亀山早苗の恋愛コラム

40歳の「産んだ後悔」、42歳の「産まなかった後悔」。女性を傷つける無神経で無責任な言葉

40歳といえば、産めるかどうかのリミットに近い年齢だ。「産んだ」後悔を抱える女性、「産まなかった」後悔を抱える女性が、それぞれの心境を語ってくれた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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「子どもというのはいても苦労、いなくても苦労」と昔の人は言っていた。それはおそらく真髄なのだろうが、ちょうど産めるかどうかのリミットあたりの年齢で、ただ焦燥感が募るだけという人も多いだろう。
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産んだ後悔

「将来はきっと楽しいよとみんな言うんですが、私は子どもがいることでつらい思いをしている割合のほうが高いかもしれません」

そんなふうに言うのは、リサさん(40歳)だ。29歳で結婚し、夫の実家で生活を始めた。夫の実家なら、自分は会社勤めを続けられると思ったし、夫もそう言っていたからだ。ところが義母は、「今日からあなたが主婦だから」と台所を明け渡した。

「夫と義父と自分のお弁当を作り、夫の弟妹を含めた6人分の朝食を作ってから出勤していました。妊娠してつわりがひどくなっても、家事は誰も手伝ってくれない。もういやだと飛び出したこともあります。そのときは夫が泣いて謝ったので戻りましたが、また同じことの繰り返し」

長男が産まれ、仕事を時短にせざるを得なくなり、職場から期待されなくなった。2年後に産まれた長女は体が弱く、リサさんはもはやこれまでとあきらめて退職。その2年後に次女が産まれた。

「夫の弟妹は家を出ていき、今は義父母とうち一家の7人暮らし。私はいつの間にか専業主婦となり、義母は『今は女も働く人が多いのにねえ』と嫌味を言う。夫は夫で、『子どもは3人が定番だよ』って。自分が3人きょうだいだったから、どうしても3人ほしかったそうです。結婚前は1人でじゅうぶんと言っていたくせに」

子どもはかわいいし、大事な存在ではあるが、ときどき「産んだことを後悔するときもある」とリサさんは言う。

「そんなふうに思ってはいけないと自分に言い聞かせていますが、それでもたまに同期からの連絡で誰かが昇進したと聞くと、『この子たちがいなかったら、私はあの人よりいい仕事ができたはず』と思ってしまう。義父は70歳になりますが、今も働いています。でもまったく生活費を入れてくれない。最初からそうでした。家賃を払わなくていいのだからいいでしょと義母に言われましたが、食費と光熱費だけで夫の給料が消えていく。子どもの学費も考えないといけないのに」

8歳になった長女がようやく丈夫になってきたし、末っ子も6歳。近所にパートに出ようとしたら、「私は幼稚園には迎えに行けないからね」と義母に牽制された。義母は毎日のように近所の人と遊びに出かけているだけなのに……。

「人生狂わされた。そんな気がします。もちろん子どもに責任はないんですけどね……」

結婚そのものが間違いだったということでしょうけど、と彼女は力なくつけ加えた。
 

産まずに後悔

「産めたかどうかもわかりませんが、妊娠する機会がなかったんですよ」

ミチヨさん(42歳)はそう言う。結婚して12年、40歳になった時点で子どもを持つのはあきらめた。それでも、もしかしたら今からでも間に合うかもしれないと思うことがあるそうだ。

「結婚しているのに子どものいない女というだけで世間は、白い目で見るか同情するような目で見るか。産まないなら白い目、産めないなら同情。そんな感じですよね。私の場合は、結婚後も普通に暮らしていたけどできなかった。夫と話しあって、とにかく自然に任せようとなったので、不妊治療はしていません」

それでも今思えば、努力してみたほうがよかったのではないか、不妊治療もしてみればよかったのかもしれないと後悔するという。

「なぜしなかったんだろう、とときどき思うんです。30代、仕事が楽しくて毎日が充実していた。今、妊娠したら仕事はどうなるんだろう、めんどうだなと思ったのも事実。そんなふうに思っていたから、赤ちゃんが来てくれなかったのかも。自分でそう思っているところへ母に追い打ちをかけられたんです。『あんたに子どもが育てられないとわかっているから恵まれなかったのよ』とトンデモ発言をして。母とはもともと折り合いが悪いから会っていなかったんですが、5年前、父が亡くなったそのお葬式の席で、そういうことを言い出した。私はそのまま席を立って帰りました。夫はあわてていたけど、私のあとをついて出てきました」

母といえども他人は無責任で無神経な言葉を発するもの。もしかしたら、知人もそう思っているのかもしれないとミチヨさんは落ち込んだ。

「ただ、夫が『人はどうでもいいよ。オレたちがこれでいいと思える生活を送ればいいだけ』と淡々としているのに救われました」

それでも……とミチヨさんは言う。

「今になると、子どものいる人生を送ってみたかったかなあ。まあ、ないものねだりなんでしょうけどね」

少し照れたように笑った。
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