「#精子ドナー」「#精子提供」などで検索すると、Twitterでは多くの精子提供アカウントが見つかり、実際に取り引きが多くされているようだ。このような取り引きの問題点について見ていこう。
SNS精子提供の実態(画像はイメージ)
低いコストで誰でも受けられると人気
男性不妊で子どもができない夫婦の場合、夫以外の第三者の精子で人工授精を行う、AID(非配偶者間精子提供)という治療が行われる。しかし、AIDを行う国内12カ所の日本産科婦人科学会登録施設のうち、6施設以上が新規受け入れを停止中だ。子どもの親を知る権利、つまり出自を知る権利の広まりにより、提供者の匿名性が保たれない可能性が出てきている。それ故、精子の提供者が減少したことなどから、新規受け入れが難しくなったことが背景にあるのだ。
またそもそも、このような治療は法律婚の夫婦に限られ、選択的シングルマザーや同性同士のカップルなどは対象とならない。また、海外の精子バンクもあるが、提供者は日本人ではなく、コストが高額になりがちだ。
この点、SNSならほとんどの場合無償で、かかっても交通費など実費のみのことが多い。匿名性も保つことができ、低いコストで誰でも利用できるため、最後の手段として利用する人が多いというわけだ。
「シリンジ法」とは、注射針のない注射器(シリンジ)での体内への注入を行う方法だ。排卵のタイミングで性行為を行う方法は、「タイミング法」という。精子提供アカウントには、「シリンジ法、タイミング法OK」などとどちらにも対応しているもの、「シリンジ法のみ」としているものもある状態だ。
「精子ドナー」「精子提供」などで検索すると、様々な精子提供サービスがあり、このようなものも多く利用されているようだ。顔写真を登録している人も多く、学歴や職業、居住地などを明らかにしており、提供を受ける場合には、直接会って面談の上、実際の提供という仕組みのことが多い。しかし、獨協医科大学の岡田弘特任教授によると、性病検査などが十分でなかったり、本人確認もされていないなど、信頼性には疑問が残るサービスが多いという。
SNSでの精子提供の問題点は
SNSでの精子提供では、冒頭で紹介したように問題が起きている。精子を提供するというアカウントには、明らかに性行為を目的としたらしきものも多い。ある女性同士のカップルもSNSで精子を募ったものの、性行為目的で連絡してきた男性がいたそうだ。その他、盗撮をされたり、性行為を強要されそうになった人もいるという。
病院などでは検査が徹底されているが、個人が提供する場合は、性感染症やHIV、肝炎などに感染するリスクも考えられる。また、ドナーが遺伝性の疾患を持っている可能性もある。中には数十人単位に精子を提供している男性などもいるため、近親婚などのリスクも高くなるだろう。
多くの精子提供アカウントが、「高学歴」「一流企業勤務」「性病なし」などと遺伝的に有利であることをうたっている。しかし冒頭の例を見れば、そのような自己申告の情報が信頼できないことは明らかだろう。
SNSの個人間取り引きはリスクを伴う
SNSを使った個人間取り引きのトラブルに巻き込まれないために、できることは(画像はイメージ)
TwitterなどのSNSは匿名性が高く、容易に素性や本心などを偽ることができるためだ。取り引きにおける情報は相手を信用するしかないことも多く、犯罪や詐欺などにも多く利用されているのが実態だ。
子どもがほしい女性が、最後の手段としてすがりたくなる気持ちはわかる。しかし、自分自身が詐欺や犯罪に巻き込まれたり、産まれてくる子どもにも影響が出る可能性がある。SNSでの個人間取り引きはリスクを伴うものであることをよく自覚し、できる限り医療機関の検査などをしっかり行っている機関を利用した方が安心だ。万が一SNSを利用する場合にも、事前にできる限り情報を提出してもらい、信頼性を確認して利用すべきだろう。
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