大学受験

公立高校の“過密カリキュラム”が原因!? 増える「授業をしない塾」「自立型学習」で大学受験に勝つ秘訣

学校や塾で「授業がない」「授業をしない」ということが大きなトレンドのひとつになり、「自立型学習」をする高校生が現れ始めています。この自立型学習で成績を伸ばす勉強のポイントを教科ごとに解説します。

伊藤 敏雄

執筆者:伊藤 敏雄

学習・受験ガイド

学校や塾で「授業がない」「授業をしない」ということが大きなトレンドのひとつになっています。といってもそれは一斉形式での集団授業を行わないというもの。代わりにタブレットなどで授業動画を視聴して、自分で問題集を解いて学ぶという自立型の学習が広がっています。
単なる自学自習とは異なり、自分のペースで勉強する内容とやり方を決める「自立型学習」

単なる自学自習とは異なり、自分のペースで勉強する内容とやり方を決める「自立型学習」

きっかけは2020年のコロナによる一斉休校。このとき一部を除いて大半の高校生が自宅での自学自習を強いられました。

これが怪我の功名というべきか、「学校や塾の授業を受けなくても、大抵のことは自分で勉強できる(自立学習が可能)」ということに気付いた高校生が現れ始めたのです。
 

公立高校の“過密なカリキュラム”が背景に

自立学習を始める高校生が増えつつある背景には、公立高校のカリキュラムの過密さが挙げられます。2022年度に高校1年生になった生徒の例を紹介しましょう。

「歴史総合」だけでなく「地理総合」も学ばなければならず、新設された「公共」、3年後に大学入学共通テストに追加される「情報」は受験対策も必要になります。特に理系に進む生徒は、理科は「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「科学と人間生活」などから2~3科目学んだ後、「物理」「化学」「生物」などから2科目学ぶ必要があります。数学も数Cと呼ばれる科目が復活し、6科目も学ばなければいけません。

これらを高校3年間で履修するだけではなく、大学受験で通用するレベルにまで高めなければならないのですが、公立高校では普通に勉強を進めていたらとても間に合わないのです。

同じ大学受験でも私立の多くは「中高6年一貫教育」という特徴を活かし、公立高校との進度に最大で1年程の開きがあります。中には3年の春には高校3年間の学習内容を終えて、本格的に大学受験の勉強を始めている学校もあるほどです。実際、東京大学の合格ランキングでは、ごく一部を除いて、上位校のほとんどが中高一貫校で占められています。

公立高校が大学受験に不利になりつつある中、もはや学校にも予備校にも頼っていられない、そんな高校生が始めたのが自立学習。この自立学習で大切なことは、背伸びをせず自分に合った参考書や問題集から始めることです。東大を目指すからといっていきなり難しい参考書や問題集で勉強する必要はなく、自分に合った教材で勉強するというのがベストです。

それでは、教科・科目別に勉強のコツを詳しく紹介していきましょう。
 

英語:基礎の語彙力の習得をコツコツ3年間積み重ねること

まず英語の基本は単語です。「わからない単語は本文を読んで意味の推測を」といわれることもよくありますが、学習科学の研究ではこれはそれほど効果的ではないことがわかっています。もちろん長文を読みながら単語を習得することも可能ですが、それはある程度、語彙力や読解力がある人に限られます。

ですから英語力を上げるためには、まず単語や熟語を学んで語彙力を上げることが大切です。それと並行して文法や英文解釈の仕方を学びながら読解力をつけていきます。

単語の学習はまずオーソドックスな単語帳から始めましょう。その際、必ずしも最初から難関大学受験やTOEIC受験を意識する必要はありません。基本となる単語帳を一冊買って、肌身離さず持ち歩いて勉強するようにしましょう。最近では無料アプリが付いている単語帳もあるため、併用して覚えるのがいいでしょう。
 

数学:基本的な例題の数をこなし、解法パターンを身につける

次に数学ですが、まずは基本的な例題をたくさん解くことが大切です。これは解き方の基本となる考え、つまり解法のパターンを身につけることが重要だからです。また数Bや数IIなどある程度まで進んだところで、数Aや数Iなどの復習も並行して進めます。

これは部分学習と全体学習という学習法に則ったとても大切な視点です。例えば順列・組み合わせの単元では、順列なら順列、組み合わせなら組み合わせを学ぶため、お互いを混同するようなことはまずありません。しかし、組み合わせを学んだあと順列の問題を解くと混同することがあります。

また次のような図形の問題では、余弦定理を使って解くと計算が大変でいたずらに時間がかかってしまいます。この問題は三角形の面積を利用して解く法もあれば、中学校で習う図形(平行線と角、三平方の定理)の知識を使うだけで解く方法もあります。
余弦定理や面積を使って解く高校数学の図形の問題。しかし、補助線を引けば中学数学の知識だけでも解けてしまう有名な問題。

余弦定理や面積を使って解く高校数学の図形の問題。しかし、補助線を引けば中学数学の知識だけでも解けてしまう有名な問題。

このように単元をまたいで解法を活用する力も大切ですが、その前提は一つひとつの解法を確実に身につけていること。英語と数学は高校3年間継続して基礎となる学力を何層にも積み重ねていくことが大切なのです。
 

国語:独学では難しいため、動画や参考書などの活用を

受験生にとって一番の難関は国語です。特に現代文は筆者との対話ではなく、出題者との対話と呼ばれるほど正答の基準の捉え方が異なることがあります。ある年の早稲田大学の入試問題では、三大予備校の模範解答が異なるという異例の事態も発生したほどです。

論説文では文章を構造化して解釈する、数学でいえば途中の計算式のようなものがないと読解が難しい問題も少なくありません。このような問題を解くには、高校生独りでは困難が予想されます。

しかし今では、大手予備校の有名講師と同じレベルの講義が動画や参考書で学ぶことができます。自分が予備校の生徒になったつもりで勉強できるかどうかがポイントとなるでしょう。
 

理科や地歴:動画やマンガ、アプリなどあらゆる媒体を活用

理科(生物や化学・物理)や歴史(日本史や世界史)は、動画やマンガ、解説系の参考書などを駆使して勉強するといいでしょう。

特に物理の場合、物体の運動や波動(縦波を横波に変換する)など、教科書ではわかりにくいことも、動画なら理解しやすいものがたくさんあります。物理現象は紙媒体では理解しにくいからです。

歴史は一問一答形式などで重要語句を覚えることも大切ですが、動画やマンガ、解説系の参考書で時代背景を理解したり、資料や史料に触れることも大切です。「なぜ」や「どうして」という因果関係がよくわかり、記憶に残りやすいからです。

歴史はどうしても暗記することがたくさんあり、せっかく覚えても忘れてしまうことが最大のネックです。そうならないためにも、動画などを見てイメージで記憶したり、因果関係を理解してより深い知識として記憶しておくことが大切です。
 

落とし穴に注意! 間違った学習法に惑わされないこと

最近ではインターネットや動画で様々な勉強法が取り上げられていますが、これらは玉石混交で中には効果が疑わしいものも少なくありません。

その一つに挙げられるのが「書きまくれば覚えられる」という勉強法です。確かに単語でも数学の問題でも、1回や2回といわず、100回でも200回でも書いたり解いたりすれば、いずれできるようになるかもしれません。しかしそれでは、かけた時間と労力のわりに学習成果は低いことになります。受験勉強で最大の効果を発揮するのは、コストパフォーマンのよい勉強法です。書きなぐれば覚えられるというのは、ただの経験則でしかなく必ずしも万人向けの勉強法ではないことは注意しなければいけません。

また、寝る時間を削って勉強するのも受験生の間に信じられている、まるで都市伝説のような勉強法です。記憶は寝ている間に定着する(厳密にいうと忘れる量が減る)ため、勉強してしっかり睡眠を取ることが、最も高い成績を収めるために必要な条件です。
 

自立学習の最大の敵「孤独」と闘うためにオンとオフを使い分けよう

オンラインとオフラインを使い分けるようにすることも大切です。自立学習は自分で計画を立てて自分で進める勉強なので、自宅で独りでできてしまいます。そのため、孤独や孤立に打ち克つことが最大のポイントとなります。

バーチャルオープンキャンパスというものもありますが、映像は編集が可能でどうしても良い側面しか映りません。実際にキャンパスに行ってみて、通っている学生の表情や雰囲気を感じとったり周辺環境を確かめたりするといった、オフラインの活動も大切です。

一方で、同じ大学を目指す受験生がSNSやアプリなどでつながることも、モチベーションや情報収集の観点からも重要です。最近では、同じ志望校の受験生同士で、勉強した時間と内容を共有できるアプリも登場しています。英語の単語帳や歴史の一問一答集などのアプリと合わせて、これらをフルに活用して勉強するといいでしょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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