目の疲れや炎症・充血に……角膜の修復を促す「ビタミンB2」の効果
長時間のパソコン作業で、目の疲れに悩む人は多いのではないでしょうか?
パソコンやスマホの画面を長時間見ることで、ブルーライトによる目の疲れや炎症、充血などに悩む人が増えているようです。疲れ目や炎症に効果がある目薬はたくさん市販されていますが、角膜の組織代謝を促進し修復を促す効果が期待される「ビタミンB2」が入ったものが役立つと考えられています。
目薬は着色が禁じられていますので、液体の色はそのまま有効成分の色です。ビタミンB2は鮮やかな黄色をしています。薬局で買える一般用医薬品で、液体が鮮やかな黄色をしている目薬には、
- 参天製薬の『サンテメディカルガードEX』『サンテPCコンタクト』
- ロート製薬の『ロートデジアイ』
- 千寿製薬の『マイティアビタミンB2B6E』
- 大正製薬の『アイリス40』
目薬だけではない! ビタミンB2を含んだ多くの栄養ドリンク
また、リポビタミン、エスカップ、チオビタ、オロナミンなどのいわゆる「栄養ドリンク」の多くも、鮮やかな黄色をしていると思います。この黄色もビタミンB2の色です。成分表示には、「リボフラビンリン酸エステルナトリウム」「ビタミンB2リン酸エステルナトリウム」などの難しい名前が書かれているかもしれませんが、基本的にこれらはビタミンB2と同じものとみなして差し支えありません。ビタミンB2は、別名で「リボフラビン」とも呼ばれますし、「~リン酸エスエルナトリウム」は実質上薬効に影響しない部分ですから気にせずに、「ビタミンB2(リボフラビン)」が含まれているとお考え下さい。
ビタミンB2とは……効果・効能・過剰摂取の心配は不要?
改めてビタミンB2(リボフラビン)について、少し専門的な内容になりますが、詳しく解説してみます。ビタミンB2 (リボフラビン) は水溶性のビタミンで、体内に吸収された後、主に肝臓において、リボフラビンキナーゼ、FADピロホスホリラーゼという2種類の酵素の作用により順次フラビンモノヌクレオチド (FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド (FAD) へと変換されて、作用を発揮します。参考までに、リボフラビンとFADの化学構造を下図に示しておきます。 FMNとFADはともに、体内で様々なエネルギー代謝に関わる補酵素として働きます。FMNやFADの助けを借りて機能している生体内の酵素はたくさん知られていますが、それらは総称してフラビン酵素とも呼ばれ、糖・アミノ酸・脂肪酸の中間代謝、酸化的リン酸化など、多くの重要な酸化還元反応に関わっています。たとえば、酸素呼吸を行うすべての生物が共通してもっている、エネルギー(ATP)の産生を担う代謝システムの「クエン酸回路(TCAサイクル)」に含まれる「コハク酸デヒドロゲナーゼ」という酵素は、FADを共有結合して利用し、コハク酸をフマル酸に変える酸化反応を行います。
ビタミンB2は、水溶性なので、体内に蓄積することができず、毎日摂取する必要があります。肉類、卵、牛乳、チーズ、ヨーグルト、葉菜類、全粒穀物等に多く含まれているので、健康体でバランスよく食事がとれていれば、ほとんど不足することはありません。しかし、エネルギーをたくさん消費したとき、たとえば激しい運動や労働によって極度に疲労しているときや、お酒を飲み過ぎたときなどは、不足しがちなので注意しましょう。ビタミンB2は、皮膚や粘膜を保護する働きもするので、不足すると皮膚炎や口内炎などが起こります 。
逆に、ビタミンB2は、過剰摂取を心配する必要はありません。なぜなら、ビタミンB2は必要な分が主要臓器で一定量保持されれば、残りの過剰な分は、尿中や糞中に容易に排泄されるからです。栄養ドリンクを飲んだときに、まもなくトイレに行くと、真っ黄色の尿が出たという経験はありませんか。それは、まさにビタミンB2の色です。ビタミンB2を補おうと思って栄養ドリンクを飲んでも、実は大部分はすぐに尿中排泄されてしまっているのです。
ちなみに、ビタミンB2の名前に含まれる「フラビン」は、ラテン語の「Flavus」に由来し、「黄色」を意味します。
「活性型ビタミンB2」とは……実は異なる目薬と栄養ドリンクのビタミンB2
目薬に話を戻しましょう。もし黄色い目薬をお持ちでしたら、成分表示を見てみてください。そこには、「フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム(活性型ビタミンB2)」と書かれているのではないでしょうか。同じビタミンB2でも、栄養ドリンクに入っているものと目薬に入っているものには、実は違いがあるのです。さきほど説明したように、飲食したビタミンB2(リボフラビン)は、体内に吸収された後に、肝臓で活性型のFMNやFADに変換されてから補酵素として働きますから、栄養ドリンクの場合は、ビタミンB2としてリボフラビンを配合しておけば事足ります。しかし、目薬の場合は、眼内に与えられた成分はそこで作用するだけです。体内に吸収されて肝臓を通ることはありませんから、目薬に配合されたリボフラビンが活性型のFMNやFADに変換されて作用を発揮することはできないのです。
なので、目薬には、リボフラビンの活性型であるFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)が使われているというわけです。