年金を何歳からもらうか、考える上で注意したいことって?
年金は何歳からもらえばいいのか?という問いに最適解はありません。それは人間の寿命がわからないからです。短命の人は早くもらった方が得だし、長生きの人は遅くもらった方が得です。
注意すべきは、生きているうちにお金の寿命が尽きてしまうことと、我慢を重ねて節約した結果、使い切れないほどの大金を残して死ぬことです。
お金はかかえて死ねません。子どもたちに大金を残しても、それが原因で仲違いをしたら本末転倒です。また、せっかく貯めたお金の大半を税金や国庫に持っていかれるのも残念なことです。
何歳から年金をもらう?
年金の繰上げと繰下げについて
年金は原則65歳からもらえますが、60歳から繰上げ受給することもできます。その場合、1カ月あたり0.4%(5年で24%)年金額が減額され、減額された年金を生涯受け取ることになります。反対に75歳まで繰り下げることもできます(昭和27年4月2日生まれ以降の人が対象。それまでの人は70歳が上限)。その場合、1カ月あたり0.7%(5年で42%、10年で84%)年金額が増額され、増額された年金が生涯受け取れます。
繰上げによる減額率、繰下げによる増額率の詳細については、下記リンクをご参照ください。
年金の繰上げ受給|日本年金機構(nenkin.go.jp)
年金の繰下げ受給|日本年金機構(nenkin.go.jp)
年金は何歳からもらえば一番お得?
では、短命の家系、長生きの家系、健康に自信がある・なしなどを考慮して、いつから年金をもらえばいいのでしょうか。ざっと4つのパターン(60、65、70、75歳)で年金受給を開始した場合、一番得する年齢を見ていきましょう。
年金受給開始年齢60歳……79歳までの短命の人が得する
年金受給開始年齢65歳……80歳で、60歳から繰上げ受給した人の総受取額を抜く
年金受給開始年齢70歳……寿命が81~90歳の人が得する
年金受給開始年齢75歳……91歳以上長寿の人が得する
ただし、繰上げを選択するとあとから取り消しができません。また、75歳まで繰り下げて184%に増えた年金を受け取ったとしても、91歳以上長生きしてピンピンコロリなら理想的ですが、もし入院や介護が必要になった場合は、医療費や介護費が跳ね上がるので注意が必要です。
年金の損益分岐点や繰上げ、繰下げのメリット、デメリットについては、多くのサイトに載っています。税制改正等により条件が変わってくるので、できるだけ最新のものを見るようにしましょう。
私からは、番外編として以下の2点をお伝えしたいと思います。
番外編(1)年金211万円の壁
「年金211万円の壁」って聞いたことがありますか?「年金211万円の壁」とは、主に65歳以上の夫婦2人の年金生活世帯が、住民税非課税世帯になるかどうかの境界のことで、以下のようなメリットがあります。
- 住民税がかからない
- 国民健康保険料が安くなる
- 介護保険料が安くなる
- 高額療養費制度の自己負担限度額が下がる
- 75歳以上の方の医療費が安くなる
- その他自治体による特典
年金が夫婦で211万円以下の人は、無理に繰り下げて年金を増やすと、かえって不利になることがあるので気をつけましょう。
ただし年金211万円という基準は、住んでいる地域が1級地の場合です。2級地、3級地の場合は、さらに基準の年金額が減ります。ご自分のお住まいの地域が何級地かは、下記リンクをご参照ください。
厚生労働省:級地区分表【平成30年度以降版】
番外編(2)富裕層の場合
相続税控除額を軽くオーバーする財産を所有している富裕層が年金をもらうタイミングについては、悩まなくてもいいでしょう。もらえる年金額によって生活が左右されることはないのですから、好きな時からもらえばいいのです。富裕層は年金をいつもらうかより大事なことがあります。早めに相続税対策をするとともに、お金を「貯めるから使う」にシフトしてほしいのです。
特に節約を重ねてお金持ちになった人は、今後はお金を使う楽しみを味わってほしいと思います。
死ぬ時が一番お金持ちなんて、もったいない話です。周りの人にも喜んでもらえるようなお金の使い方をすると運もめぐってくるし、寂しい老後にならないでしょう。人生は楽しんだ者勝ちです!
ただ、子や孫にお金をねだられるままに与えて、甘やかすのは反対です。金銭感覚がおかしくなってしまう場合があり、かえって不幸のもとになります。
自分が作った資産は、自分で使いましょう。浪費はNGですが、旅行や趣味や交際費、自分の健康のためにお金を投資しましょう。また、どのぐらいのお金を趣味やレジャーに使ってもいいのか迷った場合は専門家に相談するというのも一考です。
死ぬ時に「あぁ、いい人生だった!」と思えると最高ですね。
文:辻村洋子(CFP(R)認定者・1級FP技能士)
損保会社を定年退職後、ファイナンシャルプランナーに。「お金は人生を豊かにするためのもの」をモットーに、セカンドライフを充実させたい人への家計改善、老後資金の準備、遺言・相続などに関する相談を得意としている。お金の寿命をのばす専門家として相談者の不安や悩み相談を受けている。
【関連記事をチェック!】
60歳からのお金と生きがいを作るための資格の選び方