2人以上世帯では、老後の心配度合いはどうなる?
前回の記事では、貯蓄の多い少ないによって「老後の心配」は変わるかどうかを、一人暮らしの最新調査をもとにお伝えしました。 今回は、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」(2021年)の「老後の生活についての考え方」より、貯蓄によって老後の心配がどれくらい違うかについてお伝えします。ご家庭の貯蓄額に近いものとあわせて、ぜひご覧ください。※当記事の「貯蓄」とは、「金融資産」全体のことをさします。また、例えば翌月のカード引き落とし代など、日常的に使うために一時的に貯めているお金ではなく、将来のために備えている貯蓄や運用のためのお金をここでは「貯蓄」とします。
2人以上世帯も、貯蓄が増えると「老後の心配度」が減っている
「老後の生活(高齢者は今後の生活)」において、「それほど心配していない」「心配である(多少心配・非常に心配)」という、心配の度合いについての調査結果を、貯蓄別に抜粋しました。●貯蓄100万円未満(金融資産非保有を除く)
それほど心配していない……10.3%
心配である……89.7%
→多少心配……36.5%
→非常に心配……53.2%★
●貯蓄500万円~700万円未満
それほど心配していない……17.7%
心配である……82.3%
→多少心配……46.5%
→非常に心配……35.8%★
●貯蓄1000万円~1500万円未満
それほど心配していない……22.7%
心配である……77.3%
→多少心配……51.8%
→非常に心配……25.4%★
●貯蓄2000万円~3000万円未満
それほど心配していない……35.5%
心配である……64.5%
→多少心配……49.9%
→非常に心配……14.7%★
●貯蓄3000万円以上
それほど心配していない……59.6%
心配である……40.4%
→多少心配……32.0%
→非常に心配……8.4%★
上記の★印の数字にご注目ください。「非常に心配」と答えた人の割合が、貯蓄が増えるにつれて、53.2%→35.8%→25.4%→14.7%→8.4%と、どんどん減っていることがわかります。
貯蓄が3000万円以上の人では、「それほど心配していない」と答えた人が6割近くもいます。老後の心配度は、貯蓄が多ければ多いほど減り、少なければ少ないほど増えるという具合に、貯蓄額に反比例していることが、おわかりいただけるのではないでしょうか。
一人暮らしと比べると、「非常に心配」な割合が低い
次に、前回の記事と比べてみました。同じ貯蓄額でも、「老後の生活が非常に心配」だと答えた割合が、「2人以上世帯」の方が少し低いケースもあります。「非常に心配」と答えた人の割合
●貯蓄100万円未満
一人暮らし……51.7%
2人以上世帯……53.2%
●貯蓄500万円~700万円未満
一人暮らし……41.9%
2人以上世帯……35.8%★
●貯蓄1000万円~1500万円未満
一人暮らし……29.9%
2人以上世帯……25.4%★
●貯蓄2000万円~3000万円未満
一人暮らし……16.1%
2人以上世帯……14.7%★
●貯蓄3000万円以上
一人暮らし……11.1%
2人以上世帯……8.4%★
★印のように、一人暮らしの人に比べると、2人以上世帯の方が「非常に心配」という割合が低いケースが多く見られます。
本来、同じ金額のお金があれば、それを1人で使うのか、2人以上で使うのかを考えてみると、1人で使う方がゆとりがあるように思えます。さらに、2人以上世帯は、今後大きな教育費がかかるであろう、子育て中の家族も含まれます。
ところが実生活では、2人以上世帯なら、何かあったときに「パートナーの収入が頼りになる」「お互いの面倒を見られる」「子どもや孫に助けを求められる」などという安心感がプラスされているのかもしれません。
同じ世帯に違う業種・職種の人が複数いれば、特にコロナ禍のように収入に大きな変動があったときにも、リスクが分散され、安心感が増すこともあるでしょう。
以上2つの記事にわたって、「老後の心配度」が貯蓄に反比例しがちというデータをお伝えしました。
今回はお金の話に絞ってお伝えしましたが、老後の心配を解消できるのは、決して“貯蓄額”だけではありません。パートナーや家族、友人、近所の人などとの人間関係、趣味や仕事などの活動など、“心のよりどころ”も大きく影響してくるはずです。それらは、若いときからの積み重ねで築き上げていくものです。
貯蓄を少しずつ増やすとともに、ぜひさまざまな人間関係や趣味なども大事にしていっていただけたらと思います。