亀山早苗の恋愛コラム

夫の「不倫現場」を目撃した私のその後…ダブルベッドを捨ててシングルベッドにした理由

6年前のお盆のころ、夫と部下の女性の不倫現場を目撃してしまった40代女性。取り乱した、かといって離婚することもなかった彼女の心の中は……

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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6年前、夫が部下の女性を自宅に引き込んでいるところを目撃してしまったミズキさん(46歳)。夫を殴りつけて怒りを発散させたものの、その後は、心が乱れてなかなか許すこともできず、かといって離婚することもできなかった。
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夏休みが終わって

ミズキさんは数日後に東京に戻った。夫も1日遅れて戻ってきた。子どもたちが、どうしてももうしばらく田舎にいたいと言いだし、ミズキさんの両親も「送っていくから」と言ってくれたため、1週間ほどは夫婦ふたりだけの生活となったのだ。

「気まずかったですね。夫はひたすら私の顔色をうかがっている。それも不愉快だった。かといってもう怒りを発散させることにも疲れてしまった。ちょうど週末を挟んでいたので、土曜日のブランチを、オープンしたばかりのカフェでどうかと夫を誘いました」

夫は「オレもあそこに行ってみたかったんだ」と二つ返事でついてきた。カフェのテラスで向かい合うと、青空があまりにきれいだったこともあり、ミズキさんは気持ちが少し落ち着いていくのを感じた。

「夫は何かまとめのようなことを言わなければ、この件が解決しないと思ったんでしょうね。『改めて謝る。二度とこういうことはしない。ミズキを悲しませたくない』と言いました。『私、悲しかったのかなあ』と思わずつぶやいてしまった。あの日は怒りにまかせて、彼女に嫌味や皮肉をたっぷりぶつけたけど、それが正しかったとは思わない。でも怒りを見せずに帰すこともできなかった。

さらにその後、夫に冷たい態度をとり続けたのも、悲しみなのか怒りなのかよくわからない。ただ、目の前で夫が別の女と、夫婦の寝室で抱き合っているところを見て、冷静ではいられないと思うと話しました。夫は、うん、と一言。許してもらえると思っていいのかなと言うので、許す許さないという問題ではないような気がすると答えるしかなかった」

自分の気持ちをどう整理したらいいかわからなかったとミズキさんは言う。
 

気持ちを切り替えて

自分は何を知りたいのか。ミズキさんは考えた。

「家に引き込んだのはノリだったとしても、夫婦のベッドを使ったのだけはどうしても嫌だった。ベッドは捨てて新しいのを買いましたが、ダブルベッドはやめてシングルを少し離して置くようにしました。私はやはり、相手の女性を妻である自分と同じように扱ったことが不愉快だったんだと思う。夫は『ミズキは自分にいちばん近い人間だと思ってる』と言いました。それが夫の愛情表現なんだということはわかったけど、私はそれをうれしいと思えなかった。むしろ、夫から離れたひとりの人間としての敬意をもってほしかった。そこがすれ違っているんでしょうね」

少しずつ冷静に気持ちを整理していったミズキさん。「本能的にとか生理的にとかいう言葉で、夫の不倫を悪だと決めつけたくなかったから、きちんと何が嫌だったのか確認したかった」のだという。

その上で、夫とは長い時間をかけて話した。話し合ったというよりは自分の気持ちを聞いてもらった。夫の気持ちも聞いた。そして夫婦はどうしたらいいかを「協議」した。

「そこもあくまでも冷静に。夫婦で家庭を運営していくことに関しては何も問題はない。父親としての夫は満点。偉ぶらないし、自らのダメさも見せてしまうところが私は気に入っていました。人間なんてダメダメなものですから。と考えて、今回の不倫も、夫のダメダメなところが表れた一件なのかもしれないなと感じたんですよね」

もうちょっと、このダメなヤツとつきあってみるか。そんな気持ちになっていった。夫に正直に言うと、「ありがとう」と涙ぐんだという。

「目撃してしまったので視覚から来るショックは大きかったけど、それも時間がたてば薄らいでいくかもしれないと思ったので、早急に結論を出すのはやめようと」

あれから6年、夏が来るとやはり思い出すし、傷は昨日のもののように痛むこともある。それでも今のところ、夫に怪しいところはない。

「一度した人はまた不倫する。私はそう思っているから、その点ではあまり信用していないんです。私自身も知りたくはないから詮索はしないと決めている。家庭での夫は今も満点です。10代になった息子や娘に議論をふっかけられて負けているところも含めて(笑)、まあ、いい父親だと思っています」

そしてミズキさんは、ここ数年、夏がくると「また1年、この男とやっていけるのか」と自分に問い直しているという。

「もう無理、離れたいと思う日が来たら、夫に正直に言うつもりです。結婚生活を終えよう、と」

完全に修復できたかどうかはわからない。今のところは大きな問題がないというだけかもしれない。それでも、先日、結婚16年を祝って夫とふたりで食事をした。出会ったころの話をしていたら、思わず笑ってしまうことばかりだった。

「あくまでも“今のところ”ですが、来年までの1年は何とかもつかなと思っています」

少し笑顔を見せたあと、自分を“サレ妻”などと卑下しないほうがいいとミズキさんは真顔になった。シタ夫がいけないのであって、サレ妻に罪はないのだ。


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