみに、「あたりめのような人だ」とは決して言いませんので、日本語における扱いという点では「するめ」と「あたりめ」で若干違うようですね。
 

「さきいか」とは……生のイカやするめを炙って裂いた加工品

「さきいか」は、漢字では「裂き烏賊」と書き表される通り、生のイカやするめ(=あたりめ)に味をつけて炙り焼きにして乾燥させ、裂いて仕上げた加工品のことです。するめ(=あたりめ)も、炙ってから食することがありますが、味はつけていません。それに対して、さきいかでは味をつけてから炙っている点が大きな違いです。また、さきいかは、炙り焼きにしたものを引き伸ばしてから裂くこともあります。引き伸ばす工程を経ることで、柔らかく仕上がっています。
 
さきいかの発祥は、日本の昭和30年代の映画館で、ポップコーンのように販売されたのが始まりと言われています。意外と歴史は浅いのです。
 
さきいかにもいくつかのタイプがありますが、最初に販売されたのは、「ソフトさきいか」です。するめ(=あたりめ)を使わず、生のイカを開いて内臓をとり、かつ皮を剥いでから味付けをし、炙り焼きにしたものを引き延ばして裂いたものなので、とても柔らかいのが特長です。色白で見た目がきれいなのは、皮を剥いでいるからです。するめのようにいつまでも噛んで味わうものではなく、口に入れるとフワッと溶けてすぐになくなる感じで、次々と食べられてしまうので、あっという間に1袋が空になってしまいますね。
 
ただ、最近は、わざと皮を剥がないで作った「するめさき」や、さらに味を改良するために桜チップなどで燻した「燻製さきいか」なども登場していますので、そのときの気分でいろいろな「さきいか」が楽しめるようになっています。
 
この記事を書いているうちに、私は、ビールを片手に、あたりめやさきいかが無性に食べたくなってきました。みなさんも、是非どうぞ。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます